先日JR東日本HPにおいて、常磐線用に新型特急車両・E657系を導入・昨来年春から営業開始する旨が発表され、既にご存知の方も多いかと思います。
常磐線に新型特急車が登場する事は、以前からネット上などで噂されていましたので、MAKIKYUとしてはようやく公式発表が出てきた…という感があります。
ただこの新型車両は上野~いわき間のみでの運用となり、現在上野~いわき以遠の原ノ町・仙台方面へ直通する特急「スーパーひたち」号はいわきで系統分断となり、別名称の特急がいわき以北で運転される事が発表されたのは少々意外でした。
常磐線いわき以北で運行する特急には現在「フレッシュひたち」号で使われているE653系が運用される事が発表されていますが、同区間は全線が交流電化区間となります。
それならばいわき以北の特急に、今月のダイヤ改正で運用離脱した旧「つがる」号用の交流専用特急形車両・E751系を転用するのも悪くないのでは…と感じますが、この区間に敢えてE653系を導入するという事は、E751系を他用途に転用する公算が強まった事を意味します。
とはいえ現在485系で運用されている「白鳥」号(青函トンネル対応や増結などを考えると、可能性は極めて低いと思います)及び旧「かもしか」号改め新「つがる」号と、今後運行開始となる常磐線いわき以北の特急以外には、現在特急を運行していない路線・区間(過去に特急を運行していた区間も含む)で新たに特急を設定しない限り、E751系の優等列車としての用途は考え難い状況です。
そのため同系は新「つがる」号への転用可能性が極めて高くなったと言えますが、まだ新しい車両だけに今後の活躍に期待したいもので、新たな転用先に関する公式発表が待ち遠しいものです。
ところで本題のE657系ですが、編成は現在常磐線特急で活躍中の「スーパーひたち」号用651系や、「フレッシュひたち」号用E653系の様に7両と4両のいずれかの編成、或いはこれらを組み合わて11両などの編成を構成するのではなく、10両固定編成となる事は大きな特徴です。
現段階では10両固定編成以外の製造が発表されていない上に、上野発着の常磐線特急を全て同系で統一する事も発表していますので、今後の常磐線特急は途中駅での増解結を行わない事になります。
この編成構成も輸送量に大きな段差があり、設備面でも大きく劣るいわき以遠の単線区間(ごく一部に複線区間が存在しますが…)への上野からの特急直通を止め、系統分断とした大きな要因と言えます。
そしていわき駅では同一ホーム乗換により、いわきを跨ぐ常磐線特急利用客への便宜を図る事を案内しているとはいえ、JR側の都合で運行系統を分断した他線区(大分駅での「ソニック」「にちりん」や、松山駅での「しおかぜ」「宇和海」など)の様な、料金面での通算特例なども設けられるのか気になります。
今後いわき以北の特急で用いられるE653系は、現在の勝田電車区所属のままなのか、それとも仙台地区へ転属するのかも注目ですが、前者であれば出入庫で水戸or勝田~いわき間も走る事になり、この場合は茨城県内~仙台間の特急が朝夕などに例外的に残るのかも気になる所です。
設備的にもただグリーン車は4列席で現在の「スーパーひたち」号651系に比べると見劣りが否めないにも関わらず、現行より少ない30席しか設けられず、半室のみで普通車との合造になる事が確定的なのも大きな特徴といえます。
普通車は狭さが否めない現行「フレッシュひたち」号普通車よりシートピッチが拡大され、座席構造や車両設計などを考えると、現行2形式より快適性が向上しそうなのは朗報ですが、近年常磐線では上野発着の普通列車(中電)にグリーン車を連結し、近距離の着席需要がある程度シフト可能になったとはいえども、10両固定編成だけでは利用客の多い朝夕などに、現在最大14両編成で運転している特急の代替に充分なのか疑問です。
常磐線は常磐道を運行する高速バスとの競合もありますので、いくら普通車の居住性が向上するとはいえども、減車等で座席数が減り、混雑時間帯に指定席が確保できない・自由席は座れないといった理由で他交通機関への乗客転移が発生しないのかも気になる所で、状況次第ではライナー列車の復活なども望みたいものです。
