2017年1月の訃報特集。一番大きく取り上げられたのは松方弘樹だろうけど、あえてフランスの女優、エマニュエル・リヴァから取り上げたい。27日没、89歳。この人はアラン・レネ監督の「二十四時間の情事」(ヒロシマ・モナムール、1958)の主演女優だった。そのことは日本人に印象深いことだから、訃報に大きく取り上げられるのは当然だ。しかし、この人はミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」(2013)の主演女優でもある。フランスのセザール賞女優賞を取っただけでなく、外国人でありながら米アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされた。史上最高齢ノミネートの85歳である。現時点では、このことに触れない記事はありえないと思うんだけど、日本の新聞は報じない。どうしてかは知らないけど、昔見たアラン・レネは知ってても、最近の外国映画は知らないということなんだろう。
(左=愛、アムール 右=二十四時間の情事)
「二十四時間の情事」では広島ロケを行ったわけだが、その時に撮った大量の写真が最近見つかり、写真集も出た。2008年には広島での展覧会に合わせて来日もしている。岡田茉莉子との朗読共演なども行った。吉田喜重監督、岡田茉莉子夫妻の回顧上映がフランスで行われたときに、エマニュエル・リヴァは会場を訪れて岡田茉莉子とは親交があったのである。(岡田茉莉子自伝に書いてあったと思う。)そういう話題性も含めて、もっと大きな訃報記事が必要だったように思う。
同日の新聞では、米国俳優ジョン・ハートの訃報も大きかった。27日没、77歳。デヴィッド・リンチの「エレファント・マン」(1980)で主演者を演じてアカデミー賞にノミネートされた。米女優メアリー・タイラー・ムーアは、25日没、80歳。「普通の人々」というロバート・レッドフォードが作品賞、監督賞を得た映画でアカデミー主演女優賞にノミネートされた。まあ、忘れてたけど。社会活動家として知られ、動物愛護などに取り組んだというけど、それは知らなかった。
出てない新聞もあったけど、米国作家ナット・ヘントフが7日に死去した。91歳。ユダヤ人だけど、ジャズが好きで、ニューヨークの雑誌にジャズや政治のコラムを書いて有名になった。若者向けの小説もたくさん書いている。日本でも「ジャズ・カントリー」や「ペシャンコにされてもへこたれないぞ」「ぼくらの国なんだぜ」など多くの翻訳が出ていた。訳者が木島始や片桐ユズルだというと、判る人には何となくどんな本か判るだろう。小説「エクソシスト」を書いた作家、ウィリアム・ピーター・ブラッティも12日に死去、89歳。映画化に際しては脚本を担当し、アカデミー脚色賞を取った。
さて、日本に移ると、松方弘樹が21日に死去、74歳。父親が近衛十四郎だったということは、もう解説しないと伝わらないのか、あまり取り上げられなかった。本人の結婚歴というか、「スキャンダル」はまあ報じないものかもしれないが…。近衛十四郎は僕がテレビで好きだったんだけどなあ。映画でも「仁義なき戦い」ばかりが出てくる。大ヒットした1作目で準主演だったけど、ラスト近くで死んでしまう。印象的だけど、その後を考えると損だったか。でも、その後の「実録路線」では大活躍していて、特に「実録映画の極北」とされる「北陸代理戦争」は強い印象がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/70/28/18a914507a5867978b0f4cf5ec80e564_s.jpg)
モデルの実在ヤクザが、映画で使ったロケの店で実際に襲撃されて死亡する事件が起こり、「封印」されてしまったような映画になったが。演技がどうこういう以前に、強烈なインパクトがあった。その後のテレビでの活躍はあまり知らないけど、尋常でない貫録、並みでない豪快なスケールで、「最後の活動スター」というべき人だったと思う。
俳優の神山繁(こうやま・しげる)が3日死去、87歳。昔の映画やテレビを見ると、とにかくいっぱい出ている。テレビでは「ザ・ガードマン」などに出ていて、独特な風貌ですぐ名前を覚えた。もとは文学座の俳優で、分裂時の「劇団雲」、「演劇集団円」と移った。芥川比呂志と行動を共にした人である。舞台では見ていないけど、映画はいっぱい見てると思う。ではどれと言われると困るけど。最近では北野武「アウトレイジ・ビヨンド」に出ていたというんだけど、あまり覚えてない。
