夏には読もうかと戦争関係の本に取り掛かると、数冊読むと今度はミステリーでもとなる。猛暑の中でそうそうマジメ本ばかり読んでられない。8月の文春文庫新刊で、若竹七海「錆びた滑車」が出た。いま日本のものでは一番待ち望んでる女探偵・葉村晶シリーズの最新刊。調布市仙川のシェアハウスに住んで(もうすぐ建て替えで出て行かないといけない)、週末は吉祥寺のミステリー古書店でアルバイトしている。その2階に「白熊探偵社」があり、葉村が探偵をしている。
まあしかし、名前で判るように「一応やってます」感あふれる探偵社で、仕事はほとんどない。昔勤めていた事務所から時々仕事を頼まれるぐらいだ。今回はある老女の尾行を依頼され、田園調布から目黒、そこから渋谷に出て、京王井の頭線で三鷹台まで行く。三鷹台ってどこ?知らないので調べたら、吉祥寺、井の頭公園の次の駅だった。ここで出てくる地名は、東京23区の西部とその近縁ばかり。出てくる地名で、一番東は巣鴨あたり。東京でも東部に住む人間には全く土地勘がない。オシャレイメージの強い区部の西の方の、土着の人間関係が僕にはすごく新鮮だ。
そこで老女が別の老女と争い、アパート2階から落下してきて葉村の上に落ちて来る。このように、なぜかあり得ないような不運にめぐりあう才能を葉村は持っている。文春文庫オリジナルで出た「さよならの手口」「静かな炎天」も大傑作だったが、今度の「錆びた滑車」も期待を裏切らない面白さだ。もう「仕事はできるが、不運すぎる女探偵」が不動のキャッチコピーで定着している。今回の文庫には初版限定付録で「シリーズガイド」が付いてて、葉村シリーズが全部判る。
天から降ってきた老女、青沼ミツエとともにケガを負って病院に運ばれた葉村。そこでビックリすることを聞く。ミツエの息子と大学生の孫が少し前に交通事故にあって、息子は死亡、孫は一命をとりとめたものの大ケガを負って、同じ病院でリハビリ中。事故の原因は、最近よく聞く高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違いらしい。死んだ息子の方は、ぼう大な蔵書をアパートの部屋を倉庫代わりにして残していた。葉村はその蔵書の整理を頼まれ、ついでにアパートの空き部屋に住んだらという展開に。もちろんそれで終わるわけはなく、なぜか事件が続発する。謎の本筋がどこにあるか、なかなか読めない展開が最後に見事に収束する。
遊園地「スカイランド」が重要な役割を果たすが、これは「よみうりランド」。作中人物が言っているが、東京の東の人間はあまり行かない。地理的に「としまえん」や「後楽園ゆうえんち」が近いので、そっちに行く。もちろんディズニーリゾートは別格だが、「よみうりランド」は遠いなという感じ。ところで青沼親子はそこで事故にあったのだ。しかし、孫の方は死にはしなかったものの、事故当時の記憶をなくしていて、なんで自分たち親子がそんな場所にいたのかが思い出せない。それを突き止めたいというのが、とりあえず葉村への依頼のようなものになる。
ミステリーを全部書くわけにはいかない。若竹さんの本は、特に最近素晴らしく面白い。ミステリー古書店のうんちく話も興味深い。今回は「ニューヨーク・ミステリーフェア」と「演劇ミステリーフェア」を開催する。巻末の紹介を読むと、ニューヨークのミステリーでローレンス・ブロックの泥棒バーニーのことは書いてあるけど、探偵マッド・スカダーのことに触れてない。僕にはまずスカダーものになるけど、ニューヨークならあれが抜けてるといくつか挙げられるだろう。それが作者の好みかもしれないし、読者への投げかけかもしれない。
雫井脩介(しずくい・しゅうすけ)の2013年の作品「検察側の罪人」上下を続けて一気読み。原田眞人監督で映画化され、公開が近い。見る前に読んでおきたい方だから、早く読まないと。これはプロットだけで言えば、ものすごく面白い。ほとんど紹介できない筋書きだが、これは僕はいけないと思う。この設定はまずいと思った。木村拓哉、二宮和也主演と大々的に宣伝しているから、顔が浮かんでしまって何だか脳内映画みたいな読書だった。検察官の世界を描くけど、ホント設定のトンデモ度はすごい。でも僕にとっては一線を越えてるとしか思えない。
