還暦直前に心臓弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症弁形成術体験記)

還暦を目前にして滋賀医大の浅井徹先生の執刀で僧帽弁形成術を受けました。
私の体験が同病の方の参考になれば幸いです。

術後に感じていた不思議な感覚

2011年06月25日 | 各ステージでのまとめ
手術してから早いものでもう9ヶ月が過ぎました。
いやいや~ほんとに早いです。体がほぼ元に戻った今年になってからは疾風のごとく。
手術した時はブログタイトルの通り還暦直前だったのに、今や還暦も半分を過ぎようとしています。
還暦と言っても全然実感が湧かないのです。
これはまだ孫がいないからなんでしょうね。

ところで術後数日間感じていた、不思議な感覚があります。
私は本当に手術したんだろうか?
周りみんなで芝居してるんじゃないかってね。
(白い巨塔の見過ぎ?)
しかし、体はあちこち痛いし食事も満足に出来ないし、心雑音は消えたし、ということで客観的事実は手術したことを証明しているのですが、それでも何かしら違和感がぬぐえませんでした。
事実と感覚の違いってヤツ?
それが何に起因するものなのか?

それってやはり麻酔が違和感の原因なのかなって思ったものですから、麻酔についてお勉強…。

麻酔の役割には大きく
・患者に痛みを感じさせない
・患者の不意の反射などの動きを封じる
・患者を無意識下に置く
の3つがあります。
もっとも大切なのは痛みを感じさせないようにする鎮痛作用です。
痛みを完全に取ったとしても患者が意識のある状態に置かれていれば、手術というストレスに長時間さらされることになりますから、後々いろいろ精神的な問題が出てくるのではないかと思います。
患者を【完全なる】無意識下に置くことによって手術の記憶を完全に消し去り、精神の安定を保つことが出来るのではないか。
それなら違和感を感じたとしても、やむを得ないと言えるのかもしれません。

患者は手術室で眠ってからICUで目覚めるまで一切の記憶がありません。
自発呼吸さえ出来ないし、多分体温調節も。すなわち半死状態なわけですね。
それほどものすごく深~~い眠りについているわけですが、麻酔から目覚めたときの感覚は普通の睡眠から覚めた時のように、時間が経ったという感覚はあります。
それは少し意外でした。
手術中痛みはなくても意識があったとしたら、違和感を感じることはないかもしれませんが、いろんな音や声やら聞こえることでけっこうな恐怖体験になるかもしれないですね。

私は11年前の1999年9月に痔の手術を受けましたが、この時は局部麻酔でした。手術時間は50分ぐらいでしたが、腰から下だけの麻酔だったのでボンヤリですが意識はあり、声や器具の音は聞こえました。
あれが長時間だと多分参ってしまうでしょうねぇ。あとから夢も見るでしょうし。

ところで前も今回もですが、手術室は寒かった。手術室って・・・・寒いんですよ。
20℃もないくらいに感じました。冬は暖かく感じるのでしょうか?
何か理由があるはずだと、勝手に想像してみたのですが、
1.周りを取り囲む医療機械の故障率が低い
2.術者等手術スタッフは無影灯で照らされたりするので
  それくらいが快適な温度
  患者は薄い手術着だけなので寒く感じる
3.感染予防
が頭に浮かびました。

心エコーのbefore-after

2011年05月14日 | 各ステージでのまとめ
心臓弁膜症の検査手法に心臓超音波検査(心エコー)があります。重傷度の診断や手術の要否については、この検査結果がもっとも重視されると言っても過言ではありません。
そのため、手術直前と直後には必ず心エコーが実施され、患者自らそのデータを知ることが出来ます。
そしてもっとも信頼の置けるこの検査が体への侵襲が無く、ほとんど負担にならないというのは本当に素晴らしいことです。
経食道心エコーの場合はプローブを飲み込みますので、少し負担になりますが…

さて、この心エコーの結果が手術前と後でどのように変化したのでしょうか。
まずは手術の4日前のデータからご紹介しますね。
僧帽弁閉鎖不全(MR)  severe -- レベル4で重度の逆流
三尖弁閉鎖不全(TR)   trivial -- ごくわずかという意味
肺動脈弁閉鎖不全(PR) trivial
全く問題がないのは大動脈弁だけという有様(^^;)
ちなみに逆流度合いは軽い方から
trivial(レベル1)   ほんの少し
mild(レベル2)    少し
moderate(レベル3) やや多い
severe(レベル4)   だだ漏れ
で表します。

