見てからだと遅くなるので、フィリピンのキドラック・タヒミック監督の紹介。東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムでキドラック・タヒミック監督(1942~)の特集上映が始まった。(2月22日まで。)今ではフィリピンには、ラブ・ディアス、ブリランテ・メンドーサなどの世界的巨匠がいるが、僕が初めて見たフィリピン映画は、タヒミックの「悪夢の香り」だった。
(キドラック・タヒミック)
1982年に国際交流基金(当時)が最初の映画事業として、南アジアの映画をまとめて紹介したことがある。以後、アジアやアフリカ、イスラム圏の映画を続々と紹介してくれてありがたかった。最初はタイ映画「田舎の先生」やインドのアラヴィンダン「魔法使いのおじいさん」など印象深い映画が含まれていた。その中に一本だけ、非常に独特な個人映画としてタヒミックの「悪夢の香り」が選ばれていた。アメリカでの配給権をフランシス・フォード・コッポラが獲得したという映画である。
最近ジョナス・メカスの訃報が伝えられた。映画会社ではなく、個人で映画を撮り続けたアメリカの映像作家である。映画製作はお金がかかるので、本格的な映画は会社が製作したものが圧倒的に多い。今はデジタルカメラになり、多くの人が個人で映画を撮ることもできる。日本でも「カメラを止めるな!」が300万で作られたと話題になったが、それでも300万はかかるのでそう安くはない。そんな映画をテーマ的にも妥協せず、個人で映画を取り続けた人が世界には何人かいる。アジアで代表的な人が、このフィリピンのキドラック・タヒミック監督なのである。
「悪夢の香り」(1977)は独特なポップな感性で、宇宙飛行士に憧れるフィリピン青年を描いていた。自分を主人公にしたパーソナル・フィルムであり、エッセイ的な映画と言える。以後、時々タヒミックはどうしているんだろうと思ったけれど、その間「制作期間35年」という「現実とファンタジーの境界を超えた」映画を撮り続けていた。それが2015年のベルリン映画祭でカリガリ賞を受賞した「500年の航海」というマゼランの映画である。まさにマゼランの航海から500年、侵略された側のフィリピンから世界史を描き出すのが「500年の航海」だ。
(「500年の航海」)
この間に作られた多くの映画も上映される。3時間近くに渡り子どもたちの成長を追う「虹のアルバム」、フィリピンの武器だったというヨーヨーを描く「月でヨーヨー」、竹を通してフィリピンと日本を描く「竹寺モナムール」、ふんどしの考察「フィリピンふんどし 日本の夏」など、劇映画ではなく「個人的観察」をエッセイ的に作り続けたタヒミックの面目を示すような映画ばかりだ。映画ファンというより東南アジアに関心がある人向けなのかもしれない。一応紹介しておく次第。
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1982年に国際交流基金(当時)が最初の映画事業として、南アジアの映画をまとめて紹介したことがある。以後、アジアやアフリカ、イスラム圏の映画を続々と紹介してくれてありがたかった。最初はタイ映画「田舎の先生」やインドのアラヴィンダン「魔法使いのおじいさん」など印象深い映画が含まれていた。その中に一本だけ、非常に独特な個人映画としてタヒミックの「悪夢の香り」が選ばれていた。アメリカでの配給権をフランシス・フォード・コッポラが獲得したという映画である。
最近ジョナス・メカスの訃報が伝えられた。映画会社ではなく、個人で映画を撮り続けたアメリカの映像作家である。映画製作はお金がかかるので、本格的な映画は会社が製作したものが圧倒的に多い。今はデジタルカメラになり、多くの人が個人で映画を撮ることもできる。日本でも「カメラを止めるな!」が300万で作られたと話題になったが、それでも300万はかかるのでそう安くはない。そんな映画をテーマ的にも妥協せず、個人で映画を取り続けた人が世界には何人かいる。アジアで代表的な人が、このフィリピンのキドラック・タヒミック監督なのである。
「悪夢の香り」(1977)は独特なポップな感性で、宇宙飛行士に憧れるフィリピン青年を描いていた。自分を主人公にしたパーソナル・フィルムであり、エッセイ的な映画と言える。以後、時々タヒミックはどうしているんだろうと思ったけれど、その間「制作期間35年」という「現実とファンタジーの境界を超えた」映画を撮り続けていた。それが2015年のベルリン映画祭でカリガリ賞を受賞した「500年の航海」というマゼランの映画である。まさにマゼランの航海から500年、侵略された側のフィリピンから世界史を描き出すのが「500年の航海」だ。
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この間に作られた多くの映画も上映される。3時間近くに渡り子どもたちの成長を追う「虹のアルバム」、フィリピンの武器だったというヨーヨーを描く「月でヨーヨー」、竹を通してフィリピンと日本を描く「竹寺モナムール」、ふんどしの考察「フィリピンふんどし 日本の夏」など、劇映画ではなく「個人的観察」をエッセイ的に作り続けたタヒミックの面目を示すような映画ばかりだ。映画ファンというより東南アジアに関心がある人向けなのかもしれない。一応紹介しておく次第。