また現在常磐線で使用している2形式の特急車両は、専ら「フレッシュひたち」号で運用されているE653系の一部が、いわき以北への転用で常磐線残存が確定的な他は、ライナー列車の設定でも行わない限り、極一部が波動用などでは残存する可能性もあるものの、常磐線での用途を失う事が確定的な状況です。
その内比較的新しく直流と50・60Hz双方の交流電化区間で運用が可能な上に、耐寒耐雪構造となっているE653系に関しては、古い特急形車両がゴロゴロしている日本海側へ転用される公算が高く、波動用にも有用な汎用性の高い車両です。
この様な車両ですので、現用途を失っても御用済みにはならないかと思いますが、特徴的な様々な装いは改められる可能性が高く、今後の姿がどの様に変異するのか注目です。
しかしながら主に「スーパーひたち」号で運用されている651系に関しては、一応JR化後に製造された車両とはいえども、交流60Hz区間への乗り入れには対応していないなど、E653系に比べると転用にも制約がある上に、JR東日本は比較的新しくまだまだ使える車両でも平然と退役に追い込み、最近まで「成田エクスプレス」号で使用していた253系電車などは、大半があっという間に屑鉄に化けている程です。
そのため651系の今後の動向も非常に気になる所ですが、首都圏でも今日の有料特急車では珍しく客窓が開閉可能で、設備的にも陳腐感(それでも後のリニューアルで登場時よりはマシですが…)が否めない旧国鉄からの継承車両が、MAKIKYUの近所でも私鉄直通の「特急」や別料金のライナー券が必要なライナー列車などで多数走っています。
この車両の騒がしい走行音は姿を見なくてもすぐに分かる有様で、普通列車で充当された際に乗車しても決して快適とは言いがたい状況ですので、未だにこの陳腐な車両を早急に新車代替できないのであれば、651系の転用で一部でも淘汰して欲しいというのが本音です。
他にもJR東日本では国鉄から継承した古参特急車を波動用車両として多数抱えていますので、この様な車両よりも早く姿を消す事だけはない事を願いたいものです。
写真は現在常磐線特急で運用されている651系とE653系、どちらも現在の活躍ぶりが見られるのはそう長くないですので、早めの乗車や記録に努めたいものです。
新形式E657系に関しては、JR東日本の公式HP内で情報が公開(PDF形式)されていますので、まだこの情報をご覧になっていない方はこちらをクリックして下さい。
(この記事のカテゴリー扱いに関して)「スーパーひたち」号などは首都圏~東北地方に跨って運行していますが、主に茨城県内を発着する旅客向けの列車であり、その運行拠点も同県内にある事から、北関東カテゴリーでの取り扱いとさせて頂きます。
651系に関しては次々と車両淘汰を進めるJR東日本の状況を踏まえると、そろそろ第一線から退いても不思議ではない気もします。
ただこちらの近所にはもっと陳腐な「客窓が開閉できる特急車」も活躍中ですので、こんな車両を走らせ続けながら651系を廃車に追い込むのだけは勘弁願いたいものです。
また編成が10両固定編成のみという発表も驚きで、普通列車グリーン車の連結やTX開業による茨城県南方面の旅客分散があるにしても、現行フレッシュひたち14両編成の代替がこれで足りるのか、状況次第では高速バスなどの他交通機関に旅客流出を招かないかも気になる所です。
(常磐道高速バスもJRバス関東が参入していますので、敢えてこちらへのシフトを狙っているのなら話は別ですが…)
コメント返答が遅れ申し訳ありません。
ところでこの記事で取り上げている常磐線特急の件ですが、古い485系がまだまだ残るJR東日本において、常磐線特急車の総取替えを行う事や、上野発着列車の10両という比較的長い固定編成への統一、いわきでの系統分断など、単なる新車導入に留まらない大胆な施策だけに、今後の動向が非常に気になるものです。
特に新型車導入により、複数編成を組み合わせての輸送力調整が出来なくなる事に関しては、JR側がどの様に考えているのか気になる所ですが、普通列車へのグリーン車連結をはじめ、関連会社JRバス関東による常磐道高速バスの強化で、一部需要のシフトを狙っているのかもしれません。
新型車への置き換え後、これによる不評や苦情が殺到しない事を願いたいもので、状況によっては計画を変更し、10両編成以外に増結用モノクラス4両編成を用意しても良いかもしれませんね。