(晩年と昔の写真)
藤村俊二の訃報もあった。25日没、82歳。ずいぶんいろんなテレビに出ていたけど、元は振付師だったのは知らなかった。レナウンのCM「イエイエ」の振付担当だったとは。これは非常に重大な仕事と言える。軽妙でとぼけた味で知られた。「昭和9年会」というのを作っていたというが、愛川欽也、大橋巨泉、長門裕之、坂上二郎などと言うから、続々と鬼籍に入っていることに暗然とする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/50/e0/d8e6b6bf38da7d4e0a2e0e6ff5026a54_s.jpg)
京都大学名誉教授、岡田節人(おかだ。ときんど)が、17日に死去、89歳。発生生物学の第一人者で、文化勲章受章。iPS細胞などにつながる源流となった研究だという。美術史家木村重信が、30日死去、91歳。民族美術の研究もてがけ、「カラハリ砂漠」などの著書がある。元ナムコ会長の中村雅哉が22日に死去、91歳。バンダイと経営統合した。日活を買収したこともあった。
元小結の時天空、間垣親方が死去、31日、37歳。モンゴル出身で、足技が得意だった。悪性リンパ腫で休場し、昨年名古屋場所限りで引退した。時々こういうこともあるんだなあと思う。木之本興三が15日、68歳で死去。この人の名前を知らなかったけど、Jリーグ創設に尽力し、日韓ワールドカップでは日本代表の団長だった。古河電工の選手だったけど、26歳の時に致死性の病気で腎臓を全摘出して引退したと出ている。スポーツ選手にはつらいことだったろうけど、さまざまな人生がある。
元ポルトガル首相でEU加盟を主導したマリオ・ソアレス(7日没、92歳)東西統一時のドイツ大統領ローマン・ヘルツォーク(10日死去、82歳)などの他、世界政治の分野ではイランの元大統領、ハシェミ・ラフサンジャニが8日に死去した。82歳。「穏健派」と言われるが、もっと複雑な立場の人で、要するに「現実主義」という名のぬえのような権力者だったと思う。保守派には違いなく、「保守強硬派」と対立する「保守穏健派」という位置づけになる。ホメイニ師死後に、ハメネイ師の後ろ盾になったことから一定の影響を保守葉強硬派にも持っていた。トランプ政権下で、イラン政治の行く末も注目される中、現在のロハニ政権には打撃になると見られている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/4c/0b/c94836e9689cd952e3d69230254bf623_s.jpg)
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「二十四時間の情事」では広島ロケを行ったわけだが、その時に撮った大量の写真が最近見つかり、写真集も出た。2008年には広島での展覧会に合わせて来日もしている。岡田茉莉子との朗読共演なども行った。吉田喜重監督、岡田茉莉子夫妻の回顧上映がフランスで行われたときに、エマニュエル・リヴァは会場を訪れて岡田茉莉子とは親交があったのである。(岡田茉莉子自伝に書いてあったと思う。)そういう話題性も含めて、もっと大きな訃報記事が必要だったように思う。
同日の新聞では、米国俳優ジョン・ハートの訃報も大きかった。27日没、77歳。デヴィッド・リンチの「エレファント・マン」(1980)で主演者を演じてアカデミー賞にノミネートされた。米女優メアリー・タイラー・ムーアは、25日没、80歳。「普通の人々」というロバート・レッドフォードが作品賞、監督賞を得た映画でアカデミー主演女優賞にノミネートされた。まあ、忘れてたけど。社会活動家として知られ、動物愛護などに取り組んだというけど、それは知らなかった。
出てない新聞もあったけど、米国作家ナット・ヘントフが7日に死去した。91歳。ユダヤ人だけど、ジャズが好きで、ニューヨークの雑誌にジャズや政治のコラムを書いて有名になった。若者向けの小説もたくさん書いている。日本でも「ジャズ・カントリー」や「ペシャンコにされてもへこたれないぞ」「ぼくらの国なんだぜ」など多くの翻訳が出ていた。訳者が木島始や片桐ユズルだというと、判る人には何となくどんな本か判るだろう。小説「エクソシスト」を書いた作家、ウィリアム・ピーター・ブラッティも12日に死去、89歳。映画化に際しては脚本を担当し、アカデミー脚色賞を取った。
