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中国鉄路乗車記:D3027次(乗車日:2012年7月13日/CRH2A・新幹線E2系タイプ)

2012-07-13 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

北京~武漢間で、硬座以外の直通列車乗車券が手配できなかった事もあり、南京南站乗り継ぎで高速列車を駆使して移動する事になった今回の旅行、列車遅延を見越し、乗継駅の南京南站で約2時間程度の余裕を確保していました。

しかし北京南~南京南間で乗車したG117次はほぼ定時運行、この心配は杞憂に終わりましたが、同区間でも運賃がやや安いD~次(
動車組列車)の場合は、優先順位が低く結構遅れる事もあり、日本の様に接続列車遅れの接続待ちはありませんので、ギリギリの乗り継ぎは避けるに越した事はありません。

空いた時間にはじっくりと南京南站の様子を観察すると共に、開業当初は南京南站にも達していなかった南京地鉄1号線が、更に南郊の中国薬科大学(CPU)まで延伸されており、列車待ちの空き時間を活用し、末端で地上区間もあるこの延伸区間乗車に出向きます。


地鉄でCPUまで往復し、南京南站へ戻るとD3027次の発車時間が近づいており、既に改札中と言う状況でした。


南京南站は途中駅ながらもホームが20番線を越える程あり、日韓の高速鉄道駅でこれだけの大きさを誇る駅はないだけに、CRHの凄まじさを実感させられます。

そしてホームに降りると、列車は既にホームに待機しており、CRH2Aには走り始めたばかりの2007年以来久々の乗車、そして列車に乗り込むと程なく発車となります。

列車は南京南站を出発すると、暫くは北京南から乗車してきたG117次で通った経路を折り返す格好となりますが、北京~上海間高速鉄道の線路と合肥・武漢方面の線路が並行する形で、南京南站からずっと複々線となっています。

長大な長江を跨ぐ区間は複線、その後分岐と言う形でない辺りは、随分設備的に贅沢で、将来の発展を見越して大々的な設備を造り上げていると感じます。

ちなみにD3027次は8両編成、車両は武漢鉄路局所属車両で、CRH2の中でも最も初期に導入され、日本の新幹線に最も近い仕様のCRH2Aで、D~次(動車組列車)はG~次(高速動車)とは異なり、1等座(グリーン車相当)と2等座(普通車相当)の価格差が小さい事もあり、瀋陽~北京間で乗車したD12次(CRH5)と同様に、少々奮発して1等座を利用したものでした。

南京南~漢口間は高速列車専用線ではなく、在来線区を高速運転するために、最高速度は200km/hに押さえられており、一般の客車列車や貨物列車と同じ線路を、フル規格新幹線車両で駆け抜けるのは、日本の新幹線に乗り慣れている身としては、新鮮に感じます。

在来線でも標準軌(軌道幅1435mm)で200km運転できるのは、改軌してもミニ新幹線用の小柄な在来線規格車両で、最高速度も在来線区間では130km/h程度の島国と比べると、羨ましい限りです。

在来線区間を走る事もあって、500km程度の南京南~漢口間を、途中駅の停車時間を含めて約4時間と、高速動車に比べると、随分遅い道程になりますが、その分車両の乗り心地を堪能するには絶好のチャンスです。

1等座と2等座の価格差は40元程度、日本の指定席料金(普通車)程度の金額にしかなりませんので、現地物価を考えると決して安い出費ではないものの、この程度の追加でE2系グリーン席を試せるのは絶好の機会とも言えます。


特にCRH2Aではせいぜいシートカバーに「和諧号」ロゴが印刷されている程度で、座席自体はおろか、1・2等座共にモケットまで全く同じ柄を使っており、2等座(写真)では座面スライド機能も装備しています。

ほぼ同グレードの座席を用いており、車内の構造などが大きく異なるCRHシリーズ他車両と比べ、一層「グリーン車」に乗車しているという雰囲気が堪能できます。

MAKIKYUは日本では運賃・料金が高い事もあって、E2系は普通車しか乗車した事がなく、E2系グリーン車の座席には大陸で初乗車という事になりましたが、乗車券購入時に6号車で指定されていたのは、乗車券を手にした時から少々気になっていたものでした。

