尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「教師への罠」にご用心-18歳選挙権③

2016年02月21日 22時49分48秒 |  〃  (選挙)
 「18歳選挙権」が、改憲へのスケジュールの中で実施されるという見方からすると、次にどのようなことが起こるかを見ておきたい。まず、安倍政権の考える「憲法改正」は「賛否が拮抗する可能性が高い」と考えられる。国民の3分の2が本当に賛成しているようなテーマだったら、国民投票を心配する必要もない。一方、今直ちに「改正」しようとすると反対が多いだろう「9条」などは最初は手を付けないと思われる。だけど、苦労して改正するのに「環境権」を加えるだけとかでは、保守派の側では物足りない。「緊急事態条項」など、衣の下に鎧がチラチラ見えるテーマも入るだろう。

 国民一般にとっては、なかなか賛否を決めにくい条項をいくつかまとめて問う可能性が高い。だから、国民が自分で考えることが必要なわけだが、そう言っても実際は難しい。そういう時に国民の動向に大きな影響を与えるものは何か。まずはマスコミだけど、特にテレビ。新聞は別にいい。新聞の社説を読んで決める国民なんていないんだから。どうせ読売や産経は賛成する。(というか、改憲スケジュールそのものに関わっていくはずだ。)朝日や毎日は反対するだろうけど、それでいい。中央紙がまとまって賛成でもしたら、かえって欧米に「日本はロシアや中国と同じ異質な国だ」と思われかねない。だから、有力紙がいくつか反対するのは、改憲を実現するためには必要なことだと思われる。

 だけど、テレビは違う。誰が見るか判らない。新聞と違って、賛否を決めかねる、あるいは投票に行くかどうかも判らない国民が、見るともなく見る。去年来、テレビのニュース番組に政府、保守系から攻撃が繰り返されてきた理由はそこにあるだろう。最近、高市総務相が「電波停止」にたびたび言及しているのも、単に7月の参院選を考えての事ではないだろう。それだけだったら、むしろ批判を浴びないように穏当な発言に留める方が利口である。だけど、国民投票前にコワモテ発言をすれば、かえって逆効果である。だから今から言って、テレビ界が委縮してしまうように「躾けている」のである。

 そう考えてみると、次にもう一つ「学校現場」というか、「教員」をこの機会に委縮させておかないといかない。必ず、そういう風な動きが出てくるはずである。そこで、うっかり政権側の思惑を読み違えて、一生懸命「主権者教育」を頑張ったりした教員が血祭に挙げられるんだろう。まあ、公立高校なんかはすでに「制圧」されているかもしれない。だから、「国立」や「私立」のような、自分たちが標的になると思ってないところで、炎上し始めるかもしれない。

 学校で朝日新聞を取っている。(大学受験に一番出るという話だから、そういう高校は多いだろう。)だから、朝日の社説をコピーして、「新聞の社説を読んでみよう」なんて授業をする。たまたま学校に朝日があったから使っただけでも(そういう問題意識や情勢判断が全くない教員も中にはいる)、親の中には「偏向教育が行われている」と保守系議員や産経新聞に通報する人がいると思わないといけない。(ちなみに、僕は学校図書館が朝日だったから、授業で比較検討させるため「読売も取ってくれ」と予算請求して却下されたことがある。だから、新聞の授業をするときは、自分で買っていった。)

 それと、教員というのは、学校の中だけで生きている。だから、「タテマエ」で社会を見る度合いが強い。また生徒も普通は「生計維持者」ではない。だから、原発などを討論させると、「理想論」を出してきやすい。「今すぐ完全に廃止する」という「現状の政治情勢では実現が難しい考え」が一方にある。もう一方に、「科学の発展で、絶対確実に安全な原発と放射性廃棄物処理の技術が必ず開発できる」などと言いだして引かない生徒が出てくる。そういう中で、つい「段階的に減らしていく」などという生徒がいると、「穏当」だと思って評価してしまいやすい。そうすると、電力会社の親がいて、この授業について校長は知っていたのかなどと言い始めるのである。

 どこに落とし穴があるか判らないと思って、最近はいつでもそうなんだけど、特に「18歳選挙権」問題は要注意で進んで行かないといけない。政権側は必ず仕掛けてくると思う。しかし、まあ、それは逆に考えると、「学校の先生」が「戦後平和主義」の重要な担い手だということでもあるだろう。それは一体どういう意味があるのだろうかということを次回に。 
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