8月7日から答案の山を抱えて軽井沢に来た。この夏最初の軽井沢。
定年を前に、そろそろ“ほとけ”の教師になろうと思って、試験前にかなりピンポイントのヒントを与えたため、受講生430名のうち400名以上が受験した。
1日150通を目標に採点を続けているが、“ほとけ”の教師も結構きついものがある。
ぼくの学生時代、一般教養の「美術」だったか「美術史」をとったが、この科目の先生はいわゆる“ホトケ”の先生で、試験では、「レンブラントは“光の画家”といわれているが、レンブラントが真に描いたのは光によって際立たされた闇の世界である」と書けば、かならず「優」がもらえると先輩から聞いた。
授業には一回も出なかったが、試験は受けてその通り書いたら、本当に優(たしか85点だった)をもらえた。
学生時代にはずいぶんたくさんの試験を受けたが、書いた答案の内容を今でもはっきり覚えているのは、この科目の答案だけである。
先日、同僚にこの話をしたら、春休みにオランダ旅行をして、アムステルダムかどこかの美術館でレンブラントを実際に見てきたという英語の先生が、「よく覚えているわね!本当にレンブラントって闇の部分がすごいのよ!」と感嘆していた。
18か19歳の時に書いた答案を50年近く経った今でも覚えているのは、あの先生の教育力のすごさだろう。くだらないことを暗記して吐き出すような答案を書かれるより、この一文を心に銘記してほしかったのだろうか。
非常勤で来られていた三輪福松先生と仰る先生だった。
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さて、等案の採点もめどがついたので、8月10日、女房に誘われて、星野温泉の野鳥の森を歩いてきた。
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千ヶ滝中区(旧文化村)の西武百貨店跡地の駐車場に車を止めて、バス停横の道を下り、すぐの十字路を右折して、道なりに左方向に細い道を下って、星野温泉裏に出る。
子どもの頃に通いなれた道である。
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中学生のころ、祖父の下駄を履いてこの辺を散歩していたら鼻緒が切れてしまい、ケンケンで歩いていたら、道端の「小松」さんという表札の別荘から出てきたお嬢さん(当時のぼくにとっては「お姉さん」)が「サンダル貸してあげましょうか」と声をかけてくれた。
恥ずかしかったので、「大丈夫です」と答えてしまった。
ぼくはこの人に恋をした。近所だったけれど、その後二度と会うことはなかった。
きのう通った時には、もうこの表札はなかった。
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中西悟堂の胸像を右手に、湯川のせせらぎを左手に見ながら、キビタキ休憩所に向かう。450メートルだったかで到着。
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小休止のあと、アカゲラ休憩所に向かう。今度は530メートルだったか。そこそこの勾配があるが、木々に光がさえぎられていて、そこまでは暑くない。
ほとんど人とは出会うことはない。
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キビタキ休憩所を出て、振り向くと、木々の間から浅間山の夏姿がのぞいていた。
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アカゲラ休憩所からは、ほぼ下り坂。
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やがて、人の姿が多くなり、ケラ池の人混みと子どもの声が聞こえてくる。
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その後、ハル楡テラス(?)を歩いて、シャトルバスで千ヶ滝駐車場に戻る。
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(旧)千ヶ滝スケートセンターのぺんぺん草が生えたテニスコートを横切る。
むかし、このコートで天皇と石黒賢のお父さん(デ杯選手だった)がダブルスを組んで試合をしているのを見たこともあった。
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上の写真は、旧西武百貨店千ヶ滝店の庭を西南の道からみたところ。
(旧)西武百貨店跡地の駐車場に置いたクルマに戻り、千ヶ滝温泉で待っていた女房を拾って帰宅する。
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軽井沢スケートセンターで残っているのは、この千ヶ滝温泉だけになってしまった。
冬はスケートリンクになるボート池や、400メートルのパイピング・リンク、屋内のアイスホッケー・リンク、そしてゲームセンターや卓球場など、今はどうなっているのだろうか。
フェンスが建っていて、中を伺うこともできない。
あの、スケートリンクの冷気と氷のにおいが懐かしい。
2018/8/11 記