というのも、E2系8両編成では7号車1両がグリーン車となっており、CRH2も確か同様の編成だったはず…と思っていたからで、実際にCRH2Aも過半数の編成は半室の食堂車が設置されている事を除くと、本家E2系と同様の編成になっています。

しかしCRH2は後に寝台車など様々な派生形が登場しているだけでなく、初期型のCRH2Aでも編成構成が異なる編成が混在しており、MAKIKYUがD3027次で乗車したCRH2Aは、6・7号車の2両が1等座になっていました。

しかしながら外見上は、7号車1両が1等座となっている編成と大差なく、6号車の窓割は大窓の真ん中に、ブラインド用レールが挟まる普通車タイプとなっており、この窓割に合わせて座席を設置しているために、前後の座席間隔は2等座(普通車)と同じ、定員も7号車より20名近く多いハズレ車両になっています。

そのため1等座で6号車の乗車券が発券されると、7号車に比べて見劣りが否めず、少々損した気分になりますが、それでも任意の車両・座席を選べるシステムはなく、料金的にも同一と言うのは如何にも中国的な話で、それどころか6号車は内装の壁面まで2等座と同じと言う有様でした。

 
それでも中国にしては短い8両と言う編成で、合肥辺りまでは列車自体が混雑しており、無座(立席)客も多数と言う有様では、1等座で座れるのはかなり上等な話で、新幹線グリーン車に乗車しているというよりは、山陽・九州新幹線直通N700系などの普通車指定席車両(横4列席)に乗車している様な気分でも、料金差やE2系の座席を堪能できるというメリットなどを考えれば、一度試乗する位なら…といった所です。

南京南から1時間程走ると、安徽省の省都・合肥に到着し、ここで結構な数の乗客が降りますので、合肥から乗り込む乗客も居るものの、車内は幾分空いてきます。


その後は列車はその後更に六安・金寨・麻城北に停車し、漢口へ向かいますが、赤土やレンガ造りの建物が散見される平野や、なだらかな丘陵地帯が延々と続く大陸の車窓は、日本とは異なる遠い異国に来た事を感じさせられます。


途中停車駅の麻城北は、複線の通過線+両側線に相対式ホームの新幹線途中駅スタイルとも言える駅で、ここではCRH2充当のD~次(動車組)列車同士の退避が行われ、D3027次列車は後続列車の通過待ちとなるために、暫くの間停車します。

列車内は一応全て禁煙となっており、喫煙人口の多い中国だけあって、この停車時間に車内からホームへ出て、喫煙する乗客の姿も多数見られる状況です。

MAKIKYUも乗車記念を兼ね、写真の撮影に出向きますが、相対式ホームの反対側ホームへ行こうとしたら、係員の制止指示が出てアウト!というのは如何にも中国的で、日韓であればこの程度の事は…と感じます。

麻城北を出発すると、現地時間でも既に19時頃(日本時間20時)だけあって、そろそろ外は暗くなり、車窓を楽しむのは…という状況に
なります。


丁度腹が減った事もあり、日本の新幹線では姿を消してしまった餐車(食堂車)へ出向き、カウンターで発売している車内販売の弁当を購入して夕食とします。

本格的な調理設備を備えていない事もあり、客車列車の食堂車の様に、車内で調製した弁当ではなく、長期保存可能(パッケージによると、常温遮光保存 保質期 90天)な弁当をレンジ加熱して提供するスタイルで、購入した弁当は35元、他にインスタントのカップスープ(5元)と合わせて40元でした。

この弁当を販売している係員は、日本語こそ全く使えないものの、簡単な英語(中国ではそれすら通じない事もザラです)が使える事もあり、弁当の注文などで漢字の筆談と共に簡単な英単語を並べ、意志の疎通をしていました。

MAKIKYUはまともに中国語を勉強した事もない有様で、単に漢字を並べているだけですので、一応それでもある程度意味は理解しながらも「Your Chinese is poor.」と言われてしまう始末で、この列車に日本人が乗車する事は?と尋ねると、「殆どない」との事でした。

