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中国高速鉄道(CRH)の概要

2012-07-28 | 鉄道[中華人民共和国]

今月MAKIKYUが中国へ足を運ぶ最大の動機となった中国高鉄(CRH)乗車ですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中には、中国へ足を運んだ事がない方や、中国へ足を運んだ事はあってもCRHの状況は…という方も居られるかと思いますので、如何に現段階におけるCRHの概要や、MAKIKYUが乗車した際の印象などを記したいと思います。
(中国在住の方や、CRHを幾度も利用している方には当り前過ぎる事かもしれませんが、ご了承下さい)

また中国鉄路関係のリンクサイトには、更に詳細な案内などが出ていますので、興味のある方は合わせてご覧頂くと共に、比較的最近刊行された「中国鉄道大全」という書籍(「MAKIKYUのページ」リンク先サイト管理人のborgen氏&はいらーある氏の共著です)にも記されていますので、こちらをご覧頂くのも良いかと思います。


・車両面

日本の新幹線タイプ(東北新幹線E2系タイプ=CRH2)をはじめ、ドイツICE3タイプ(CRH3/CRH380B)など大きく分けて5タイプが存在し、北京南や上海虹橋などの大ターミナルでは、様々な車両が肩を並べるのは魅力的です。

新幹線とICEが同じホームで並ぶ事などは、各車両の本家・日本やドイツでは考えられない事で、日本の新幹線の様な完全に独立した高速鉄道ではないだけに、既存客車列車とCRH2が肩を並べるシーンも一見の価値があります。

CRH各種は概ね白に青帯の装いとなっており、某島国の高速鉄道を意識している様にも感じられるものの、どの種類の車両にも似合う装いで、CRH2の装いは本家E2系よりも見栄えがするのでは…と感じる程で、CRHのロゴも個人的には好印象を受けます。

車両の出来栄えとしては、CRH2とCRH3/CRH380Bが双璧をなす感があり、一度ICE3に乗車してみたかったMAKIKYUとしては、SIEMENSの車両を大量導入し、念願を叶えてくれた中国鉄路に「謝謝!」

独自開発を大いに謳っているCRH380Aも、新幹線とICEの美味しい所を寄せ集めた雰囲気があってか、如何にも中国的な印象を受ける前面スタイルとは裏腹に、乗車した印象はまあまあという感があります。

アルストームのペンドリーノタイプ(CRH5・同種車両はイタリアなどで使用)は余り期待していなかったものの、思ったより良い車両と言う印象があり、酷寒地や低床ホームに対応している点でも有用な車両です。

ボンバルディア(CRH1)は様々な面で他の車両に比べて…という印象があり、高速鉄道車両の実績と言う点でもまだまだの車両ですので、今後の改良に期待したい所で、各車種共に8両編成か16両編成、或いは同種車両の8両2編成を併結した16両で運行しています。

独自開発を大いに謳っている中国オリジナル車両・CRH380A以外の各国で活躍している各車種も、本国で製造された車両はごく僅かで、大半は部品輸入や技術移転による中国の国内製造となっています。


・設備面

開業から日が浅い路線ばかりで、外国の技術に依存する部分も大きいとはいえ、設備面は全体的に新しい事もあってか、高速列車専用線を走る列車に乗車すれば、新幹線と遜色ないレベルという印象があります。

高速列車専用線だけでなく、従来の客車列車や貨物列車が走る線路を運行する列車や、両者に跨って運行する列車も存在します。

また北京や上海、広州などの大都市では、既存ターミナル駅ではなく、CRH専用に新設・改装されたターミナル駅(北京南・上海虹橋・広州南など)を発着する列車が大半を占めており、これらの駅の規模の大きさも圧巻です。

路線長も既に1国の高速鉄道においては世界最長となっており、列車本数も1400本を越えるなど、短期間でここまでの高速鉄道網を造り上げたのは大したもので、北京~天津・上海~南京・広州~深セン間では、複線の高速列車専用線を2路線建設しているのも驚異的です。

ただ今後の更なる発展を見越した先行投資的意味合いも推測されるとはいえども、駅の規模が大き過ぎる上に、基本的に駅構内は従来通り一方通行で改札や出口の場所が限られていますので、乗車車両や利用駅によっては、乗下車の際に駅構内を歩く距離や移動時間だけでも馬鹿にならない有様で、移動だけでもかなり疲れます。

