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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

追悼・永六輔

2016年07月11日 21時48分04秒 | 追悼
 永六輔さんが亡くなった(1933~2016)。長く闘病中だったから、驚きはないけれど、ああやっぱりかと悲しい。永さんについては、ラジオのこと、歌のこと、本のこと、いっぱい書くことがあるように思う。だけど、僕にとっては、「中年御三家」がみんな亡くなってしまったなあと思ったのである。
  
 「中年御三家」というのは、70年代後半に永六輔小沢昭一野坂昭如がパロディで名乗って「歌手」活動をしていたものだが、小沢昭一は2012年に亡くなり、野坂昭如が2015年に亡くなった。小沢昭一が亡くなった後で、池袋の新文芸座で映画の追悼上映があった。永さんも何度も訪れて、小沢昭一について熱く思い出を語っていた。俳優の加藤武と一緒になって、小沢昭一を忘れずに語り継ぐ会を続けようなどと語っていた。でも、加藤武も亡くなってしまったし、永さんも亡くなった。

 2013年に、世田谷文学館で「上を向いて歩こう展」が開かれたときに、永さんの講演会が開かれた。僕はその講演会に幸運にも当たったので、聞いた思い出がある。もう車いすになっていて、遠藤泰子さんが付き添っていた。中身の話は忘れてしまったが、とにかく楽しい時間を過ごしたなあと思う。

 この「上を向いて歩こう」はアメリカで「スキヤキ」と題されて大ヒットしたわけである。去年公開された「インヒアレント・ヴァイス」という映画でも、中で突然この曲が出てきた。震災が相次ぐ中で、この曲も多くの人に歌い継がれている。僕も個人的に思い出がある曲である。永さんが書いたミュージカルのテーマ曲である「見上げてごらん夜の星を」も、素晴らしい。これは高度成長下の日本で、働きながら学ぶ夜間定時制高校生のために作られた歌である。知らない人もいると思うけど、そのことも忘れちゃいけない。今も数多くが学ぶ夜間定時制高校生を励ます歌だと思う。どっちも映画になっているけど、見てない人が多いと思う。60年代の青春娯楽映画だけど、どっかで機会があれば懐かしい青春を感じることができる。

 ラジオも聞いていたけど、必ずいつも聞いていたわけではない。でも、TBSラジオの土曜ワイドなど、ゲストの多様さにいつも楽しんだし、考えさせてくれた。大分県で養護教諭をしながら「いのちの授業」を続けていた故・山田泉さんという人がいた。松下竜一さんのミニコミでよく読んでいた山田さんも、永さんのお友だちでよく出ていた。がんを患いながら活動していた山田さんの講演会も、永さんの番組で告知され聞きに行った。ヴァーチャル空間でのお友だちではなく、リアルなお友だちがいっぱい集まってくる人だったのだなと思う。

 たくさんの本を書き、特に岩波新書から出た「大往生」という大ベストセラーが有名である。何冊か読んでいると思うが、あまりにも数が多くて、ほとんどは読んでいない。僕がお勧めなのは、「悪党諸君」という本で、なんと各地の刑務所を慰問した時の講演録なのである。だから、要するにリスナーは「犯罪者」。「悪党諸君」というわけだが、これが面白くて深い。笑える。笑って泣ける。一番笑いと感動が必要な場所で語っている。どこかで見たら読んでみて。

 何度も書いているけど、僕はこの頃に活躍した人たちに一番影響を受けている。戦争を子どものときに経験し、絶対に平和を守っていかなくてはいけないと心に刻んだ人たちである。平和と文化を愛し、戦争と差別を憎む、そんな感性を今後も受け継ぎ、引き継いでいきたいと思う。死は必ずだれにも訪れる。一種の解放でもあるのだから、そんなに嘆かないようにしたい。「大往生」と思って、思いをつないでいきたい。
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