川本三郎「荷風と東京ーー『断腸亭日乗』私註」(都市出版、1996年)をようやく読み終えた。
本文510ページ。途中で旅行をしたり、他の本を読んだりして中断があったが、ほぼ1か月かかった。
最初のうちは読み通せるか自信がなかったが、途中からは読み終えるのがもったいなくなって、1章1章を銘酒でも味わうようにちびちびと読んだ。
岩波文庫の「摘録・断腸亭日乗」と違って、荷風からの引用は旧字体、難しい漢字や熟語に振り仮名(ルビ)もないので、読めない漢字・熟語に出あうたびに CASIO<EX-word>の「漢字源」(学研)で、手書き入力して読み方や意味を調べながら読んだため、ちびちびと読むしかなかったのである。ぼくが調べた漢字はすべて「漢字源」に載っていた。漢和辞典、恐るべし。
「帙」(ちつ、和綴じ本を収める函)、「晡下」(ほか、お八つ時間以後の夕刻)、「初更」(しょこう、日没から日出までを5分した内の最初の5分の1の時間帯)のような、自分が言葉を知らないことを思い知らされるような簡単な言葉から、「躑蠋」(てきちょく、立ち止まること。これは本書で最後に調べた言葉になった)のような、知らなくてもやむを得ないと自らを慰めるような言葉まで、とにかく漢文の素養のある荷風と言葉の豊富な川本さんに悪戦苦闘した。
永井荷風「断腸亭日乗」をこれほどまで詳細に読み込み、関連文献を渉猟、援用し、さらに荷風の眺めた風景を訪ね歩いて再体験する川本さんのエネルギーに圧倒されつづけながら読み進めた。
今は圧倒されて、読後感を簡単に書くことができない。とりあえず読み終わったことだけを記録として書きとどめておくことにした。
2024年9月1日 記
※ ほぼ正午に読み終わったが、テレビのニュースによると、まさに今日正午、迷惑千万の台風10号は熱帯低気圧に変わったという。