弁はこんな感じでしたが、逆流により左心房径が拡大しています。
正常値(19-40ミリ)に対して、44.2ミリ。
6月の検査では38ミリでしたので悪化が見られます。
また肺から左心房に入る血流がスムーズに流入しなくなります。逆流により左心房に血液が滞留するためです。その結果肺にも血液が滞留しうっ血状態になってきます。肺の血圧が高い状態となり(肺高血圧)、それは右心室収縮期血圧として測定されます。
数値は47mmHgでした。
心エコーで測定できるってすごいです。あるいは測定というよりは計算なんでしょうか?
右心室収縮期血圧の正常値は35mmHg以下(通常は20mmHgぐらい)だそうで、それだけ肺の血管にも負荷がかかっています。
だいぶいろいろ悪くなっていました。

さて、続いて手術3日後のデータです。
病名がいろいろ追加されて
無症候性脳梗塞、うっ血性心不全、僧帽弁閉鎖不全症
となりました。
心エコーの後にMRI検査で微少脳梗塞が発見されたためのようです。
僧帽弁閉鎖不全(MR)  trivial
三尖弁閉鎖不全(TR)   trivial
肺動脈弁閉鎖不全(PR) trivial
大動脈弁は問題なし

左心房径は35.2ミリで正常範囲
肺高血圧もほぼ解消し、右心室収縮期血圧は一応正常範囲の32mmHgに下がりました。

ところで心臓の動きを診断する駆出率(EF)については、術前は74%でしたが術後は69%に下がっています。正常値は50-80%です。
悪くなったの?
術前は左心室の収縮により血液が大動脈に出ていくのと、僧帽弁から逆流して左心房に出ていく、つまり行き先が2つあったのですが、手術により行き先が大動脈だけの1つになったため、駆出率の数値としては悪くなりました。しかし実際にはほとんど100%の血液が大動脈に行くため、体循環する血液量は激増しています。
逆流がレベル4程度まで悪化すると、左心室がぎゅっと収縮して血液を押し出しても、半分ぐらいは逆流して左心房に戻ってしまいます。つまり体に回る血液は半分なんですね。半分ということは実効駆出率は74%÷2ですから37%、このままではかなりの心不全状態です。そこで体循環血液量を確保するため心臓は拡大し、全体のマスが大きくなります。

それでも次第に追いつかなくなり、自覚症状が出てくるようになります。
私は自覚症状が出始めたところで入院、手術になりました。

血液検査結果の推移

2011年05月07日 | 各ステージでのまとめ
5月7日現在、退院して7ヶ月が経ちました。
退院後は4~6週間毎に近所の循環器科に通っています。受診時は必ず血液検査があり、そして前回受診時の検査結果報告書をもらっています。
その結果を見ると検査項目の測定結果が少しずつ良くなってきているのがわかります。

血液検査項目は40以上もあるのですが、退院した直後は
ALP、GTP、中性脂肪、BNPが基準値の上限を超過していました。なかでもBNPはNQスペクトルで161というはみ出し方でした。
半面、ヘモグロビン量、MCH、MCHCが下限値を切っています。
NQスペクトルとは基準値の中間値を100、上下限を110~90とし、一目で判読できるようパターン化したものです。

具体的な数値(退院直後の10月上旬)は
ALP       434(100-350)
GTP       108(80以下)
中性脂肪    165(35-149)
BNP       65.1(18.4以下)
ヘモグロビン量 11.7(13.2-17.6)
MCH       27.3(28-34.5)
MCHC      31.4(31.5-35.5)

これが最新データ(3月上旬)では
ALP       203(100-350)
GTP       32(80以下)
中性脂肪    100(35-149)
BNP       15.2(18.4以下)
ヘモグロビン量 13.0(13.2-17.6)
MCH       26.6(28-34.5)
MCHC      31.9(31.5-35.5)

となり、正常値に向かって収束して来つつありますが、赤血球関連(ヘモグロビン量、MCH、MCHC)の数値がまだです。
まあ、でも昔からヘモグロビン量や赤血球数は少ない方なのでこんなものかもしれません。
ところで3月のデータで食後120分の血糖値が64と、正常値(70-109)を切ってしまいました。
血糖値が範囲を外れたのは初めてです。入院中は毎日測定されていまして、値は90前後と快調でしたのに?

