東武野田線で先月営業運転を開始した最新鋭車両・60000系は、車内に足を踏み入れると、他路線から盥回しされた車両ばかりだった野田線で活躍する車両とは思えない雰囲気が漂っています。
メーカー標準仕様を取り入れた部分が多数あるものの、比較的シンプルな印象ながら安っぽさを感じる車両ではなく、側面化粧板も一応薄い柄入りとなっています。
先代50000系の初期導入車両などでは、長時間乗車となる際の評判が余り思わしくなかった座席も、メーカー標準仕様車ながらも随分改良されていると感じたものです。
車端部の化粧板だけ木目調となっており、車両間貫通路は開放感を感じる大きな1枚ガラスになっているなど、最近で首都圏で導入される低コスト型車両の中では、割合内装は凝った車両と言う印象があります。
60000系の目玉の一つとも言える車内照明のLED蛍光灯も、シンプルながらも形状制約の少ないLEDの特性を生かし、グローブ付き蛍光灯に匹敵する見付となっている点は、大いに評価できると感じます。
(韓国の都市鉄道などでも、板状LEDによる車内照明は一般的ですが、日本の首都圏では既存蛍光灯と同形状のモノなど、余り見付を考慮していないタイプが多数を占めていますので…)
また最新鋭車両だけあり、車内案内表示装置もLCDモニターを装備しており、LCDモニター採用では出遅れの感もある東武もようやく…といった所ですが、駅名表示は漢字(日本語)・英語・ひらがな(日本語)・韓国語中国語と多彩な表示が見られるのも大きな特徴です。
韓国語表示での次駅は、韓国でよく見られる「이본역」(この駅)ではなく、その次を示す場合に使われる表現の「다음은」(つぎは)となっており、如何にも日本の列車における韓国語表示と言う雰囲気を感じたものです。
まもなくを示す「잠시후」も、KORAIL列車の車内放送では良く聞く言葉で、列車内の案内表示でも散見しますがすが、都市鉄道(地下鉄・広域電鉄)では余り見かけない気がします。
中国語は漢字だけに、多少字形が異なる簡体字でも、意味は何となく想像が付くかと思いますが、「下一站」は中国では非常に良く見かけ、また聞く言葉で、他に「前方到站」という表現も結構良く用いられています。
通常は平仮名表示の「流山おおたかの森」駅名の漢字表記や、まもなくを示す「即将到達」表示、普通(各駅停車)を示す「普通慢車」の種別表示などは結構インパクトがあると感じます。
車内自動放送は従来車と同様で、日本語と英語の2ヶ国語のみ、LCDモニターの様な4ヶ国語ではないのは少々残念な気もしますが、野田線は観光路線や空港アクセス路線ではありませんので、ここまで対応すれば実質的にはほぼ問題なしと感じます。
(○田スカイアクセスなどと称している路線では、未だに外国人利用が多く見込まれる列車でも車掌放送(当然日本語のみ)となっている事も多く、この様な路線の場合は、多言語対応は必須ですが…)
この60000系は、野田線の路線条件も影響してか、少々出足が遅く感じられ、単線区間では駅入線前の大幅減速なども相変わらずですが、設備的にはほぼ全ての面で先代50000系列を凌いでいると言っても過言ではなく、行先表示が3色LEDになっているのが気になる程度ですので、数年前まで吊り掛け駆動車が走っていた路線も随分変わったと感じたものでした。
節電必須の世相も、新車導入の決断に到った一因かもしれませんが、乗車した感想は「余り期待していなかったものの、乗ってみたら最近の首都圏で活躍する低コスト型車両にしては上出来」と感じる反面、東武は余り評判の宜しくない50000系列ではなく、A-Train標準仕様車を導入する時点で最初から60000系を導入できなかったのか…とも感じたものでした。
野田線では今後も今年度中に複数本導入される一方、10030系の転配による8000系代替も行われますので、今後どれだけ数を増やすのか気になる所です。