祖父の蔵書の整理作業のつづき。フランス・レジスタンス関連の本を2冊。
★ヴェルコール/河野与一・加藤周一訳『海の沈黙・星への歩み』(岩波現代叢書、1951年)
大学1年の時に卒論のテーマにしようと思ったのがフランスのレジスタンス運動だった。反ドイツ、反ナチでは団結していたレジスタンスが、大戦後のアルジェリア戦争までには分裂してしまう経緯をやろうと思った。しかし第2外国語で選択したフランス語がほとんど身につかなかったので政治学専攻は断念して、法律学科に転科した。
それでも祖父が亡くなった1984年頃は、まだその頃(1969~70年)の自分は何を考えていたのかを顧みるよすがを手元に残しておきたいと思ったのだろう。
★レイモン・アロン/曽村保信訳『自由の論理--トクヴィルとマルクス』(荒地出版社、1970年)
アロンは「反動的」思想家ということで読まず嫌いしていた。本書の解説を書いているのが村松剛だったことも関係していたかもしれない。しかし今回読んでみると、村松の解説はきわめて穏当な記述に終始していて、テレビなどで見かけた彼の言動からは想像もできない。
この本の裏表紙に、アロンを論じた杉山光信『モラリストの政治参加』(中公新書)の書評が2つ挟んであった(朝日、読売1987年4月20日付)。朝日の評者は西部邁だった。彼のような人間に担がれたのもアロンにとって不幸だった。「贔屓の引き倒し」で、「贔屓」筋への反感からぼくはアロンの真価を理解できなかった(理解しようともしなかった)のかもしれない。
アロンこそ、戦後になって、かつてのレジスタンスの盟友たちと決別して別の道を歩んだ人物の代表的存在(の1人)ではないか。レジスタンスを卒論のテーマにしようと思いつつ、戦後の一時期日本を風靡したレジスタンス礼賛論にも違和感を感じていたあの頃のぼくが読むべき本だったかも知れない。今さら手遅れだろうけど、この本はもうしばらく手元に置いておきたい。
ちなみに、このアロンの本の版元は荒地出版社(「あれち」と読むのか「こうち」と読むのか)だった! 荒地出版社といえば、「サリンジャー選集」の版元ではないか。サリンジャーもアロンも「反共」という点では共通していると言えるけれど。
2023年10月30日 記