この点日本の新幹線は限られた設備をフルに活用し、多数の列車を捌いている事は大したものという感があり、駅構造も利用客本位に作られていると感じます。


・乗車券

全席指定席制となっており、一部列車では列車指定の無座(立席)券発売も行っているものの、自由席の設定はなく、列車番号が「G~次」「D~次」(「G~次」の方が格上ですが、運賃も割高に設定されています)、或いは「C~次」(「G~次」とほぼ同等:現在は北京南~天津方面のみ運行)となる列車がCRHです。
(その他の「T~次」(特快)、「K~次」(快速)、「~次」(列車番号の前にアルファベットなし:普快など)は、殆どが客車列車での運行となる一般列車です)

「G~次」と「D~次」の運賃格差は、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」と「こだま」の実勢価格(=「のぞみ」の回数券バラ売り価格と、「こだま」の「ぷらっとこだま」利用)以上に開く事もあり、その代わり「G~次」列車が多数走る区間における「D~次」列車では、長時間運行となる列車での大幅遅延リスクなどもあります。
(上海虹橋~南京南間を利用した場合、「G~次」の2等座では140元程度となりますが、「D~次」では100元で若干のお釣りが出ます)

また中国では日本や韓国とは異なり、改札近くで乗車券を購入できず、基本的には駅舎に隣接、或いは駅舎入口付近に設けられた乗車券売場で乗車券を購入してから駅構内に足を運ぶ事になります。
(街中にある乗車券発売所で購入する事も可能ですが、その場合は若干の手数料を要し、旅行会社に購入を依頼する場合、結構な金額の手数料がかかります)

そして乗車券を持って駅構内へ足を踏み入れると、金属探知機等による所持品チェックなどが行われ、列車毎に指定された改札から入場して乗車する事が殆ど、それも発車3分前位に検票(改札)締切となる仕組みは、一般列車と相変わらずで、JRやKORAIL(韓国鉄道)に乗り慣れた身としては、列車に乗るまでが随分面倒に感じます。

改札はCRH発着駅を中心に自動改札化が進み、薄緑色の乗車券は自動改札に対応していますが、ピンク色の乗車券は自動改札に対応しておらず、係員対応となりますので要注意です。

おまけに最近、ダフ屋による転売などを防ぐために乗車券が実名制(要身分証明書・外国人の場合はパスポートを提示し、氏名は印字されずにパスポート番号が乗車券に印字)となり、乗車券購入時に提示が必須となっている上に、検票の際にも本人確認で再度身分証拝見となる事もあります。

乗車券売り場の窓口も大勢の旅客が列を作り、購入まで結構な時間を要する事もしばしばで、基本的に中国語以外はまず通じません。
(北京駅や上海駅などの主要駅では、英語対応窓口が設けられているものの、日本語対応を期待する事は絶望的で、中国語会話が出来ない場合、乗車日や乗車区間・列車番号や乗車車両を記したメモを、係員に手渡すのが最も妥当な方法かと思います)

一部駅に設置された自動券売機も、ICカードになっている人民身分証が必須で、観光で訪れた非居住外国人が利用できないのは痛手です。
(この機械は乗車券購入だけでなく、空席照会にも活用でき、この機会で空席のある列車を見つけてから窓口へ足を運べば、長い行列に並んでようやく自分の番が訪れ、乗車列車を伝えたら「没有」と言われて追い返されるリスクが軽減できるメリットはあるのですが…)

CRHは一般列車に比べて運賃が割高(それでも2等座(普通車相当)であれば、日本のJR普通運賃より割安です)な上に、CRH運行区間では列車本数がそこそこ確保されている事が多く、乗車前日や当日でも空席のある列車が多数存在しますので、CRH運行開始前の中国鉄路の状況を知る身としては、中国の列車にしては随分乗車券が買い易い印象があります。
(長距離寝台列車などは、乗車券売場にある乗車券発売状況を示す電光表示で、発売開始当日でも寝台車は「無」のオンパレードになっている事が当り前の状況で、当日の列車などは硬座の無座すら「無」になっている事もあります)

CRHがなければ、今回の旅行自体が成立しなかったと感じる程で、中国鉄路も随分便利で快適になったと感じますが、それでも日本の新幹線の様に思い立ったら「すぐ買ってすぐ乗れる」状況ではありません。

