(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)
北京~武漢間で、硬座以外の直通列車乗車券が手配できなかった事もあり、南京南站乗り継ぎで高速列車を駆使して移動する事になった今回の旅行、列車遅延を見越し、乗継駅の南京南站で約2時間程度の余裕を確保していました。
しかし北京南~南京南間で乗車したG117次はほぼ定時運行、この心配は杞憂に終わりましたが、同区間でも運賃がやや安いD~次(
動車組列車)の場合は、優先順位が低く結構遅れる事もあり、日本の様に接続列車遅れの接続待ちはありませんので、ギリギリの乗り継ぎは避けるに越した事はありません。
空いた時間にはじっくりと南京南站の様子を観察すると共に、開業当初は南京南站にも達していなかった南京地鉄1号線が、更に南郊の中国薬科大学(CPU)まで延伸されており、列車待ちの空き時間を活用し、末端で地上区間もあるこの延伸区間乗車に出向きます。
地鉄でCPUまで往復し、南京南站へ戻るとD3027次の発車時間が近づいており、既に改札中と言う状況でした。
南京南站は途中駅ながらもホームが20番線を越える程あり、日韓の高速鉄道駅でこれだけの大きさを誇る駅はないだけに、CRHの凄まじさを実感させられます。
そしてホームに降りると、列車は既にホームに待機しており、CRH2Aには走り始めたばかりの2007年以来久々の乗車、そして列車に乗り込むと程なく発車となります。
列車は南京南站を出発すると、暫くは北京南から乗車してきたG117次で通った経路を折り返す格好となりますが、北京~上海間高速鉄道の線路と合肥・武漢方面の線路が並行する形で、南京南站からずっと複々線となっています。
長大な長江を跨ぐ区間は複線、その後分岐と言う形でない辺りは、随分設備的に贅沢で、将来の発展を見越して大々的な設備を造り上げていると感じます。
ちなみにD3027次は8両編成、車両は武漢鉄路局所属車両で、CRH2の中でも最も初期に導入され、日本の新幹線に最も近い仕様のCRH2Aで、D~次(動車組列車)はG~次(高速動車)とは異なり、1等座(グリーン車相当)と2等座(普通車相当)の価格差が小さい事もあり、瀋陽~北京間で乗車したD12次(CRH5)と同様に、少々奮発して1等座を利用したものでした。
南京南~漢口間は高速列車専用線ではなく、在来線区を高速運転するために、最高速度は200km/hに押さえられており、一般の客車列車や貨物列車と同じ線路を、フル規格新幹線車両で駆け抜けるのは、日本の新幹線に乗り慣れている身としては、新鮮に感じます。
在来線でも標準軌(軌道幅1435mm)で200km運転できるのは、改軌してもミニ新幹線用の小柄な在来線規格車両で、最高速度も在来線区間では130km/h程度の島国と比べると、羨ましい限りです。
在来線区間を走る事もあって、500km程度の南京南~漢口間を、途中駅の停車時間を含めて約4時間と、高速動車に比べると、随分遅い道程になりますが、その分車両の乗り心地を堪能するには絶好のチャンスです。
1等座と2等座の価格差は40元程度、日本の指定席料金(普通車)程度の金額にしかなりませんので、現地物価を考えると決して安い出費ではないものの、この程度の追加でE2系グリーン席を試せるのは絶好の機会とも言えます。
特にCRH2Aではせいぜいシートカバーに「和諧号」ロゴが印刷されている程度で、座席自体はおろか、1・2等座共にモケットまで全く同じ柄を使っており、2等座(写真)では座面スライド機能も装備しています。
ほぼ同グレードの座席を用いており、車内の構造などが大きく異なるCRHシリーズ他車両と比べ、一層「グリーン車」に乗車しているという雰囲気が堪能できます。
MAKIKYUは日本では運賃・料金が高い事もあって、E2系は普通車しか乗車した事がなく、E2系グリーン車の座席には大陸で初乗車という事になりましたが、乗車券購入時に6号車で指定されていたのは、乗車券を手にした時から少々気になっていたものでした。
というのも、E2系8両編成では7号車1両がグリーン車となっており、CRH2も確か同様の編成だったはず…と思っていたからで、実際にCRH2Aも過半数の編成は半室の食堂車が設置されている事を除くと、本家E2系と同様の編成になっています。
しかしCRH2は後に寝台車など様々な派生形が登場しているだけでなく、初期型のCRH2Aでも編成構成が異なる編成が混在しており、MAKIKYUがD3027次で乗車したCRH2Aは、6・7号車の2両が1等座になっていました。
しかしながら外見上は、7号車1両が1等座となっている編成と大差なく、6号車の窓割は大窓の真ん中に、ブラインド用レールが挟まる普通車タイプとなっており、この窓割に合わせて座席を設置しているために、前後の座席間隔は2等座(普通車)と同じ、定員も7号車より20名近く多いハズレ車両になっています。
そのため1等座で6号車の乗車券が発券されると、7号車に比べて見劣りが否めず、少々損した気分になりますが、それでも任意の車両・座席を選べるシステムはなく、料金的にも同一と言うのは如何にも中国的な話で、それどころか6号車は内装の壁面まで2等座と同じと言う有様でした。
それでも中国にしては短い8両と言う編成で、合肥辺りまでは列車自体が混雑しており、無座(立席)客も多数と言う有様では、1等座で座れるのはかなり上等な話で、新幹線グリーン車に乗車しているというよりは、山陽・九州新幹線直通N700系などの普通車指定席車両(横4列席)に乗車している様な気分でも、料金差やE2系の座席を堪能できるというメリットなどを考えれば、一度試乗する位なら…といった所です。