自宅療養のまとめ

2011年03月05日 | 各ステージでのまとめ
全身状態が落ち着き自宅で普段の生活ができる状態に回復したと判断された時に、退院が許可されます。
そして退院の後は、社会復帰できるよう自分が責任を持って体調管理、体力回復を目指します。

退院時の体調はこんな感じでした。
体温 37℃をようやく切るくらい
脈拍 安静にしていて75~80
歩くのはゆっくりゆっくり、足下もおぼつかない感じ
歩を進めるのに恐怖を感じた…って、私だけかなあ・・・・
横隔膜の痙攣が少し
声のかすれも少し

そして退院翌日から積極的にウォーキングに励みました。妻が大いに助けてくれました。
さすがに皆勤は出来なかったと思いますが、それでも1週間に1日休んだかどうか・・・・
この時期、9月下旬からの1ヶ月は残暑も収束し秋本番を思わせる良い季節となり、ウォーキングリハビリには最適となりました。図ったわけではないのですが、結果的にはとても良かったと思います。
家事も出来る範囲で少しずつ手伝いながら、体を慣らしていきました。
幸いなことに10月上旬に娘が帰ってきて、積極的に家事を手伝ってくれるようになったので、その後は妻と二人三脚。妻と2人暮らしの時に比べて5倍は賑やかに&騒がしくなりました。

やがて・・・・
体温は36℃台前半~半ばで落ち着きましたが、手術前よりは0.2~0.3℃ぐらい上がったような気がします。血液循環が改善されたためでしょう。
歩くときのバリア感は1ヶ月も経つとさすがに無くなりましたが、1ヶ月もかかったとも言える。
横隔膜の痙攣と声のかすれは最初の1週間で収束。

ふとんなどから起き上がるときは、体を横にねじって腕を入れて胸に負担をかけずに起き上がるという状態がまだ続いています。これは胸骨がくっつくまでかかりそうです。
寝返りもまだ満足に出来ません。
痛みを感じる間は無理しない方が良さそうです。

体重は入院前より増えてしまったかも。コントロールしないと。
脈拍は退院時と同じ状態、安静時75~80ぐらいで変わりありません。
遅くならないですねぇ。
入院前は60台半ば。
弁膜症になる前は50台後半 ← 少なすぎでした。
脈拍が早くなり、拍出量も増えてるわけですから血の巡りは劇的に良くなっています。
体中の細胞に酸素や栄養が十分に行き渡りますから、細胞が壊れたり傷ついたりする率が減少しているのではないでしょうか。

会社に行くようになると今までよりかなり早起きしなければなりませんが、なにせいろんな動作に時間がかかるので目覚ましのセットを早くする必要がありそうです。

読み返してみると大してまとめにはなっていませんが、アップします。

体調のbefore-after

2011年01月23日 | 各ステージでのまとめ
弁膜症手術の前後において、いろいろと体調の変化が確認できました。
これは改善されて当然だよなというものから、これはぬぁんと心臓から来ていたのかと首をかしげたくなる変化まで、様々な体調の変化がありました。
退院後まもなく感じたことから、術後4ヶ月に到る現在までの変化を以下にまとめてみます。
※息切れとか不整脈とか動悸、などのような元々大きな自覚症状があったわけではありませんので、どれも小さなことですよねーーと言われればその通りです(^^ゞ)

その1:倦怠感
before
エネルギーが無くなってやる気が失せ、家ではどこでも良いので寝転がりたくなりました。
仕事も定時で早々に切り上げるようになり、残業すると次の日やる気ゼロ・・・・
7月以降次第に悪くなり8月になると、週のうち調子の良いのは2日ほどになりました。
病名がはっきりし手術することにもなったので、精神的なものじゃないかと妻には言われました。
after
まだ多少疲れやすいですが、倦怠感はなくなりました。今は連日の残業もOKですが睡眠時間は6時間以上を確保しないと翌日眠いです。

その2:真冬に通勤カバンを持つ指が真っ白になる
before
12月~3月にかけて寒いとき、カバンを持つ手指が血行不良で真っ白になり、指先の感覚もなくなります。暖まってもすぐには戻りません。これは10年近く前から始まりました。
after
術後は4回ほど白くなりましたが(実験している面もあり)、少し注意を払えば大丈夫です。完全回復とは言えませんが、期待はしていたのでうれしいです。

