尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

不可解すぎる国有地払下げ-森友学園問題①

2017年02月24日 23時12分47秒 | 政治
 大阪市で「塚本幼稚園」を経営する「学校法人森友学園」に対する大阪府豊中市の国有地払下げ問題が大問題になっている。もともとは木村真豊中市議が払下げの値段を開示するように、大阪地裁に提訴した。それが2月8日。それに対し、一転して財務省が2月10日に払下げ費用を公表したところ、1億3千4百万だった。隣接のより広い土地が豊中市に売却されたときの値段は14億円超だったという。

 そもそもその場所は、森友学園が今年4月に開校を予定している「瑞穂の國記念小學院」なる小学校の建設用地である。「塚本幼稚園」は(幼稚園だというのに)「教育勅語」を暗唱させるという「教育」を行っているという。小学校建設用地にも、教育勅語が書かれたポスターが貼ってあるそうだ。木村市議はもともと、それを見て不審に思って情報開示を求めたところ、売買価格が黒塗りされた資料しか出てこなかったのである。そこで開示を求める提訴に至ったわけである。

 不動産鑑定士が鑑定したその土地の評価額は、9億5千6百万円だった。ところが地下に撤去が必要な埋設物があり、その撤去に8億円がかかるとされた。その結果差し引きの1億3千4百万で売却されたわけである。(2016年6月20日)ところが昨年3月に土壌汚染や埋設物処理の費用として、1億3千2百万が支払われていた。8億円というのは、また新たに見つかった分の撤去費だという。かくして、事実上「たった200万円」で国有地が森友学園に売却されたわけである。

 その後、この小学校の「名誉校長」を安倍首相夫人の安倍昭恵氏が務めていたことも報じられた。また、この小学校は「安倍晋三小学校」と名付けて寄付金を募っていたという。と同時に、幼稚園をめぐっては「退園」になった保護者との係争もあり、その保護者に対して韓国人、中国人と名指しで「ヘイト表現」のような見解をホームページに載せていたという。

 という風に、国有地払下げ問題に端を発して、さまざまな問題が噴出している。国会でも大きく取り上げられ、ようやくテレビでも大きく取り上げられるようになってきた。それでも新聞によっては取り上げ方に違いがあるようである。この問題の広がりに関しては、今後も注視していきたいと思うけど、僕がもともと不可解だと思うことがいくつかある。そのことについて、何回か書いておきたい。

 最初に不思議に思ったのは、「この土地は一体何なのか」ということである。ここは元は住宅地だというけれど、普通の土地にそれほど巨額の撤去費用を必要とするゴミが埋まっているだろうか。そもそも当初「風評被害」を恐れる学園側の要望で売却額が秘密にされたという。しかし、校舎部分は撤去したが、校庭部分はそのままだともいう。本当に8億円もかかったのか、よく判らない。「風評被害」が起きるかもしれない埋設物とは何だろう。8億円もかけて撤去するべきものとは。

 この土地はもとは大阪空港(伊丹空港)の騒音対策区域だった。そのため、1974年に(現在の)国土交通省大阪航空局が土地を購入した。その後、騒音対策が進み区域指定が解除された。そこで、2013年に大阪航空局の依頼で、近畿財務局が買受先を公募した。(以上、東京新聞2月18日付記事による。)ということは、今は騒音対策上は問題はないのかもしれないが、空港に近いことは間違いないだろう。防音対策をしっかりすれば大丈夫かもしれないけど、そもそも学校にふさわしい土地なのだろうか。地下には埋設物、地上には航空騒音。工場や倉庫ならともかく、ここに小学校なのか。

 それに、こういう経緯そのものがおかしい。個人ではありえない。自分で家を建てようと思って土地を買う。全額自費で払えない場合は、銀行ローンを組む。そうして買った土地に家を建てようとしたら、地下に埋設物があった。じゃあ、どうなるか。そもそも買わないことには、地下の工事はできない。いったん最初に全額払うはずである。そこで問題があったら、不動産業者に抗議して、そこの会社(売主)の負担で除去工事をしてもらう段取りになる。それが普通だろう。

 今回の土地に関しては、買う前に埋設物が判ったのは、そもそも最初は「有償貸付契約」が結ばれていたからである。初めは借地という契約だったのである。ところが埋設物が見つかり、その撤去費用が発生したのちに、売買契約に代わる。でも、それは本来おかしい。「こんなものがあって学校が作れない、国で何とか撤去してくれ」と抗議するのが普通ではないのか。そして、国の責任で適切な処理をして、何を作ってもいい土地にした後で、適正価格で売却する。それが普通の筋道だろう。

 大阪航空局の対応も、そもそもおかしい。売る前にきちんと地下を調査しないのか。後で問題になるような土地を売りに出すのは変である。何かに使う土地として売却するならば、当然事前にするべきことをしていない。それは何故だろうか。当初から、「ここは森友学園に」というルートが敷かれていたのではないか。まだ認可も出ていない私立小学校建設のために、学園側は一度に購入費を用意できない。そこで「貸付」ということになった。だけど、埋設物があることが判った。(それはなんだかわからないけど。)じゃあ、それを理由に「値引きして売る」という案を誰かが考えた。

 だけど、どう考えてもおかしい。当初の値段で売った上で、「埋設物撤去費用の請求書を国に回す」というならまだわかる。実際に撤去費用がいくらかかったのか。それが示されない限り、この契約は納得できないだろう。ある意味では「詐欺」の可能性さえある。誰がこの案を考え出したのか。そういう人がいたのではないかと思う。そして、先に書いたように、その小学校の教育内容の問題以前に、そもそもその土地が学校にふさわしいのかに、僕は大きな疑問を持つのである。
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