尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画「リンドグレーン」、凛として生きる

2020年01月03日 21時10分22秒 |  〃  (新作外国映画)
 岩波ホールで上映されている「リンドグレーン」は、スウェーデンの世界的な児童文学作家、アストリッド・リンドグレーン(1907~2002)の若き日を描く伝記映画である。こういう映画は事実通りなので、書けることが制限されるので感想に困ってしまう。映画で描かれる若き日の出来事は、ウィキペディアにも出ていないぐらいだから、案外知らない人も多いと思う。僕は前にリンドグレーンの伝記の書評を読んだことがあって、大体ストーリー展開を知っていたが簡単に紹介しておきたい。

 リンドグレーンと言えば、有名な作品が幾つも思い浮かぶ。「長くつしたのピッピ」「やかまし村の子どもたち」「名探偵カッレくん」「ちいさなロッタちゃん」「山賊のむすめローニャ」…。映画やアニメになってるものも多いし、小さな時に読んだ人も多いだろう。世界中の多くの人が知ってる名前である。しかしリンドグレーンは単なる作家に留まらず、児童虐待や動物虐待を鋭く告発する活動を最晩年まで続けたことでも知られている。そんな活動の背景にあった人生はどんなものだったか。
 (リンドグレーン、若き日と壮年)
 原題は「若きアストリッド」で、「リンドグレーン」じゃない。それも当然で、リンドグレーンは夫の姓で、映画はリンドグレーンを名乗る前しか描かれない。まあ日本じゃ通じないだろうからやむを得ない。アストリッドは農村地帯の農家の娘で、皆がキリスト教会に通っている保守的な風土。スウェーデン東南部のスモーランドという地方で、小さな町のヴィンメルビューに「アストリッド・リンドグレーンズ・ワールド」がある。時代は1920年代、第一次世界大戦後で世界的なジャズブーム。

 そんな中に、農村ながらちょっとお転婆な少女がいる。読み書きが好きで、認められて地方新聞でアルバイトの助手をすることになる。そして仕事も覚え、率直で自由な人生が始まろうとしている。そこで始まった「恋」の行方は? そこから驚くほど時代に先駆けて生き抜いたひとりの女性像がくっきりと浮かび上がる。ストーリーとしては、リンドグレーンの実人生を知らなくても、あまりにも予想通りの進行に驚くかもしれない。こんなに凜として生きた女性が1920年代にいたのか。

 スウェーデンと言えば、いろいろと先進的なイメージがするけれど、実は保守的で家父長制的な社会でもあった。それは多くのミステリー小説や映画などに描かれている。しかし、同時にその保守的な世界観と戦った人々が多くいて、社会が変わっていった。アストリッド・リンドグレーンは「女性の自立」の先駆者だったことがよく判る。アストリッドは自らがピッピちゃんだったのだ。そんな主人公を演じたのは、新星アルバ・アウグスト。この人はデンマークの映画監督ビレ・アウグストの娘だという。生き生きして素晴らしい。監督は女性のペアニレ・フィシャー・クリステンセン
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