中国の大陸本土を走る高速鉄道はおろか、わざわざ離島の高鉄に乗りに行く日本人もしばしば…という状況ですので、上海発着の比較的乗り易い列車にしては少々意外な気もしますが、乗っていても見た目では現地人と識別がつきにくく、食堂車を利用する頻度が余り高くない事も影響しているのかも…と感じたものです。
(一応この列車の始発となっている上海は、日本との間を直結するフェリーも発着する街で、東海道新幹線で活躍する新幹線車両をベースとした高鉄車両を走らせている離島などに比べれば、日本人にとっては遥かに足を運び易く、メジャーな都市と言う印象があり、高鉄に関しても同様と言う気がするのですが…)


肝心の弁当は、パッケージに「方便 美味 安全」などと書かれており、上海市内で調製したものですが、内容は白米や牛肉の煮込みなどのおかずとなっています。


衛生面での安全性は、街中で売っている弁当などよりずっと上と言う印象を受けたもので、ネット上でもこの弁当の評価に関しての情報が流れていますが、肝心の味は個人的にはまあまあといった印象を受けたものでした。

ただ中国の街中では、1回の食事で35~40元を支出するとなれば、結構良いモノが食べれる気がしますし、物凄く高級な弁当と言う印象ではない気がします。

そのため弁当の価格は「列車の乗り心地と同様に日本並み」と言っても過言ではなく、CRHに乗車する客層を見込んで強気の商売をしている印象がありますが、それでも結構この弁当を買い求める乗客の姿が見受けられたものでした。


この弁当を食べ終えて少しすると、暗闇の中に街明かりがボチボチと見え始め、まもなく終点の漢口站到着となりますが、一般の客車列車
も発着するドーム上屋根のホームに、新幹線型車両が発着する様は、システムを含めて日本スタイルそのままの在来路線とは独立した高速鉄道ではなく、新幹線型車両を独自の方法で活用する中国鉄路流運行スタイルを象徴している光景の様に思えたものです。

D3027次をはじめ、上海虹橋~南京南~合肥~漢口間などを運行するD~次(動車組)列車は多数運行しており、大半がCRH2Aでの運行となっていますので、初めての中国旅行で是非「新幹線車両」に乗りたいと考える方にもおススメです。

また数日後には上海から日帰りで南京へ出向き、その帰りにも武漢~上海虹橋間を運行するD~次列車を利用したものでした。

列車本数が頻発している上海~南京間(両都市共に発着駅が複数あります)でも、G~次列車(高速動車)に比べると停車駅が多く、最高速度が低い事もあってか、運賃はG~次列車に比べてかなり割安に設定されています。

安い事もあってか無座(立席)客が多く見られ、車内環境は若干…といった状況でしたが、設備的にはG~次列車と遜色なく、運賃格差も新幹線「のぞみ」と「こだま」の実勢価格(前者がバラ売り回数券やEX-IC割引・後者がぷらっとこだま利用など)を上回る程です。

そのためこの列車は上海~武漢間を移動するだけでなく、上海~南京間を少し安く高速鉄道で移動したい場合や、北京~武漢間を南京南乗り継ぎで移動する際などにも活用でき、色々な使い方が出来る有用な列車と感じたものです。

(その後12月末には北京~武漢間で高速鉄道が開業し、早くもこんな乗り方をする必要性が薄れているのは、著しい発展と共に次々と新線が開業する中国らしい話です)


中国鉄路乗車記:G117次(乗車日:2012年7月13日/CRH380A)

2012-07-13 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は列車乗車日を記事投稿日扱いとして、後日公開したものです)

MAKIKYUは7月に久々に中国を訪問した際には、出来れば北京到着後に列車で武漢へ抜け、その後武漢~広州間高速鉄道に乗車して華南へ向かい、その後華南から列車で上海周辺へ…という大まかな計画を立てており、ダメなら北京から上海まで、本数が多く、乗車券も買い易い高速列車で直接…と考えていました。

この計画だと北京~武漢と、華南~上海間の火車票(列車乗車券)手配が問題となるのですが、北京到着日に華南~上海間は乗車券手配に成功し、後は武漢への火車票をどうするのか…という状況でした。

北京~武漢間は北京西站から漢口站や武昌站へ向かう夜行列車(寝台+座席や全車寝台)が何本か運行しており、他に武漢以遠へ向かう列車も多数存在するのですが、各列車の寝台は数日先まで「没有」の嵐が吹き荒れる状況でした。

