あてもなく、ただなんとなく絵本が見たくて、
大きな本屋さんでぶらぶらしているのは、楽しいひとときです。
色々手にしているうちに、だんだん買いたい気持ちがふくらんできて‥、
最後に候補に残ったのが、「しずくのぼうけん」と
この 犬のルーカス ほるぷ出版 版画家の山本容子さんの作品です。
その頃私の娘はまだ保育園に行っていたと思うので、子供のためなら
「しずくのぼうけん」を選んだほうがいい、というのはわかっていました。
けれど、欲しかったのは、手元に置いておきたかったのは、ルーカスの方でした。
「犬のルーカス」は、題名の通りの内容です。
ある夏の夕暮れ 山本さんが庭先で子犬を見つけるところから始まり、
いかにして家族の一員になっていったかが、淡々と語られています。
なので、声に出して読んでも、特に言葉のリズムがいい、とか
途中ハラハラするところがある、とかそんなのは一切なし。
子供に読んであげるのはどんなもんだろ? と思いながら、
それでも何度も読みました。それはなぜか、といえば‥ルーカスを飼い始め、
3人?暮らしになった山本さんの家と、娘が生まれて、3人家族になった
自分のところを重ねて読んでいたからでしょう、きっと。
わたしもパートナー氏も、仕事をしている。それで、
家族の一員であるルーカスにも、仕事をしてもらうこと
にした。 -中略ー
ルーカスは、仕事をおえて、庭からかえってくると、
いすにすわるようになった。
ところが、いすがふたつしかなかったのだ。そこで、
仕事のごぼうびとして、ルーカスにいすをプレゼント
することにした。
じぶんのいすにすわると、ルーカスは背中をピンと
のばして、わたしたちと目のたかさをあわせようとする。
まるでふたりの会話に、なかまいりするように。
私たち夫婦の会話に、精一杯「背伸び」して、無理やり参加してくる
娘の様子と、まるで同じです。山本さんの家の大きなテーブルを囲んで、
それぞれが絵を描いたり、文章を書いたりしているのと同じレベルに
ルーカスが居て、同じように椅子に座っている様は、なんかいいなあと
思いました。
3人が3人とも別々のことを、同じテーブルでできるような、
うちもそんな家族でありたいと、ここを読むたびに思います。
そして、最後のページに書かれているこの言葉。
ルーカスを飼っているのはわたしたちでは
なく、ルーカスが、わたしたちをそだての親に
えらんだのではないかとおもう。
とっても娘をいとおしく思うとき、自分が産んだ子にもかかわらず、
子のほうが、こんな私を、母として選んで、この家に来てくれたにちがいないと
しみじみしてしまいます。
普段なんでもない時、家族は「いてあたりまえ」のものだけれど、
実は、見えないところで、微妙な糸の引き合いや、縒りあいがあって
「今のところは家族という枠」におさまっているだけなのかもしれないと
思います。が、それは決して否定的な意味合いではなく、だからこそ出会えた、
家族でいられる「今」を大切にしようというポジティブな気持ちで。
本物のルーカスは、山本容子さんのHPで見ることができます。