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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

家族のはなし

2005-07-30 16:32:40 | 好きな絵本

 あてもなく、ただなんとなく絵本が見たくて、
大きな本屋さんでぶらぶらしているのは、楽しいひとときです。
色々手にしているうちに、だんだん買いたい気持ちがふくらんできて‥、
最後に候補に残ったのが、「しずくのぼうけん」と
この 犬のルーカス ほるぷ出版 版画家の山本容子さんの作品です。


 その頃私の娘はまだ保育園に行っていたと思うので、子供のためなら
「しずくのぼうけん」を選んだほうがいい、というのはわかっていました。
けれど、欲しかったのは、手元に置いておきたかったのは、ルーカスの方でした。

「犬のルーカス」は、題名の通りの内容です。

 ある夏の夕暮れ 
山本さんが庭先で子犬を見つけるところから始まり、
いかにして家族の一員になっていったかが、淡々と語られています。
なので、声に出して読んでも、特に言葉のリズムがいい、とか
途中ハラハラするところがある、とかそんなのは一切なし。
 子供に読んであげるのはどんなもんだろ? と思いながら、
それでも何度も読みました。それはなぜか、といえば‥ルーカスを飼い始め、
3人?暮らしになった山本さんの家と、娘が生まれて、3人家族になった
自分のところを重ねて読んでいたからでしょう、きっと。


  わたしもパートナー氏も、仕事をしている。それで、
 家族の一員であるルーカスにも、仕事をしてもらうこと
 にした。 -中略ー

  ルーカスは、仕事をおえて、庭からかえってくると、
 いすにすわるようになった。
  ところが、いすがふたつしかなかったのだ。そこで、
 仕事のごぼうびとして、ルーカスにいすをプレゼント
 することにした。
  じぶんのいすにすわると、ルーカスは背中をピンと
 のばして、わたしたちと目のたかさをあわせようとする。
 まるでふたりの会話に、なかまいりするように。

 私たち夫婦の会話に、精一杯「背伸び」して、無理やり参加してくる
娘の様子と、まるで同じです。山本さんの家の大きなテーブルを囲んで、
それぞれが絵を描いたり、文章を書いたりしているのと同じレベルに
ルーカスが居て、同じように椅子に座っている様は、なんかいいなあと
思いました。
 3人が3人とも別々のことを、同じテーブルでできるような、
うちもそんな家族でありたいと、ここを読むたびに思います。

 そして、最後のページに書かれているこの言葉。

  ルーカスを飼っているのはわたしたちでは
 なく、ルーカスが、わたしたちをそだての親に
 えらんだのではないかとおもう。

 とっても娘をいとおしく思うとき、自分が産んだ子にもかかわらず、
子のほうが、こんな私を、母として選んで、この家に来てくれたにちがいないと
しみじみしてしまいます。
 普段なんでもない時、家族は「いてあたりまえ」のものだけれど、
実は、見えないところで、微妙な糸の引き合いや、縒りあいがあって
「今のところは家族という枠」におさまっているだけなのかもしれないと
思います。が、それは決して否定的な意味合いではなく、だからこそ出会えた、
家族でいられる「今」を大切にしようというポジティブな気持ちで。


本物のルーカスは、山本容子さんのHPで見ることができます。

コメント (2)
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