発売当日で全列車完売と言う程ではないにしても、乗りたいと思った時に乗れない程、この区間では需要に対して供給が追いついていないのが現状で、それどころか在来線を走る昼行CRH(D~次の動車組)ですら、数日先の列車で空席がようやくという有様でした。

こんな状況であれば、一般の中国人民なら諦めて硬座で10~12時間程度我慢して…という所で、多数の火車票購入希望者がひしめく乗車券売り場では少しでも安く目的地へ行きたいがために、1000km以上の距離を移動する際にも、最初から硬座の火車票を求める人民も多数見受けられる程で、当日の無座票などを買い求める人民の姿を見ると、MAKIKYUはとても…と感じてしまいます。

日本人でも硬座乗車こそが中国鉄道旅行の醍醐味と感じていたり、運賃の安さに魅力を感じて、他列車・車両に空席があっても、長距離の列車移動で敢えて硬座・無座を選んで乗車する人物も存在しますが、長時間の硬座乗車は車両の居住性や車内環境など、特快空調車でも日本の青春18きっぷによる普通列車乗り継ぎなどとは比べ物にならない程劣り、非常に疲れます。
(MAKIKYUが帰国の際に乗船したフェリー内では、昆明~上海間を硬座で移動したという方や、成都~ウルムチ間を硬座で移動したという方(共に日本人女性の一人旅)も居られ、どちらも全然平気と言ってましたので、相当な猛者と感じたものですが、中国鉄路に関する書籍を出版される様な事情通の方を除き、日本人一般には硬座での長時間乗車はおススメできません)

日韓の快適な鉄道旅行に慣れきったMAKIKYUにとって、空を飛ぶ(=航空機に搭乗する)位ならまだ無座でも…とは感じるものの、出来れば北京~武漢間を硬座で移動するのは避けたいと感じ、他に妥当な方法はないのだろうか…と感じたものでした。

そこで鉄道旅行のバイブルとも言える時刻表とご相談になるのですが、上海(上海虹橋)~武漢(主に漢口站発着)の動車組列車(D~次)はそこそこの本数が運転されており、乗車券も比較的買い易そうな気がしましたので、北京南駅の乗車券売り場でこの列車の空席状況を尋ねると、2日前の段階で空席ありとの事でしたので、北京南~上海虹橋間の高速動車(G~次)と、上海虹橋~漢口間の動車組列車(D~次)を、途中の南京(南京南站)で乗り継ぎ、武漢へ移動する事にしたものでした。
(北京南~南京南間の高速動車組乗車券購入は、列車が頻発している事もあって楽勝、特に運賃が割高な上級席ともなれば、余程の事がない限り当日購入でも大丈夫かと思います)

南京を経由して武漢へ向かうとなると、直接京広線を南下して武漢へ向かうよりは、距離にして300km程遠回りとなり、まして運賃面でも割高な高速動車などを利用するとなると、かなり割高(新空調硬臥の直通列車利用と比較し、高速動車+動車組2等座乗車でも2.5倍程)になりますので、普通の人民が移動手段として鉄道を利用するのであれば、まず考えられない経路になります。

とはいえCRH視察を最大の目的として訪中したMAKIKYUにとっては絶好の方法で、現地物価を考えると高過ぎるものの、日本の物価に比べれば激安な運賃設定(1500km強を移動しても、日本円に換算した金額は4桁で収まります)もあり、北京~武漢間で硬座や航空機利用は避けたいけれども、寝台が満席で買えない…という時には、鉄路迷(レールファン)以外の日本人旅行者一般にもおススメの方法かと思います。

そして乗車当日、上海虹橋行き高速動車の発着する北京南駅へ向かうと、駅構内に入場する際に金属探知機による荷物のセキュリティチェックがあり、その後列車別に指定された改札から入場する際には、係員から実名制(外国人の場合は旅券番号)が記された乗車券と身分証(外国人の場合は旅券)を提示する様に求められ、本人確認を行ってから自動改札機に乗車券を投入(改札)と、日韓の高速列車に比べて随分面倒で不便な印象が否めません。