さて、日本に移ると、松方弘樹が21日に死去、74歳。父親が近衛十四郎だったということは、もう解説しないと伝わらないのか、あまり取り上げられなかった。本人の結婚歴というか、「スキャンダル」はまあ報じないものかもしれないが…。近衛十四郎は僕がテレビで好きだったんだけどなあ。映画でも「仁義なき戦い」ばかりが出てくる。大ヒットした1作目で準主演だったけど、ラスト近くで死んでしまう。印象的だけど、その後を考えると損だったか。でも、その後の「実録路線」では大活躍していて、特に「実録映画の極北」とされる「北陸代理戦争」は強い印象がある。
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モデルの実在ヤクザが、映画で使ったロケの店で実際に襲撃されて死亡する事件が起こり、「封印」されてしまったような映画になったが。演技がどうこういう以前に、強烈なインパクトがあった。その後のテレビでの活躍はあまり知らないけど、尋常でない貫録、並みでない豪快なスケールで、「最後の活動スター」というべき人だったと思う。
俳優の神山繁(こうやま・しげる)が3日死去、87歳。昔の映画やテレビを見ると、とにかくいっぱい出ている。テレビでは「ザ・ガードマン」などに出ていて、独特な風貌ですぐ名前を覚えた。もとは文学座の俳優で、分裂時の「劇団雲」、「演劇集団円」と移った。芥川比呂志と行動を共にした人である。舞台では見ていないけど、映画はいっぱい見てると思う。ではどれと言われると困るけど。最近では北野武「アウトレイジ・ビヨンド」に出ていたというんだけど、あまり覚えてない。
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藤村俊二の訃報もあった。25日没、82歳。ずいぶんいろんなテレビに出ていたけど、元は振付師だったのは知らなかった。レナウンのCM「イエイエ」の振付担当だったとは。これは非常に重大な仕事と言える。軽妙でとぼけた味で知られた。「昭和9年会」というのを作っていたというが、愛川欽也、大橋巨泉、長門裕之、坂上二郎などと言うから、続々と鬼籍に入っていることに暗然とする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/50/e0/d8e6b6bf38da7d4e0a2e0e6ff5026a54_s.jpg)
京都大学名誉教授、岡田節人(おかだ。ときんど)が、17日に死去、89歳。発生生物学の第一人者で、文化勲章受章。iPS細胞などにつながる源流となった研究だという。美術史家木村重信が、30日死去、91歳。民族美術の研究もてがけ、「カラハリ砂漠」などの著書がある。元ナムコ会長の中村雅哉が22日に死去、91歳。バンダイと経営統合した。日活を買収したこともあった。
元小結の時天空、間垣親方が死去、31日、37歳。モンゴル出身で、足技が得意だった。悪性リンパ腫で休場し、昨年名古屋場所限りで引退した。時々こういうこともあるんだなあと思う。木之本興三が15日、68歳で死去。この人の名前を知らなかったけど、Jリーグ創設に尽力し、日韓ワールドカップでは日本代表の団長だった。古河電工の選手だったけど、26歳の時に致死性の病気で腎臓を全摘出して引退したと出ている。スポーツ選手にはつらいことだったろうけど、さまざまな人生がある。
元ポルトガル首相でEU加盟を主導したマリオ・ソアレス(7日没、92歳)東西統一時のドイツ大統領ローマン・ヘルツォーク(10日死去、82歳)などの他、世界政治の分野ではイランの元大統領、ハシェミ・ラフサンジャニが8日に死去した。82歳。「穏健派」と言われるが、もっと複雑な立場の人で、要するに「現実主義」という名のぬえのような権力者だったと思う。保守派には違いなく、「保守強硬派」と対立する「保守穏健派」という位置づけになる。ホメイニ師死後に、ハメネイ師の後ろ盾になったことから一定の影響を保守葉強硬派にも持っていた。トランプ政権下で、イラン政治の行く末も注目される中、現在のロハニ政権には打撃になると見られている。
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