南京南から1時間程走ると、安徽省の省都・合肥に到着し、ここで結構な数の乗客が降りますので、合肥から乗り込む乗客も居るものの、車内は幾分空いてきます。
その後は列車はその後更に六安・金寨・麻城北に停車し、漢口へ向かいますが、赤土やレンガ造りの建物が散見される平野や、なだらかな丘陵地帯が延々と続く大陸の車窓は、日本とは異なる遠い異国に来た事を感じさせられます。
途中停車駅の麻城北は、複線の通過線+両側線に相対式ホームの新幹線途中駅スタイルとも言える駅で、ここではCRH2充当のD~次(動車組)列車同士の退避が行われ、D3027次列車は後続列車の通過待ちとなるために、暫くの間停車します。
列車内は一応全て禁煙となっており、喫煙人口の多い中国だけあって、この停車時間に車内からホームへ出て、喫煙する乗客の姿も多数見られる状況です。
MAKIKYUも乗車記念を兼ね、写真の撮影に出向きますが、相対式ホームの反対側ホームへ行こうとしたら、係員の制止指示が出てアウト!というのは如何にも中国的で、日韓であればこの程度の事は…と感じます。
麻城北を出発すると、現地時間でも既に19時頃(日本時間20時)だけあって、そろそろ外は暗くなり、車窓を楽しむのは…という状況に
なります。
丁度腹が減った事もあり、日本の新幹線では姿を消してしまった餐車(食堂車)へ出向き、カウンターで発売している車内販売の弁当を購入して夕食とします。
本格的な調理設備を備えていない事もあり、客車列車の食堂車の様に、車内で調製した弁当ではなく、長期保存可能(パッケージによると、常温遮光保存 保質期 90天)な弁当をレンジ加熱して提供するスタイルで、購入した弁当は35元、他にインスタントのカップスープ(5元)と合わせて40元でした。
この弁当を販売している係員は、日本語こそ全く使えないものの、簡単な英語(中国ではそれすら通じない事もザラです)が使える事もあり、弁当の注文などで漢字の筆談と共に簡単な英単語を並べ、意志の疎通をしていました。
MAKIKYUはまともに中国語を勉強した事もない有様で、単に漢字を並べているだけですので、一応それでもある程度意味は理解しながらも「Your Chinese is poor.」と言われてしまう始末で、この列車に日本人が乗車する事は?と尋ねると、「殆どない」との事でした。
中国の大陸本土を走る高速鉄道はおろか、わざわざ離島の高鉄に乗りに行く日本人もしばしば…という状況ですので、上海発着の比較的乗り易い列車にしては少々意外な気もしますが、乗っていても見た目では現地人と識別がつきにくく、食堂車を利用する頻度が余り高くない事も影響しているのかも…と感じたものです。
(一応この列車の始発となっている上海は、日本との間を直結するフェリーも発着する街で、東海道新幹線で活躍する新幹線車両をベースとした高鉄車両を走らせている離島などに比べれば、日本人にとっては遥かに足を運び易く、メジャーな都市と言う印象があり、高鉄に関しても同様と言う気がするのですが…)
肝心の弁当は、パッケージに「方便 美味 安全」などと書かれており、上海市内で調製したものですが、内容は白米や牛肉の煮込みなどのおかずとなっています。
衛生面での安全性は、街中で売っている弁当などよりずっと上と言う印象を受けたもので、ネット上でもこの弁当の評価に関しての情報が流れていますが、肝心の味は個人的にはまあまあといった印象を受けたものでした。
ただ中国の街中では、1回の食事で35~40元を支出するとなれば、結構良いモノが食べれる気がしますし、物凄く高級な弁当と言う印象ではない気がします。
そのため弁当の価格は「列車の乗り心地と同様に日本並み」と言っても過言ではなく、CRHに乗車する客層を見込んで強気の商売をしている印象がありますが、それでも結構この弁当を買い求める乗客の姿が見受けられたものでした。
この弁当を食べ終えて少しすると、暗闇の中に街明かりがボチボチと見え始め、まもなく終点の漢口站到着となりますが、一般の客車列車
も発着するドーム上屋根のホームに、新幹線型車両が発着する様は、システムを含めて日本スタイルそのままの在来路線とは独立した高速鉄道ではなく、新幹線型車両を独自の方法で活用する中国鉄路流運行スタイルを象徴している光景の様に思えたものです。
D3027次をはじめ、上海虹橋~南京南~合肥~漢口間などを運行するD~次(動車組)列車は多数運行しており、大半がCRH2Aでの運行となっていますので、初めての中国旅行で是非「新幹線車両」に乗りたいと考える方にもおススメです。
また数日後には上海から日帰りで南京へ出向き、その帰りにも武漢~上海虹橋間を運行するD~次列車を利用したものでした。
列車本数が頻発している上海~南京間(両都市共に発着駅が複数あります)でも、G~次列車(高速動車)に比べると停車駅が多く、最高速度が低い事もあってか、運賃はG~次列車に比べてかなり割安に設定されています。
安い事もあってか無座(立席)客が多く見られ、車内環境は若干…といった状況でしたが、設備的にはG~次列車と遜色なく、運賃格差も新幹線「のぞみ」と「こだま」の実勢価格(前者がバラ売り回数券やEX-IC割引・後者がぷらっとこだま利用など)を上回る程です。
そのためこの列車は上海~武漢間を移動するだけでなく、上海~南京間を少し安く高速鉄道で移動したい場合や、北京~武漢間を南京南乗り継ぎで移動する際などにも活用でき、色々な使い方が出来る有用な列車と感じたものです。
(その後12月末には北京~武漢間で高速鉄道が開業し、早くもこんな乗り方をする必要性が薄れているのは、著しい発展と共に次々と新線が開業する中国らしい話です)