その3:体がいつもだるい感じがする
before
夏は睡眠不足になりがちですが、秋になるとぐっすり眠れるようになり、朝起きたときには頭すっきりというのが通常のパターンでした。
それが2009年の秋ごろから朝起きてもすっきりせず、体がだるく感じるようになりました。
ところがしばらくすると体が慣れたのか、だるいのかだるくないのか、自分でもわからなくなりました(^^;)
after
起床は快調です♪ だるさも感じないし~~

その4:右肩の痛み
before
右肩の凝りなのか差し込むような感じの痛みによく襲われました。予防として肩を前後に回す、腕を振るというのを毎日繰り返していました。でも少し休むと元の木阿弥。
仕事では一日中パソコンを操作しています。マウスに細かい動きをさせるために、筋肉が緊張を強いられているのでそれが原因の肩こりと思いこんでいました。
after
術後一度もこの痛みは出ていませんし、触ってみても凝っている感じはありません。

その5:コンサートで寝る
before
年に数回コンサートや観劇に行くのですが、特にコンサートの時は途中寝てしまうことが増えてきました。演奏の善し悪しには関係なく、ほとんどのコンサートで寝てました。
after
術後はまだ一度しかコンサートに行っていないのですが、うーん、少しだけ寝たかな…
これに関してはサンプル数が不足しているので、結果が出るのはだいぶ先になります。

術後~退院までのまとめ

2011年01月04日 | 各ステージでのまとめ
術後はICUで1泊、個室で6泊、大部屋で3泊しました。
ICUには多分手術後昼過ぎに入室し、翌日午後2時まで滞在。
昼前には個室移動の許可が出て、午後2時に個室に移動。
個室で6泊し、ほぼ問題のないレベルまで快復したことを見届けて大部屋に移動。
大部屋移動後は、体の様子を見て退院許可が出る。

術後は侵襲や処置が原因の異変がいろいろ出ます。
私の場合は、発熱、気胸、横隔膜の痙攣、この3つでした。

これらのうちごく一般的なものは発熱です。発熱はほとんど100%の方に出ます。
発熱は度を超さなければ異変とも言えず、通過儀礼みたいなものでしょう。
私の場合では体温の最高は術後3日目に38.7℃を記録しました。
体温は術後徐々に上がり3日目にピークを記録し、退院した術後十日目でも36.7℃、平熱の36℃ちょうどぐらいに戻ったのは退院して1週間も経った頃でした。
術後の発熱は37℃を少し超えたぐらいでは自覚に乏しいものです。
体温の下がり方が遅いと細菌感染が考えられるので、抗生物質の点滴や血液検査が行われます。
私はバンコマイシンの点滴が2日半行われました。

手術説明書に書かれている重大な合併症にはかかりませんでしたが、右肺が気胸になりました。これは手術翌朝のレントゲンで発見され、すぐに胸腔ドレーンの留置が行われました。
幸いなことに1日で治りましたが、このくらいでは説明書には書かれないでしょうね。
気胸になってもベッドで安静にしている限り、気胸自体の痛みは特に感じません。もっとも胸の痛みのため、気胸による痛みがマスクされていた可能性はあるかも。
肺活量が足りない感じはしますが、それは胸が痛いためにしっかり呼吸ができないことと混同して終いがちです。

3つ目の横隔膜の痙攣は腹腔ドレーンを抜いたことが契機で始まりました。抜くとき余計な力を入れなければ良かったと思いますが、つい力んでしまったのが失敗の元。
抜いた翌日から徐々に始まり、気にならない程度まで治まったのが術後8日目。
けっこう苦しめられましたし、完全に収まったのは退院後です。
睡眠不足にもなりましたが、それでも体調の快復は一直線でした。
あまり食べられなくても、寝られなくても、リハビリをきちんとやっていれば快復していくものなんですね。

若いときは還暦というとすっかり老人だと思っていましたが、自分がその年になっても、とてもじゃないが老人じゃないです(笑)
まだまだ若い。心臓の手術をしても10日もたてば退院できます。

余談はさておき、術後のリハビリはサボらずにちゃんとやりましょう!!
家に早く帰れますしね。
眠剤も痛み止めも処方された以外には服用しませんでした。俺は男だーーと言って痛みに耐えたわけではありませんが、眠れないとき、痛いときは無理に頑張らずに服用した方が快復が早まり良いと思います。

