「ミレニアム」シリーズ第4部を映画化した「蜘蛛の巣を払う女」。まあそこそこ楽しめるアクション映画になっていた。そのレヴェルだと普段は書かないけど、今回は「リスベット女優」の話をしたいから書いておく。映画そのものは大きく改変されているので、原作とは別物と言うべきだろう。

映画化(あるいは舞台化などの二次利用一般)では、原作を改変することがある。それはやむを得ないことだ。原作があまりにも長大だったら短くするしかない。あるいは商業的配慮で最後をハッピーエンドにするとか、シリアス作品では原作への批評の意味で変えることもある。しかし「検察側の罪人」では原作の設定が完全に正反対になっている。映画としては非常に面白く出来ていて、俳優も熱演していたけれど、ここまで原作の意図をひっくり返していいのだろうかと思ったりする。
それは「蜘蛛の巣を払う女」にも言えて、ハリウッド映画だから当然のこととして原作の持つリベラル精神はほとんどない。原作ではアメリカの監視社会化も問われているけど、映画ではそもそもの設定が「核兵器の発射システム」なるものに変更されている。そんなものが流出しては大変だし、特にロシア系の犯罪組織に渡ったりしてはまずい。アメリカも含め現代文明を考察している原作から、映画は単なるロシア系テロ組織との戦いに変えている。そういう風に変わるわけである。
それにしても狙われるフランス・バルデル教授の息子アウグストがしゃべっているのには驚いた。原作では重い自閉症で会話ができないことが非常に重要な意味を持っていた。この脚本を書いたのはスティーヴン・ナイトで、多くの映画で脚本を書いている。小説家、映画監督もしているらしいが、「イースタン・プロミス」「マダム・マロニーと魔法のスパイス」「マリアンヌ」などを書いた人である。監督は「死霊のはらわた」「ドント・プリーズ」のフェデ・アルバレス。
ところで今回のリスベット・サランデル役はクレア・フォイ(1984~という女優がやっている。テレビドラマの出演が多かったようで、僕は初めて。しかし、リスベットは小柄という設定なので、その意味では大柄すぎる感じがする。双子の妹カミラはシルヴィア・フークスがやってる。「鑑定士と顔のない依頼人」で謎の依頼人クレアをやってた人で、本当はもっと美人だと思うけど、この映画ではなんだか変顔をしてる。カミラが超絶美人で、リスベットは容貌に恵まれないというのが原作なんだけど、映画ではそこまで違いがない感じ。
(クレア・フォイ)
リスベットは非社会的で、付き合いづらいタイプである。この映画では一人で「スーパーヒーロー」をやってるけど、それも原作とは違う。もっと不可思議なタイプだと思うが、ハリウッド映画では判りやすいタイプになってしまう。その意味ではスウェーデンで映画化されたとき、最初にリスベットを演じたノオミ・ラパス(1979~)が一番ムードが近いように思う。「ドラゴン・タトゥーの女」一本で、ノオミ・ラパスは世界で活躍する大スターになった。そのぐらいのインパクトがあった。写真を見ると、普通に美人だけど、映画では発達障害っぽい演技に迫力があった。
(ノオミ・ラパス)
ハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」ではルーニー・マーラ(1985~)がリスベットを演じた。これで彼女はアカデミー賞にノミネートされ、その後は「キャロル」でカンヌ映画祭女優賞を得るなど大活躍している。演技的には良かったと思うけど、リスベットのイメージとしては上品すぎたかなと思う。まあだんだんリスベットがスーパー化しているのは原作も同じだ。でも超人とは違う「変人」さがリスベットの魅力である。どうも今回のクレア・フォイも「変人」性が薄いと思うが、そうじゃないとハリウッドで受けないということだろう。
(ルーニー・マーラ)

映画化(あるいは舞台化などの二次利用一般)では、原作を改変することがある。それはやむを得ないことだ。原作があまりにも長大だったら短くするしかない。あるいは商業的配慮で最後をハッピーエンドにするとか、シリアス作品では原作への批評の意味で変えることもある。しかし「検察側の罪人」では原作の設定が完全に正反対になっている。映画としては非常に面白く出来ていて、俳優も熱演していたけれど、ここまで原作の意図をひっくり返していいのだろうかと思ったりする。
それは「蜘蛛の巣を払う女」にも言えて、ハリウッド映画だから当然のこととして原作の持つリベラル精神はほとんどない。原作ではアメリカの監視社会化も問われているけど、映画ではそもそもの設定が「核兵器の発射システム」なるものに変更されている。そんなものが流出しては大変だし、特にロシア系の犯罪組織に渡ったりしてはまずい。アメリカも含め現代文明を考察している原作から、映画は単なるロシア系テロ組織との戦いに変えている。そういう風に変わるわけである。
それにしても狙われるフランス・バルデル教授の息子アウグストがしゃべっているのには驚いた。原作では重い自閉症で会話ができないことが非常に重要な意味を持っていた。この脚本を書いたのはスティーヴン・ナイトで、多くの映画で脚本を書いている。小説家、映画監督もしているらしいが、「イースタン・プロミス」「マダム・マロニーと魔法のスパイス」「マリアンヌ」などを書いた人である。監督は「死霊のはらわた」「ドント・プリーズ」のフェデ・アルバレス。
ところで今回のリスベット・サランデル役はクレア・フォイ(1984~という女優がやっている。テレビドラマの出演が多かったようで、僕は初めて。しかし、リスベットは小柄という設定なので、その意味では大柄すぎる感じがする。双子の妹カミラはシルヴィア・フークスがやってる。「鑑定士と顔のない依頼人」で謎の依頼人クレアをやってた人で、本当はもっと美人だと思うけど、この映画ではなんだか変顔をしてる。カミラが超絶美人で、リスベットは容貌に恵まれないというのが原作なんだけど、映画ではそこまで違いがない感じ。

リスベットは非社会的で、付き合いづらいタイプである。この映画では一人で「スーパーヒーロー」をやってるけど、それも原作とは違う。もっと不可思議なタイプだと思うが、ハリウッド映画では判りやすいタイプになってしまう。その意味ではスウェーデンで映画化されたとき、最初にリスベットを演じたノオミ・ラパス(1979~)が一番ムードが近いように思う。「ドラゴン・タトゥーの女」一本で、ノオミ・ラパスは世界で活躍する大スターになった。そのぐらいのインパクトがあった。写真を見ると、普通に美人だけど、映画では発達障害っぽい演技に迫力があった。

ハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」ではルーニー・マーラ(1985~)がリスベットを演じた。これで彼女はアカデミー賞にノミネートされ、その後は「キャロル」でカンヌ映画祭女優賞を得るなど大活躍している。演技的には良かったと思うけど、リスベットのイメージとしては上品すぎたかなと思う。まあだんだんリスベットがスーパー化しているのは原作も同じだ。でも超人とは違う「変人」さがリスベットの魅力である。どうも今回のクレア・フォイも「変人」性が薄いと思うが、そうじゃないとハリウッドで受けないということだろう。