まあしかし、名前で判るように「一応やってます」感あふれる探偵社で、仕事はほとんどない。昔勤めていた事務所から時々仕事を頼まれるぐらいだ。今回はある老女の尾行を依頼され、田園調布から目黒、そこから渋谷に出て、京王井の頭線で三鷹台まで行く。三鷹台ってどこ?知らないので調べたら、吉祥寺、井の頭公園の次の駅だった。ここで出てくる地名は、東京23区の西部とその近縁ばかり。出てくる地名で、一番東は巣鴨あたり。東京でも東部に住む人間には全く土地勘がない。オシャレイメージの強い区部の西の方の、土着の人間関係が僕にはすごく新鮮だ。
そこで老女が別の老女と争い、アパート2階から落下してきて葉村の上に落ちて来る。このように、なぜかあり得ないような不運にめぐりあう才能を葉村は持っている。文春文庫オリジナルで出た「さよならの手口」「静かな炎天」も大傑作だったが、今度の「錆びた滑車」も期待を裏切らない面白さだ。もう「仕事はできるが、不運すぎる女探偵」が不動のキャッチコピーで定着している。今回の文庫には初版限定付録で「シリーズガイド」が付いてて、葉村シリーズが全部判る。
天から降ってきた老女、青沼ミツエとともにケガを負って病院に運ばれた葉村。そこでビックリすることを聞く。ミツエの息子と大学生の孫が少し前に交通事故にあって、息子は死亡、孫は一命をとりとめたものの大ケガを負って、同じ病院でリハビリ中。事故の原因は、最近よく聞く高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違いらしい。死んだ息子の方は、ぼう大な蔵書をアパートの部屋を倉庫代わりにして残していた。葉村はその蔵書の整理を頼まれ、ついでにアパートの空き部屋に住んだらという展開に。もちろんそれで終わるわけはなく、なぜか事件が続発する。謎の本筋がどこにあるか、なかなか読めない展開が最後に見事に収束する。
遊園地「スカイランド」が重要な役割を果たすが、これは「よみうりランド」。作中人物が言っているが、東京の東の人間はあまり行かない。地理的に「としまえん」や「後楽園ゆうえんち」が近いので、そっちに行く。もちろんディズニーリゾートは別格だが、「よみうりランド」は遠いなという感じ。ところで青沼親子はそこで事故にあったのだ。しかし、孫の方は死にはしなかったものの、事故当時の記憶をなくしていて、なんで自分たち親子がそんな場所にいたのかが思い出せない。それを突き止めたいというのが、とりあえず葉村への依頼のようなものになる。
ミステリーを全部書くわけにはいかない。若竹さんの本は、特に最近素晴らしく面白い。ミステリー古書店のうんちく話も興味深い。今回は「ニューヨーク・ミステリーフェア」と「演劇ミステリーフェア」を開催する。巻末の紹介を読むと、ニューヨークのミステリーでローレンス・ブロックの泥棒バーニーのことは書いてあるけど、探偵マッド・スカダーのことに触れてない。僕にはまずスカダーものになるけど、ニューヨークならあれが抜けてるといくつか挙げられるだろう。それが作者の好みかもしれないし、読者への投げかけかもしれない。
雫井脩介(しずくい・しゅうすけ)の2013年の作品「検察側の罪人」上下を続けて一気読み。原田眞人監督で映画化され、公開が近い。見る前に読んでおきたい方だから、早く読まないと。これはプロットだけで言えば、ものすごく面白い。ほとんど紹介できない筋書きだが、これは僕はいけないと思う。この設定はまずいと思った。木村拓哉、二宮和也主演と大々的に宣伝しているから、顔が浮かんでしまって何だか脳内映画みたいな読書だった。検察官の世界を描くけど、ホント設定のトンデモ度はすごい。でも僕にとっては一線を越えてるとしか思えない。