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東海汽船のフラッグシップ「さるびあ丸」(2)~多様な船内設備

2012-07-07 | 船舶[日本国内]

先日「MAKIKYUのページ」で取り上げた東海汽船のフラッグシップ「さるびあ丸」ですが、今日はその続編として、船内の様子を取り上げたいと思います。

さるびあ丸はジェット船「セブンアイランド」とは異なり、時速30km台の速度で航行する貨客船ですので、足は決して速いとは言い難いもので、船舶が錯綜する浦賀水道での減速航行(船長50m以上の大型船が対象となり、全長が30mに満たないジェット船「セブンアイランド」はこの対象から免れています)も強いられるとなれば尚更です。
(それでももう1艘の大型客船「かめりあ丸」に比べると、エンジン出力の関係などで、若干足が速い様ですが…)

充当航路もそれなりの乗船時間となる事が多いですが、その代わり船体が大柄な事もあってか、船内空間は「セブンアイランド」とは比べ物にならない程広く、設備も充実しており、運賃が最も安い2等席を利用した場合でも、座席自体のグレードや空間の広さは、「セブンアイランド」とは比べ物にならない程です。

「さるびあ丸」などの東海汽船が運航する大型客船の2等席は、長距離航路では一般的なカーペット敷きの大部屋だけでなく、リクライニングシートの椅子席も設けられているのが大きな特徴です。

一応全席指定制ですので、乗船券購入時にどちらか任意の座席を選ぶ事になるのですが、どちらも運賃は同額で、MAKIKYUはカーペット敷きの方を選んだのですが、カーペット敷きの2等席はさるびあ丸客席の中では最下層のフロアに位置しており、エンジンに近い区画では結構な騒音と振動を感じます。


船の等級による料金格差は空間の広さや設備だけでなく、居住性の良い空間を充当しているか否かも関連している事を強く実感させられるものです。

指定された区画は余り居住性の良い所ではなかったものの、三八航路(東京~三宅島~御蔵島~八丈島)は、昼行となる東京へ向かう便の方が乗船率が悪いと言われている上に、閑散期で船自体の収容力もかなりのものですので、2等の他座席にも空席が多数あり、他の2等席を利用したり、デッキへ出て外の景色を堪能したりしたものでした。

そのため2等の椅子席も利用したのですが、こちらは鉄道車両の様な回転機構は備えておらず、入出港時以外の進行方向が一定している事も考えれば当然と言えますが、リクライニングの角度は結構あり、足置きも装備しているなど、JRグリーン車や3列席の夜間高速バス並みのグレードを誇っています。


1人づつ独立した座席になっていない事や、背もたれがフラットな形状になっている事などを見ると、東京発の航路は夜行運航となり、この座席で夜を越す事も多い割には…と感じてしまう面もあり、昼行利用時も窓際座席の窓が締切となっており、外の景色を楽しめないのもマイナス点です。
(2等カーペット敷き区画は、椅子席よりも下のフロアにありますので、当然ながらこの区画から外の景色を楽しむ事は出来ません)

この様に2等席利用となると、欠点が幾つか伺えてしまう「さるびあ丸」ですが、ジェット船「セブンアイランド」の様なモノクラスではなく、様々な利用客の予算やニーズに対応するために、多様な設備を備えているのは大きなウリで、2等寝台(東海汽船では特2等と呼称)の様子も伺えましたが、こちらは三八航路の東京行きが昼行となる事から、利用客の姿は余り見受けられないものでした。


ただカーテンで仕切る事ができ、横になれるプライベートな空間を確保出来るという事は、夜行での長時間航海ではかなり価値があるかと思いますので、MAKIKYUはまだ未踏の地ですが、八丈島へ足を運ぶ機会があるならば、是非さるびあ丸か、同等グレードを誇る東海汽船の大型客船の特2等席を利用出来れば…と感じたものでした。


また客席空間だけでなく、食堂(レストラン)や展望デッキが設置されているなど、付帯設備面での充実振りもジェット船「セブンアイランド」とは比べ物にならないウリで、今回の乗船で食堂などは利用しなかったものの、この手の船舶では価格上乗せを行っている事もある自動販売機も、飲料水に関しては市価同等の価格に設定されていた辺りは良心的と感じたものです。


展望デッキも、時化やうねりで大きく揺れる時はとても…と言う場所ですが、自動車を自走で船内に乗り込むフェリーでは、最後尾にこの様な空間を設けている事は余りないかと思いますので、フェリーではない貨客船だからこその空間とも言え、最後尾が丸みを帯びた外見と共に、「さるびあ丸」の大きな特徴と感じたものでした。

国際航路などに比べれば、設備的には物足りない面もありますが、設備的にはそこそこ充実しており、「さるびあ丸」は長時間の乗船を前提にした船ならでは…と感じたものです。

時間的に余裕があり、ゆっくりと船旅を楽しみたいという向きには、ジェット船よりも「さるびあ丸」などの大型客船の方がおススメで、ニーズに応じて両者を選択利用できると…と感じますが、伊豆七島への航路はどちらか一方しか利用できない事も多いのは難点です。


特に大型客船は乗船時間が長くなり、船に弱い方には少々厳しいかもしれませんので、船舶の構造上高速での航行が困難なのは致し方ないのかもしれませんが、東京湾の入口に近い久里浜港か、片航路(東京~大島~神津島)便が一部運航日で乗船可能となっている横浜港などに寄港させる事(写真は船内設置の現在位置を示すモニターで、この状態から東京(竹芝桟橋)到着までに、2時間以上を要しています)で、本土~島嶼部の移動時間短縮を図るか、三八航路を大島に寄港させ、ジェット船に乗り換える事が出来る様になれば…と感じたものでした。