最高速度こそCRHの方が上ですが、乗り易さ・正確さの面では、日本の新幹線には遠く及ばない印象があり、ハード面で幾ら最先端の技術や設備を導入しても、それだけでは便利な高速鉄道とは言えず、ソフト面での改善が今後の課題と感じます。


・座席

新幹線タイプ(CRH2)は、座席はおろかモケットまでE2系そのものを採用しており、2等座では座面スライド機能も装備しています。

他の車両では座面スライド機能こそないものの、CRH2の座席は評判が良好で、中国鉄路も気に入ったのか、1等座・2等座共に他車種でも一部を除き、ほぼ同レベルの回転式リクライニングシートを装備しています。

そのため日本の新幹線やJR在来線特急と遜色ないレベルと感じる車両が大半で、ほぼフランスTGVそのものの車両を走らせ、一般席(普通車相当)では狭い上に、方向転換不能な座席で不評を買っているKORAILのKTXと比べると、居住性の面ではCRHに軍配が上がります。

ただCRH2がE2系ベースである事や、輸送力確保が至上命題と言う事もあってか、CRH2やほぼ同等の座席を装備する他車種2等座のシートピッチは、東海道・山陽新幹線普通車よりはやや狭く感じます。

またMAKIKYUが広東省の広州~深センで乗車したボンバルディアタイプ(CRH1)は、硬座車より若干マシといった雰囲気の方向転換・リクライニング機能なし座席となっており、この車両の座席は他車両に比べて見劣りが否めません。
(見た限りでは、1等座でも他車種の2等座より見劣りする雰囲気でした)

各車両共に1等座(グリーン車相当)もあり、こちらは2+2列配置で2等座よりゆったりとしているものの、MAKIKYUが乗車した限りでは物凄く豪華な印象とは言い難く、新幹線N700系の山陽~九州新幹線直通用車両や、山陽新幹線の700系「レールスター」指定席車によりやや上等と感じる程度です。

とはいえ在来線区間を走る区間が長い列車も多く、「D~次」の列車番号が付与されているCRHの中では格下の列車(列車によっては、途中駅で「G~次」の列車に追い抜かれる事もあります)では、1等座と2等座の価格差が少ない列車・区間もあり、この場合は結構値頃感があります。


一部の列車には1等座の更に上を行く「商務座」も連結されており、MAKIKYUは乗車していないものの、こちらは東北新幹線E5系の「グランクラス」並みのシェルタイプ1+2人席が並んでいます。

物価の割にはかなり高額な事(日本の新幹線普通車利用に匹敵するレベルです)もあって、見た限りではガラガラ、乗りたい列車の2等座や1等座が満席の時や、資金に余裕があって極上の旅をしたい方などは、こちらに乗車されるのも悪くないかと思います。


・車内設備と食事情

車内設備は概ね日本の新幹線レベルといった印象があり、MAKIKYUが乗車した限りでは、各列車でワゴンによる車内販売も行っていましたが、日本と同様に飲料水などは市価より割高な価格設定です。

在来客車と同様に、CRHでも各車種共に給湯設備を備えている辺りは中国的で、お茶を飲んだり、方便面(カップラーメン)を食べる為に利用する乗客の姿をよく見かけます。

またブッフェや食堂などの設備を備えている辺りは、日本の新幹線と比べると羨ましい限りで、8両編成のCRH2でも、半室・テーブル4机と
カウンターを設けた空間が設けられています。

車内では弁当の販売も行っているものの、長距離客車列車の様に車内で調理した弁当を販売するのではなく、予め調製した弁当を積み込むか、レンジで加熱するタイプの弁当となっています。

販売価格も概ね25~40元程度(写真の弁当は35元)と、客層を見越してか長距離客車列車より割高に設定されており、列車の乗り心地だけでなく、車内の物販価格まで日本に近い印象があるものの、それでも結構弁当を買い求めている旅客の姿を見かけました。

またMAKIKYUは乗車機会がなかったものの、CRH1とCRH2の一部は、両先頭車を除いて寝台車(軟臥・2段ベッド)となっている編成も存在しており、以前温州南駅付近で発生した追突事故の際に損傷し、事故廃車となったCRH2はこのタイプです。

MAKIKYUが乗車した各列車の乗車記や、車両毎の詳細に関しては、追って別記事で取り上げたいと思います。