先月MAKIKYUが宮城県の石巻や女川を訪問した際には、青春18きっぷを利用した事もあって、仙台から石巻へは仙石線を利用し、途中で代行バスを挟む行程で移動したものでした。
先月復旧したばかりの矢本~石巻間では、変電所や信号設備などが損傷した影響で気動車(キハ110形)が走り、スタフ使用の併合閉塞による特別ダイヤでの運行となっているなど、所定の運行形態とは大きく異なるものですが、仙台方のあおば通~高城町(Takagimachi)間は概ね震災前と同レベルの運行に戻っています。
そのため「石巻」の行き先が見られず、代わりに震災前なら滅多に見る機会のなかった「高城町」の行き先を良く見かける事を除けば、余り震災の影響を感じる事はないのですが、高城町行きの快速列車は震災前には運転が想定されていなかった事もあり、MAKIKYUが高城町行き快速列車に乗車した際には、普通列車で用いられる「高城町」の行先表示のみを出していたのが気になったものでした。
(現段階では仙石線全区間の復旧見込みが立たず、今後暫くは高城町行き快速列車の運転が常態化する事もあり、既に一部編成では「快速高城町」の字幕も用意されている様ですが…)
MAKIKYUが仙台方から仙石線電車に乗車し、矢本駅行き代行バスの発着する松島海岸駅(高城町駅は代行バス停留所が離れるため、矢本方面のバスへ乗り換える際は松島海岸駅で乗換となります)へ向かうためにあおば通駅に向かいホームに下りると、高城町行き電車こそ仙石線で大半を占める青と水色の帯を巻いた電車でしたが、発車間際だった一本前の東塩釜行き電車には、「マンガッタンライナー」と呼ばれる電車が充当されていました。
「マンガッタンライナー」は石巻に記念館(石ノ森漫画館:震災の影響で2011年8月現在休館中)がある事でも知られる石ノ森作品の数々をラッピングしたスペシャルトレインで、運行開始当初は1本だけの存在でしたが、その後別デザインでもう一本改装され、現在は2本が活躍しています。
今回遭遇したマンガッタンライナーは、後に改装された車両の方で、「マンガッタンライナーⅡ」とも呼ばれている車両の方でしたが、デザインは1両ずつ異なり、前面までキャラクターのデザインが施されています。
種車の205系は一世代前のステンレス製車体と言う事もあり、ビード部分の出っ張りもお構いなしにラッピングされている辺りは、少々苦しい所です。
とはいえ元々は山手線用に導入された車両の中間車をベースに、先頭車化やトイレ取り付けなど様々な改造を施し、ただでさえ205系の中では特徴的な車両の中でも、その最たるものといった印象がありますが、この編成を含む仙石線の一部車両では、車内も他の205系と大きく異なるのが大きな特徴となっています。
これもトイレを装備している石巻方1両だけの話で、他の車両は現在首都圏で活躍している車両と大差なしですが、石巻方1両は「2WAYシート」と呼ばれる座席が装備されているのが目を引きます。
この座席はクロス・ロング双方の座席配置に対応できるのが特徴で、近鉄などでも同種の座席(名称は異なりますが…)が導入されていますが、クロスシート状態では普通列車用にも関わらず、回転式座席となっているのが大きな特徴で、一昔前の特急車を連想させるものです。
(小田急や長野電鉄などでは、今日でもリクライニングなしの回転式座席を装備した有料特急が走っていますが…)
この手の座席は大抵、クロスかロングのどちらかのモードに固定して運用する事が多いのですが、仙石線では現在海側をクロス・山側をロング状態で固定しており、1車両内で両者が混在しているのが特徴的です。
ただこの手の座席はロングモードだと座席数が少なくなり、メリットも背もたれが大きいこと位ですので、随分持て余している印象があります。
出来る事なら山側には他の車両から捻出したロングシートを設置し、他車両の海側に移設した方が…とも思ってしまいますが、この座席を設置した車両はドアエンジン改造なども伴っていますので、なかなか上手くはいかない様です。
この様に設備的には異色ですが、車内は派手な外観とは裏腹に、余りキャラクター色を感じないのも残念な所で、その気になれば座席モケットをはじめ、化粧板にもカッティングシートを貼り付けるといった試みがあっても良いのでは…と感じたものでした。
また現在仙石線で不通区間が発生し、復旧見込みが立たないのは前述の通りですが、石巻駅などではこの電車を盛んに宣伝する告知類が今でも見受けられ、再びマンガッタンライナーが仙台市内から石巻まで直通運転を再開する日を待ち望みたいものです。