本の断捨離のつづき。
第2次大戦でナチス・ドイツに占領されたフランスの抵抗運動(レジスタンス)関係の本を数冊。
ぼくが大学に入学したのは、1969年4月。社共統一候補の美濃部亮吉が東京都知事に当選した年である。
社会党と共産党が協力すれば、社会の変革は可能である、そんな夢をぼくは抱いた。
ぼくは法学部の政治学科に入学したばかりだったが、卒論のテーマはフランスのレジスタンスにしようと考えた。
当然第2外国語はフランス語を選択した。
大学は4月下旬からバリ封されてしまったので、お茶の水のアテネ・フランセに通った。何を思ったのか、ラテン語まで習い始めた。
テキストは松本悦治校長の本だったが、講師は大村雄治先生という方だった。穏やかないい先生だったが、ラテン語は1学期であきらめた。
フランス語の方は、テキストのモージェが日常生活の場面ばかりなので、フランス政治史に直結する気がしなくて、意欲がわかなかった。
さらに、当たった教師も、日本に数十年暮らしているというのに、片言の日本語しかしゃべれず、しかも質問に返答できないでいる生徒に向かって「アタマ、カラッポ?」、「ミミ、ツンボ?」などと平然と言い放つ老女で、これまたほどなく通う意欲を失った。
そこで、フランス語はもっぱら独学で勉強し、日本語で書かれたレジスタンス関係の本を読むことにした。
フランス語のテキストは、前田陽一・丸山熊雄「新フランス語入門」(岩波書店、1957年、手元にあるのは196x年12刷[xは印刷が不鮮明で読めない])だった。
岩波の「新フランス語入門」は、ほぼ全ページにフランス映画のシーンや著名なフランス人(バルザックなど)の写真が入っている。
その中に、子どもの頃に見た映画「赤い風船」のスチールもあった(28頁。なお70頁にも「赤い風船」のスチールが入っている)。
小さな男の子が雨の中、風船を掲げて歩いていると、お爺さんが風船に傘をさしかけてやるシーンである。“Voici un homme et un enfant.” というキャプションがついている。
この本ではモノクロだが、本当の映画では、この風船は真っ赤だった記憶がある。カラーだったのか、パートカラーだったのか・・・。
この本は取っておくことにした。
ひょっとしたら、この本を最初からやり直しているうちに、この1冊でぼくの寿命は尽きるかもしれない。
さて、今回断捨離するのはレジスタンス関係本の方である。
アンリ・ミシェル、淡徳三郎訳「レジスタンスの歴史」(クセジュ文庫、1951年)
淡徳三郎 「抵抗--レジスタンス」(創芸社、1950年)
同 「続・抵抗--レジスタンス」(同)
渡辺 淳「神を信じていた者も、神を信じていなかった者も」(ナウカ社、1951年)
ポール・ニザン、野沢協訳 「トロイの木馬」(新日本出版社、1967年)
である。多くは大学の近所の古書店で買ったらしい(その店のシールが貼ってある)。
いま、ポール・ニザンの末尾に付いた野沢協によるニザンの紹介文を読みかえしてみると、学生時代のぼくは、「ぼくには彼のような覚悟はないな」と思って、1969年から70年にかけての政治の熱気から離れて行く契機の一つになったように思う。
そしてフランス語の力も原書を縦横に読むようにはならず、フランス政治の研究など到底無理と悟って、2年次進学の際に法律学科に転科した。
それでも、レジスタンス関係の本は捨てることもないまま50年が経った。
これらは捨てるに忍びないので、同僚の若いフランス政治研究者に貰ってもらうことにした。
本当は迷惑なのかもしれないけれど、自分自身でゴミに出す勇気はないので、「要らなかったら、捨てて下さい」と添え書きをした。
2019/7/27 記