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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

ブラッドリー・クーパー監督「アリー/スター誕生」

2019年01月02日 21時04分27秒 |  〃  (新作外国映画)
 年末年始の所感をまとめるつもりが、どうもその気になれいまま、ミステリー読みに集中していた。今年の初映画は近所の映画館で夫婦で見た「アリー/スター誕生」。日本では「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットに隠れてしまった感じだが、アメリカでは賞レースでも有力視されている。僕の見るところ、年間ベストとまでは言えないけど、とてもよく出来た映画だった。特に主演のレディ・ガガ(1986~)が素晴らしくて必見。監督デビューのブラッドリー・クーパー(1975~)も大注目である。

 〝A Star Is Born”という映画は、今まで4回作られている。細かい話は後で書くけど、前の映画を知らなくても筋は定番だから事前に想定できる。実力はあるが売れていない歌手(女優)が、ふとしたきっかけで男性の大スターと知り合う。そこから思わぬ大成功への道が開けてゆき、二人の間には恋愛も始まるが、しかし成功には苦い代償も伴うのだった…。簡単に書いてしまえば、そういうことになる。それが「スター誕生」(あるいは「スタア誕生」)という物語である。

 ウィキペディアを見ると、この企画はもともとビヨンセ主演、クリント・イーストウッド監督で進められていたらしい。それも素晴らしい映画になったのではないかと思うが、相手役がなかなか決まらず、ビヨンセの都合も合わず、結局ブラッドリー・クーパーが製作、共同脚本、監督、主演(歌も)と全面的に大活躍することになった。主演女優はレディ・ガガに決まり、撮影がスタートする。しかし、この段階ではレディ・ガガの歌唱力しか確実なウリがない。

 だけど驚くべきことに、レディ・ガガの繊細な感情表現が素晴らしく、ゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされている。アカデミー賞ノミネートも有力だろう。ウェートレスが夜のバーで歌っている。そこで出会う大スター。自信のなさが高揚へと移りゆくさまを絶妙に演じて、女優開化である。一方、ブラッドリー・クーパーもゆれ動く心情をレディ・ガガに合わせて演じていて、確かな演出力を見せている。歌のシーンも自分でやっていて、現実の大スターとしか思えない存在感。クーパーは「アメリカン・スナイパー」などで3回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされているが、ロバート・レッドフォードみたいに監督賞でオスカーを取ってしまうかもしれない。

 最初の「スタア誕生」は1937年のアメリカ映画。この時はハリウッド女優の話で、主演はジャネット・ゲイナー。聞いてもすぐに思い出さないけど、無声映画の傑作「第七天国」「サンライズ」に主演していた人で、第一回アカデミー賞主演女優賞受賞者である。それをミュージカル風にしたのが、1954年の「スタア誕生」。ジョージ・キューカー監督、ジュディ・ガーランド主演。もちろん「オズの魔法使い」のドロシーだった女優だが、その後は波乱の人生を送った。「スタア誕生」で久しぶりに主演し大成功をおさめたが、オスカーを取れずに悲劇の人生を送る。

 女優の話を音楽業界に変えたのが3回目の「スター誕生」(1976年)で、バーブラ・ストライサンドが主演して、アカデミー賞歌曲賞を受賞した。相手役はクリス・クリストファーソンで、僕はこの映画は同時代に見ている。「スター誕生」というドラマは、ジュディ・ガーランドやバーブラ・ストライサンドなどがやることで作られてきたイメージがある。映画内で「鼻」でスター向きじゃないと言われているレディ・ガガが主演することで成功している。

 「レディ・ガガ」という芸名は、クイーンの「レディオ・ガ・ガ」から来ている。クイーンあるいはフレディ・マーキュリーの「親日家」ぶりは触れられているが、レディ・ガガも東日本大震災直後に来日してコンサートを行ったり日本への親近感を持っていることで知られる。日本では「アリー/スター誕生」が映画でも音楽でも出遅れているようだが、この映画ももっとヒットしていいと思う。映画の作り方は「ボヘミアン・ラプソディ」よりずっと現代風で、うまく作られている。
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