尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「順位投票」というやり方-選挙制度論②

2016年01月17日 23時03分21秒 |  〃  (選挙)
 先に「決選投票」の必要性を書いたけど、理念的には必要だと思うけど、現実には難しいだろう。一番大きな問題は、一週間後(例えば)に決選投票をやっても、果たしてどれだけの人が投票に行くのかという点である。2週連続で、投開票作業をするのは大変だし、お金もかかる。「期日前投票」もしないといけないし、準備が大変そう。そういう事態を避けようと、有権者の方で有力候補にこぞって投票してしまわないとも限らない。それでは本末転倒である。

 それに前回挙げた「秋田1区」では、1位と2位の差が比較的少なく、2位も40%以上取っているので、決選投票するべきだという議論をしやすい。だけど、「東京16区」なんかはどうか。
大西英男 68 自由民主党 前 98,536票 46.3% 当選
初鹿明博 45 維新の党 元 56,701票 26.6%  比例区で当選
大田朝子 30 日本共産党 新 36,976票 17.4%
石井義哲 57 次世代の党 新 11,484票 5.4%
岡本貴士 34 無所属 新 9,334票 4.4%

 ここは江戸川区の大部分で、かの「失言大王」大西氏の選挙区である。大西さんのことは前にちょっと触れたけど、昔の勤務校のPTA会長だった。それはともかく、46%だから過半数ではない。だけど、第2位の初鹿候補とは20%ほどの差がある。それに第4位の「次世代の党」は自民より右っぽいから、まるまる初鹿候補に行くとは思えない。元は民主党だけど、「維新の党」から出た初鹿氏を共産党支持者が全面的に支持するとも思えない。やる前から判り切ったような決選投票をやる必要があるのか。まあ、リクツ上では過半数を取ってないわけだけど。

 しかし、以上のような問題をクリアーする方法がある。「決選投票を先取りして行う」ということである。つまり、自分の支持した候補が第3位以下だった場合、決選投票をしたら誰に入れたいか、順番を付けておいてもらうというやり方である。そんな面倒くさいこと…と思うだろうが、オーストラリアでは現にそういう制度を取っている。それどころか、オーストラリアは投票が義務で、選挙に行かないと罰金がある。そして、候補者全員に順番を付けるのである。世界はいろいろだなあ…。

 今書いていることは、「小選挙区制度の場合の当選の決め方」である。だから、すべてを比例代表にしてしまえば、こういうことは考える必要はないけど、しかし、それは国政選挙の場合である。地方の首長選挙は、必ず「一人を選ぶ」、つまり小選挙区と同じなんだから、僕はこの「順位付け投票」は真剣に考えてみてもいいのではないかと思う。

 だけど、全候補に順位を付けるのは大変である。自民党に民主党、それに共産党、そして幸福実現党なんて選挙区ならば、まあ多くの人が順番を決めやすいだろう。でも、社民党もあれば、「維新の党」もある。その前は「日本維新の会」だった。「みんなの党」というのもあった。「維新」から別れた「次世代の党」はまた名前を変えてるし、順番付けが可能になれば、少数政党も出やすいので、もっとたくさんになるかもしれない。全然支持していないのに、自分の選挙区から、「みんな」と「維新」が出てるから順番付けてくれと言われても、わけ判んないよねえ。

 だから、付けるとすれば「2位まで」でいいだろうと思う。一位得票者が過半数にならない時に、最下位候補の票から「2位の開票」を行う。そして、過半数が出るまで、下位候補から同じことを行っていく。2位候補を指定しない票もあるだろう。それを無効にするわけにはいかない。どうしても、この党しか支持してないんだと言われれば、それも良しとするしかない。だから、場合によっては、「2番まで」では過半数が出ないこともありうる。だけど、その場合は「決選投票を棄権」と同じだから、もう多い方が当選でいいんだと思う。むしろ、僕が考えるに、「1位候補がなく、2位しか指定しない」票を認めれればいいと思う。ホントはどの党も支持してないけど、まあ誰も過半数に行かないんだったら、この人でもいいやという票である。これがあれば、投票意識はかなり高まると思う。

 だけど、今の日本のように「候補の名前を書く」というやり方では、2人を順番を付けて書き分けるのは非常に大変だろう。投票用紙に真ん中から線を引いておいて、上の方に一番、下の方に2番を書くとか。やっぱりそれは無理だから、候補者の名前を書いておいて、そこに「1」と「2」を書く。それを郵便番号のように機械で読み取る。その後、人力で再確認する。まあ、そういうやり方がいいんだろう。ただし、人間が「1」と「2」を書きなぐると、かなり似てくる場合がある。他のやり方も考えるべきかな。

 それより、2番までつけるなら、今より長い選挙期間が必要だと思う。以前に書いたように、1か月前頃から、「第一次解禁」としインターネットと文書による運動開始を認め、10日ぐらい前(選挙対象によって変わるが)に「第二次解禁」として、街頭演説と電話を許可するというのがいいと思う。まあ、そうやって、2番まで順位を付ければ、決選投票をすることなく過半数当選者を出すことができる。そうすれば、自民党や民主党は、小党に対して「2位投票を呼びかける」必要も出て来て、少数派に対する配慮が大事になってくる。その方がいいじゃないかと思うんだが。
コメント
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