改札を経てホームに向かうと、既に乗車するG117次は入場しており、北京~上海間の高速列車は主に2形式(CRH380A/CRH380B)が用いられているのですが、MAKIKYUが乗車するG117次はCRH380Aの方でした。
(高速動車(G~次)ではなく、運賃は安いものの所要時間が長い動車組列車(D~次)を利用した場合などは、別形式に当たります)

CRH380Aは新幹線タイプのCRH(CRH2)の改良増備版とも言える車両で、CRH380B(ドイツICE3タイプ・CRH3の改良増備版)と混用されています(一応運用は決まっている様ですが、同一路線・区間を走る列車でも、乗車列車によって車型が異なります)ので、1本前の上海虹橋行きはCRH380Bが充当されており、天津へ足を運ぶ際にCRH3に乗車した事もありますので、CRH380Aの方に当たれば…と思っていたMAKIKYUとしては念願通りの巡り合わせです。

このCRH380Aは新幹線タイプの改良版だけあって、見た目は何となく日本の新幹線を連想するものの、CRH3と大差ない外観のCRH380Bとは異なり、塗装や前面デザインなどがCRH2とは大きく異なっているのが大きな特徴です。

前面デザインや塗装は、抜群の高性能とデザインを誇りながらも、座席数や乗降口位置などが他車両と異なる事で運用し難く、近年東海道~山陽新幹線直通のぞみ号という花形からは退役を余儀なくされ、現在は編成を短縮して山陽新幹線内で細々と活躍している車両を連想させるものがあります。


ただ車体断面は丸っこいこの車両特有のものではなく、CRH2(=E2系)に近い形状となっている事もあって、複数種の新幹線を継ぎ接ぎした様な奇妙な雰囲気となっており、個人的にはデザイン面で余り格好良い車両とは感じないのですが、これに中国ならではとも言える釣り目形のヘッドライトが配されています。

他国の技術や実績をふんだんに用いながらも、数本はベース車の開発国から直接輸入したCRH2やCRH3・CRH5などの動車組列車用車両や、ほぼドイツ風の雰囲気が漂うCRH380Bとは異なり、一応中国ならではの車両という事になっており、中国側も独自開発車両である事を盛んに謳っています。
(実際にホームに入線しているこの車両を目にすれば、何処かの島国で活躍している高速列車の2番煎じ的な印象が否めないのですが…)


車内に足を踏み入れると、客ドアやデッキ周辺などはCRH3やCRH5、韓国KTXなどの欧州系高速車両の雰囲気ではなく、これまた何処かの新幹線と錯覚してしまいそうな雰囲気が漂っています。


客室もMAKIKYUが乗車する2等座(普通車相当)は2人がけと3人がけの、背面テーブル付き回転式リクライニングシートがズラリと並び、CRH2の進化系車両ならではといった感がありますが、座席モケットはベース車そのもののCRH2とは異なり、座面スライド機能は廃され、モケットも新幹線N700系普通車の色彩を濃くした様な印象を受けます。

ただ天井や半透明ガラスを用いた荷棚の造作、ミラー仕上げで装置本体が目立たない様になっている車内LED文字案内装置などは、CRH3(ドイツICE3タイプ)に類似しており、様々な高速車両の美味しい所を寄せ集めた雰囲気があります。

しかし側面窓は2席で1つの大窓、そしてブラインドは各窓毎に上げるか下げるかしかできない構造は頂けないもので、後発だけに様々な車両の利点を寄せ集めるチャンスがあるにも関わらず、大窓の中央にブラインドレールがあり、各席毎にブランドを任意の位置で下ろせる構造とする事で、様々な旅客のニーズに細やかに対応できる構造を採用しなかった点は、少々に残念に感じます。

この2等座席は結構盛況で、見た限りでは8割以上の座席が埋まり、3人がけの中間席でも埋まっている箇所が多く見られるなど、北京~上海間の高速鉄道は結構な本数・両数で運行している事も考えると、高速鉄道開業前は需要に対して供給が大幅に不足していた事が露呈されているとも言えます。


