7月~8月にかけてMAKIKYUはシンガポールまで足を運んでおり、この事は先日の記事でも記していますが、日本~中国の往復で関西発着の国際フェリーを利用した事もあり、帰国後は自宅へ帰還する前に京阪電車で運行開始したばかりのプレミアムカーにも試乗したものでした。
京阪の特急電車は近年枚方市・樟葉・中書島・丹波橋などの京阪間の途中にある主要駅にも停車する様になり、一昔前の大阪(京橋)~京都(七条)間ノンストップ運転だった頃とは列車性質もやや変化しています。
それでもライバルの阪急やJRと同様に料金不要列車の中ではかなり上等な設備を誇る車両(ラッシュ時間帯などの一部列車を除く)を走らせている伝統に関しては、停車駅が増大した今日でも続いており、特急用車両で運行している京阪特急に関しては、特別料金なしでも「座れればかなり快適」と感じます。
この事に関しては京阪間を走るライバル2社の速達列車にも共通していますが、流動の多い都市間だけあって列車が混雑する事も多く、特に途中駅乗車の場合などは…と感じる事も少なくない状況です。
そのため座席定員制/指定制などで確実に着席できる車両の導入を求める声も多かったものの、この様な需要に関して応えられるのは、今までは遠方へ向かう事を主眼に運行しているJR新幹線や在来線特急程度で、運行ダイヤや料金面などを考慮すると、京阪間での着席需要に応える列車とは言い難いものでした。
また京阪電車はライバル2社とは京阪間の途中経由地が異なっており、ライバル2社とは棲み分けしている部分も大きい路線ですが、この事もあって丹波橋・中書島などから大阪方面への着席需要、また大阪方面からも基幹駅の京橋から京都方面への着席需要などには対応できない状況となっており、この点でもプレミアムカー設定は意義のあるものと感じます。
このプレミアムカーは8月20日に運行開始、乗車の際は運賃の他にプレミアムカー券が別途必要となり、京阪間で乗車した場合は500円となりますが、関西他私鉄で運行している座席指定車両の座席指定券は同距離で500円程度かそれ以上ですので、価格的には妥当なレベルと感じたものです。
プレミアムカー連結列車は、特急車両の中でも赤と黄色の装いが特徴の2扉車8000系が対象となっており、同系の6号車を改造して運行しています。
装いも他車両とは異なるものに改められ、一目で識別できる様になっていますが、座席と窓割が一致しておらず、客扉を2→1扉に減らして客扉を埋めた部分だけ窓サイズが異なる辺りは、既存改造の宿命とも感じたものでした。
車内は2+1列配置のリクライニングシートが並び、シートピッチも一般車両より10㎝程度拡げられている辺りは、ただの座席指定車ではない「プレミアムカー」を名乗る車両ならではと感じ、一般車両でもそこそこのグレードを誇る中で差別化を図っています。
リクライニング角度やシートピッチなどはJR新幹線の普通車並で2+1列配置の座席ですので、JRグリーン車程のグレードではないものの、山陽~九州新幹線直通用車両の普通車指定席や南海ラピートのスーパーシートなどと同レベルのグレードとも言えます。
南海ラピートなどと同様に、座席下の足元空間を広く確保する事は余り意識しておらず、スペックの割に足元空間は余り広くないと感じてしまうのは難点と感じたものでした。
座席背後には背面テーブルも設置、車内案内なども記されていると共に、その下のネット部分にはプレミアムカー車内限定販売品の案内も見受けられたものでしたが、車内販売物品に関しては「プレミアムな価格だな」とも感じたものでした。
プレミアムカーでは各座席へのコンセントや車内WiFi、空気清浄機の設置なども行われ、この辺りは運行開始したばかりの車両ならではとも感じ、乗降口付近に設置されたスーツケースなどを格納できる荷物置き設置も、海外旅行などで荷物が多い旅客向けにはなかなか良い装備なのでは…と感じたものでした。
全車両特別料金ではなく、あくまでも従来車両以上のサービスを求める需要に対する新たな選択肢の提供と言う面でも評価でき、車両自体も座席下の足元空間が広くない事を除けば、総体的な印象は悪くないもので、様子見もあるにしろ利用実績が良好と報じられるのも頷ける気がしたものです。
ただ特急の中でもプレミアムカー連結は全列車ではなく、8000系(2扉車)での運行列車のみとなっており、プレミアムカー非連結列車が混在(昼間だと概ね3分の1程度)している事は難点で、利用実績が好調なら8000系と共に特急用として運用している3000系(3扉車)車両へのプレミアムカー設定も検討余地ありと感じたものでした。
またプレミアムカーは乗車した際の感触は悪くないものの、京阪はまだ有料列車運行を始めたばかりで様子見状態と言う事もあってか、プレミアムカー券の購入に関しては自動券売機で対応しておらず、案内所有人窓口で対応となっています。
ホームにもプレミアムカー券の発売機設置がなく、この事を告知する案内が大きく記されているのは大問題と感じたものでした。
今日ではスマートフォンでプレミアムカー券を購入する乗客も多く見込まれ、また設備投資を最小限に留めた事も影響しているのかもしれませんが、MAKIKYUが日頃利用している小田急線では各駅券売機で特急券発券が可能、またホームでも次列車の特急券発売を行っているのが当たり前となっており、後者に関しては関西でも有料特急運行では実績のある近鉄辺りはかなり整備されている事を踏まえると、プレミアムカー券発売体制に関しては今後改善の余地が大いにあると感じたものです。
機器への設備投資が難しい様ならば、せめて利用が多く見込まれる駅(京橋駅京都方面ホーム・中書島駅と丹波橋駅の大阪方面ホームなど)で係員による次列車のプレミアムカー券発売を行う事位は…とも感じたものでした。