手術まとめ

2011年01月01日 | 各ステージでのまとめ
明けましておめでとうございます。
「手術まとめ」…11月10日にアップした記事をこちらのカテゴリーに移動し、多少加筆と修正を加えました。

術前診断 MR(mitral regurgitation)--僧帽弁閉鎖不全症
手術術式 MVP(mitral valvuloplasty)--僧帽弁形成術
physio ring II 28mm

手術所要時間 3時間19分(9:12-12:31)
出血量 200ml
尿量 1250ml
輸血量:回収式 465ml

術者 3名
麻酔医 2名
臨床工学技士(ME) 1名
麻酔方法 全麻

体外循環時間 85分
大動脈遮断時間 58分
最低温度 32℃
自己血回収装置 Cellsaver

人工心肺を使うようになってからは体温は余り下げないで手術するようになりました。
人工心肺には血液の温度を調節する機能があり、それによって体温管理ができるそうです。
以前は体温を20℃台まで下げて体を「冬眠」させてから手術していたように思います。
しかし、「冬眠」から覚めた体には障害が出ることがあるようです。

手術前日の麻酔科の先生の説明では、手術予定時間は5時間となっていました。
手術室看護師さんの説明では4時間となっていて、浅井先生からは3時間と・・・・
全くバラバラで(笑)、麻酔科の先生の想定時間が最も長かったんですよね。
3時間と聞いてるんですが、と申し上げたところ、
手術時間ってよく延びるんですよ・・・・と。
実際は開けてびっくりと言うこともあるのでしょうね。
心房中隔欠損の修復もありましたし。

ところで、「physio ring II 28mm」は人工弁輪です。
メーカーはアメリカのEdwards lifesciences社。
今年の1月18日にphysio ringの改良型として発売されたものです。
これはコバルト・クロム・ニッケルの合金平板とポリエステル平板により構成されています。
私の僧帽弁に装着された弁輪はD型の形状をしていますが、弁輪が小さい場合はD型で大きい場合は、楕円形状になるそうです。

自己血回収装置 CellsaverとはアメリカはHAEMONETICS社の製品で、主に心臓血管外科領域の手術中に出血した血液を回収し、分離、洗浄後に濃厚洗浄赤血球液として患者の体内に戻す自己血回収装置です。
主には赤血球を回収する装置ですが、多血小板血漿と小血小板血漿の採取も可能とのことです(最新機種)。
これまた、へぇぇーーー、です。ますます輸血に頼らなくても良くなりますね。

これは一種の輸血ではあるのですが、自分の血というのがミソですね。
輸血が禁止されている宗教の信者の方もこの方法ですと、上手く管理すれば手術を受けられると思われます。
ただし術野が清潔でないと使えません。細菌感染していたりすると使用できないと思います。
手術台の周囲は人工心肺や人工呼吸器、Cellsaverなどの機械だらけだったんですね、きっと。なかなか壮観だったのではないでしょうか。
そう言うわけで、テレビドラマ「医龍3」は初めて熱心に見ました。

手術の直前には必ずといっていいほど剃毛や浣腸が行われていました。
看護師さんから、剃毛はやりませんと明確な答えをいただきました。エビデンス(根拠)も示され、そう変わりつつあります、と・・・・
その時はそれ以上聞きませんでしたが、剃毛によって皮膚に細かな傷がつき、その傷から細菌感染するリスクの方が大きいということのようです。
しかし、浣腸はあるだろうと思っていました。
ところが、それらしい様子は全く見えなかったんです。でも手術中にお漏らしして迷惑かけるといけないと思い、部屋を出るまでに何とか腸を空にすることができました。

また手術室に向かうストレッチャーに乗る前に鎮静剤の注射を打つのが以前は普通だったと思いますが、ストレッチャーも鎮静剤注射もありませんでした。なのでいたって普通の精神状態で手術室に入りました。
手術室入室は車イスでしたし、病院によっては歩いて入室というケースもあります。
もっとも手術室に入ってから多少緊張しましたが・・・・
このように手術に関する「常識」というものがここ数年で大きく変わりつつあるようです。

実は私にとって今回の心臓手術は手術としては2回目で、初めての手術は11年前の内痔核の手術(術式:内痔核根治術)でした。
この時は浣腸有り、鎮静剤注射有り、ストレッチャーによる入室でした。
しかし剃毛はこの時もありませんでした…?

