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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

亀有で新春落語を聴く

2019年01月03日 21時25分25秒 | 落語(講談・浪曲)
 2018年後半は演劇や落語などにほとんど行ってない。健診でいろいろと引っかかるようになっちゃって、二次健診みたいなのが多かった。特にピロリ菌除去治療をしたときには、抗生物質の副作用がけっこう大変だった。医者にいくたびに何千円かかかって観劇代が飛んでいく。それと別に、紀伊国屋ホールや上野鈴本などは椅子席が狭いから、もうかなりつらいのである。

 まあそんなことばかり言ってても何だから、新春は夫婦で落語と決めて、亀有リリオホールの新春寿寄席を取ってあった。亀有というのは、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の亀有。北千住から地下鉄で2駅だけど、JRの駅である。駅前のイトーヨーカドーの上がホール。何回か行ってるけど、落語で行くのは初めてだと思う。寄席の正月初席にも今まで何回か行ってる。でも沢山の芸人が入れ代わり立ち代わり出てきて、本格的に落語をする余裕がない。新春のあいさつと小話程度で終わったりするから何だかなという感じ。最近の正月は近くのホール落語だ。

 今年の上野鈴本初席のトリは1部が柳亭市馬、2部が古今亭菊之丞(きくのじょう)、3部が柳家三三(さんざ)なんだけど、新春寿寄席では菊之丞、三三が出て、さらにトリが柳家権太楼というお得な豪華出演陣。その前に春風亭昇也(昇太の弟子の二つ目)、柳亭左龍の「鹿政談」。そして菊之丞の「幾代餅」。菊之丞は今年の大河ドラマ「いだてん」の古今亭志ん生(ビートたけし)の技術指南をやってると言ってた。仲入りをはさんで、三三の「転宅」。トンマな泥棒が妾宅に忍び入るがだまされる話。演じ分けが絶妙で僕は一番面白かった。

 トリの権太楼は今一番面白い落語家の一人だけど、今日も絶妙の大熱演。権太楼はマクラも面白いが、今日もつい聞き入ってしまった。噺は「笠碁」(かさご)で町内の碁仇どうしの争いごとで爆笑させる。近年寄席で聞くと、大体「代書屋」だった。「笠碁」も聴いてるけど久しぶり。権太楼は絶対に寄席で聴いておく噺家だと思う。菊之丞、三三、権太楼三人とも、今日もその後に上野鈴本がある。正月は駆け回って忙しいんだろうと思う。まあ次は寄席に行きたいな。ホールで聴くのと違って、寄席には伝統文化に触れているムードがあるのも確かだから。
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ブラッドリー・クーパー監督「アリー/スター誕生」

2019年01月02日 21時04分27秒 |  〃  (新作外国映画)
 年末年始の所感をまとめるつもりが、どうもその気になれいまま、ミステリー読みに集中していた。今年の初映画は近所の映画館で夫婦で見た「アリー/スター誕生」。日本では「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットに隠れてしまった感じだが、アメリカでは賞レースでも有力視されている。僕の見るところ、年間ベストとまでは言えないけど、とてもよく出来た映画だった。特に主演のレディ・ガガ(1986~)が素晴らしくて必見。監督デビューのブラッドリー・クーパー(1975~)も大注目である。

 〝A Star Is Born”という映画は、今まで4回作られている。細かい話は後で書くけど、前の映画を知らなくても筋は定番だから事前に想定できる。実力はあるが売れていない歌手(女優)が、ふとしたきっかけで男性の大スターと知り合う。そこから思わぬ大成功への道が開けてゆき、二人の間には恋愛も始まるが、しかし成功には苦い代償も伴うのだった…。簡単に書いてしまえば、そういうことになる。それが「スター誕生」(あるいは「スタア誕生」)という物語である。

 ウィキペディアを見ると、この企画はもともとビヨンセ主演、クリント・イーストウッド監督で進められていたらしい。それも素晴らしい映画になったのではないかと思うが、相手役がなかなか決まらず、ビヨンセの都合も合わず、結局ブラッドリー・クーパーが製作、共同脚本、監督、主演(歌も)と全面的に大活躍することになった。主演女優はレディ・ガガに決まり、撮影がスタートする。しかし、この段階ではレディ・ガガの歌唱力しか確実なウリがない。

 だけど驚くべきことに、レディ・ガガの繊細な感情表現が素晴らしく、ゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされている。アカデミー賞ノミネートも有力だろう。ウェートレスが夜のバーで歌っている。そこで出会う大スター。自信のなさが高揚へと移りゆくさまを絶妙に演じて、女優開化である。一方、ブラッドリー・クーパーもゆれ動く心情をレディ・ガガに合わせて演じていて、確かな演出力を見せている。歌のシーンも自分でやっていて、現実の大スターとしか思えない存在感。クーパーは「アメリカン・スナイパー」などで3回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされているが、ロバート・レッドフォードみたいに監督賞でオスカーを取ってしまうかもしれない。

 最初の「スタア誕生」は1937年のアメリカ映画。この時はハリウッド女優の話で、主演はジャネット・ゲイナー。聞いてもすぐに思い出さないけど、無声映画の傑作「第七天国」「サンライズ」に主演していた人で、第一回アカデミー賞主演女優賞受賞者である。それをミュージカル風にしたのが、1954年の「スタア誕生」。ジョージ・キューカー監督、ジュディ・ガーランド主演。もちろん「オズの魔法使い」のドロシーだった女優だが、その後は波乱の人生を送った。「スタア誕生」で久しぶりに主演し大成功をおさめたが、オスカーを取れずに悲劇の人生を送る。

 女優の話を音楽業界に変えたのが3回目の「スター誕生」(1976年)で、バーブラ・ストライサンドが主演して、アカデミー賞歌曲賞を受賞した。相手役はクリス・クリストファーソンで、僕はこの映画は同時代に見ている。「スター誕生」というドラマは、ジュディ・ガーランドやバーブラ・ストライサンドなどがやることで作られてきたイメージがある。映画内で「鼻」でスター向きじゃないと言われているレディ・ガガが主演することで成功している。

 「レディ・ガガ」という芸名は、クイーンの「レディオ・ガ・ガ」から来ている。クイーンあるいはフレディ・マーキュリーの「親日家」ぶりは触れられているが、レディ・ガガも東日本大震災直後に来日してコンサートを行ったり日本への親近感を持っていることで知られる。日本では「アリー/スター誕生」が映画でも音楽でも出遅れているようだが、この映画ももっとヒットしていいと思う。映画の作り方は「ボヘミアン・ラプソディ」よりずっと現代風で、うまく作られている。
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