その一方で上級席に関しては運賃の高さもあってか、比較的空席が目立つ状況で、日韓の物価よりは安いとは言っても、MAKIKYUが乗車券を購入する場合でも決して安くは…と感じてしまう程、まして高速動車(G~次)では1等座と2等座の価格差(日本の普通車とグリーン車の様な感覚です)が結構大きく、2等座でもJRの新幹線・特急普通車レベルの設備を有する事(客車列車の軟座でも、日本の普通列車レベルかそれ以下と感じる事が多いです)を踏まえると、2等座をもう少し増やした方が…と感じてしまいます。

この1等座は、座席が新幹線グリーン車レベルのモケット違いと言った印象があるのですが、CRH380Aではただでさえ乗車率の振るわない1等座に加え、更に上級の「商務座」と呼ばれる車両も連結されており、しかも中間の1両全室がこの商務座となっているのは、資本主義国の民営鉄道ならまず考えられないと言っても過言ではない気がします。


商務座は革張り・バックシェル付きの2+1列座席が並び、東北新幹線E5系「グランクラス」の中国版とも言うべき存在ですが、設備・運賃共に破格で、日韓に比べて大幅に物価が安い中国といえども、北京南~上海虹橋間をこの座席で乗り通せば、日本の新幹線普通車で首都圏~九州間を移動出来てしまう程、物価が高い日本に住む人間の感覚でも決して安い金額ではありません。

まして中国の物価を考えると、北京南~上海虹橋間で商務座の乗車券を片道分購入するだけでも、一般労働者の月給かそれ以上という有様で、日本のグランクラスの様に少し奮発して一度(それでも結構高いですが…)と言うレベルの金額ではないだけに、利用出来る客層は極めて限られています。
(当然ながらこの車両の乗車券購入は、余程の事がない限りは当日でも楽勝かと思います)

1等座でも空席が目立つ状況でしたので、こんな車両はほぼ空気輸送状態と言っても過言ではなく、今後の経済発展で上級席需要が高まる事を見越した先行投資的要素があるのかもしれませんが、需要に対して供給が追いついていない中国鉄路の現状を踏まえると、こんな座席はJR九州787系電車のDXグリーン車の如く、せいぜい先頭車両の一部区画程度で…と感じてしまいます。


そして列車が北京南站を出発すると、MAKIKYUが降車する南京南站までは約4時間の道程、そして終点の上海虹橋站までは所要約5時間となりますが、車両・軌道共に真新しいだけあって、最高速度は温州の事故以来若干引き下げられ、所要時間が増大しているとは言っても300km/hを少々超える程度を出しており、車内に設置されたLED表示でもその運行速度が表示されます。

日本の新幹線は、大動脈の東海道新幹線は設備が古く、今日の超高速運転を見越していない設備が災いし、最高速度270km/hに押さえられ、それも車体傾斜などを駆使して最高速度で走れる区間を…という状況を踏まえると、何とも羨ましい話です。

北京~南京間は1000kmを越えており、高速鉄道開業前は列車の手配、移動共に結構な労力を要していたものの、CRHで移動する両都市間は、日本の新幹線で東京~広島間を往復する程度の手軽さで、中国鉄路の旅も随分変わったものと実感させられます。


ただ中国ならではの発車時間直前のホーム別改札のお陰で、途中各駅も列車入線時刻が迫っていないと人影が見当たらず、駅のつくりがやたらと大きいのは、日本の新幹線とは大きな違いで、軌道設備も柵等はやや簡素な印象を受けたものでした。


また日本の新幹線と同レベルの最新鋭高速列車でありながらも、給湯設備は客車列車と同様にしっかりと設置されている辺りは中国らしく、MAKIKYUも車内で方便面(カップラーメン)を食すために利用したものでした。

列車内では車内販売は勿論、食堂車の連結もありますので、食事情は新幹線やKTXといった日韓の高速列車より優れており、ブッフェなどを連結するとまではいかないにしても、日本の新幹線も車内に給湯設備のサービス位はあっても…と感じます。

そしてCRH380Aの約4時間の列車旅は、異国の車窓が広がる非日常の世界と言う事もあってあっという間、多少の遅延は見込んでいたものの、ほぼ定刻で南京南站に到着、今度は約2時間後の漢口行き列車へ乗り継ぎ、目的地の武漢を目指します。

南京南~漢口間で乗車したD3027次に関しては、別記事で取り上げたいと思います。