今回の手術をわりとあっさり受け入れることができたのは、11年前に手術を一度経験したことも大きかったと思います。病気自体を受け入れることには全く抵抗はありませんでした。
しかしもっと若くて40歳代でこの病気を指摘されたとしたら、大いに悩んで悔やんで夜も眠れなかったに違いありません。
年食うのも悪くないなと。

術前まとめ

2010年12月30日 | 各ステージでのまとめ
心臓弁膜症で入院、手術をする場合、手術日のおよそ一週間前に入院します。そして前日までに種々の検査と手術の説明が行われます。
私が滋賀医大で受けた検査を以下に列挙します。

1.CT検査
  胸から腹部にかけて血管の状態を検査

2.歯科検診
  虫歯から菌が心臓に侵入すると弁が痛むことがあるので
  弁膜症手術の前には虫歯があれば治療する
  手術が決まった時点で虫歯があれば入院までに治療するようにと
  指導される病院もある
  滋賀医大は歯科口腔外科が併設されているので入院後に検診が
  行われた

3.血圧脈波検査
  腕と足首の血圧を同時測定し血圧の比を見ることで下肢動脈の
  閉塞あるいは狭窄また動脈硬化の進行度が測定できる
  脈波伝播速度を測ることで血管のしなやかさが評価できる
  動脈硬化が進行すると血管が硬くなるので脈が血管壁で
  吸収されないため脈の伝わる速度が速くなる

4.肺機能検査
  息を吸うときの肺活量と息を吐くときの肺活量を両方測定する
  肺いっぱいに溜めた息を一気に吐くときのスピードを測定する
  検査する理由は麻酔との関連のためと聞きましたがそれ以上は
  聞きませんでした・・・よくわからないまま

5.心臓カテーテル検査
  冠動脈に造影剤を注入し狭窄などの状態を検査する
  狭窄している箇所が見つかれば僧帽弁手術と同時に治す
  心室に造影剤を注入し逆流の程度を評価する
  心臓超音波検査の結果とは必ずしも一致しない
  カテーテルは手首の動脈から挿入する方法と大腿部付け根から
  挿入する方法があるが手首から挿入する方が検査後は楽
  侵襲、造影剤によるリスクがあるため同意書にサインを求められる

6.心臓超音波検査
  心臓の4つの弁の狭窄または閉鎖不全およびその程度がわかる
  心臓各部(心房や心室、大血管、弁等)の大きさや状態がわかる
  弁膜症においてはこれで診断が確定する
  検査方法は経胸壁と経食道があるが経胸壁の方がはるかに楽
  ただし経食道の方が心臓に近い分正確とも言われている
  同時に頸動脈超音波検査を実施することもある
  弁膜症においては必須の検査と言える

7.MRI検査
  脳や首、胸の血管の狭窄や出血を検査する
  狭窄があると手術時に血管壁から遊離した血栓が脳に行くと
  狭窄した箇所で脳梗塞を起こすおそれがある
  騒音が大きい(耳栓が必要)

以上は私の理解ですので、詳しくは病院HPや検査時に確認いただくと良いと思います。

手術の説明
説明書を元にしてわかりやすく説明が行われます。
病名
合併症があればその病名
手術を選択する理由
その他の治療法と手術をしなかった場合の結果
手術の具体的方法
手術により起こりうる合併症とその頻度・危険性および緊急時の処置について
当診療科における成績

このようなことが書かれていて説明が行われますが、医師の説明の仕方によっては患者側が余計に不安に駆られることもありそうです。
私の場合で合併症は
肺高血圧症(47mmHg)・・・・35mmHgを超えると肺高血圧です。
手術をしない場合の説明として
心不全の進行、致死性不整脈など
手術により起こりうる合併症はたくさんあって数えていたら十指で足りませんが、もっとも怖いのは術後肺炎だそうです。
ちなみに私は気胸になりましたが、気胸を術後合併症に挙げている病院もあるようです。

肺高血圧が亢進するといずれ呼吸困難になったり右心系にも障害が出てきます。
左心房の大きさは6月末の検査では限界内に収まっていましたが、術前検査では限界をかなり超えていました。
7~8月の2ヶ月間に加速度的に悪くなったようです。

入院時点では倦怠感以外にそれほど自覚症状は感じていなかったので、良いタイミングで手術していただいたと思います。