山田風太郎も、若いころの一時期せっせと読んだ作家のひとりである。
「警視庁草紙(上・下)」(文芸春秋、1975年)
「幻燈辻馬車」(新潮社、1976年)
「地の果ての獄」(文芸春秋、1977年)
このほかにも山田の「明治」もの(伝奇もの?)を文庫本で1、2冊読んだような気がする。
山田の明治ものは何社からも文庫版が出ており、もし読みたくなったら、文庫本で読むことができそうなので、処分することにした。
その後、まったく読まなくなったが、ある時、山田風太郎「人間臨終図鑑」(徳間書店、1986年?)という本の広告を見つけ、人の臨終の「図鑑」とはなんだろうと思って、買ってみた。
この本は現在手元で見つからないのだが、歴史上の人物(有名人に限らない)を死亡年齢に従って、0歳から100何十歳まで並べて、死亡した状況と辞世の言葉を並べたものであった。
誰かが思いつきそうな企画ではあるが、確か0歳で死亡した人間から始まって、意外と若くして亡くなった人物の死亡について書かれていたのが印象に残っている。
本の装丁も、普通の小説の新刊などとは趣を異にしていた印象がある。黒を基調とした箱入りだったと思う。
ところで、徳間書店は最近耳にしないが、健在なのだろうか・・・。
そう言えば、「戦中派不戦日記」も文庫本で読んだ。思い出して本棚から取り出すと、講談社文庫で、昭和48年(1973年)4月15日初版とある。
ということは、「戦中派不戦日記」から山田の本に興味を持つようになったようだ。
「戦中派不戦日記」は昭和20年1月1日から同年12月31日までの彼の日記である。石川達三の戦争直後の言説への批判など、随所に傍線が引いてある。
でも、一番空恐ろしいのは、昭和48年当時の山田が「また30年ほどたったら、いまの日本人を浮薄で滑稽な別の人種のように思うことにはならないか」と反語的に問い、そして「人は変わらない。そして、おそらく人間のひき起すことも。」と結ばれる「あとがき」である。
幸い戦争は起こっていないが、山田の予言が実現しないことを願う。
2019/7/28 記