豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

滝田ゆう「私版・昭和迷走絵図」

2024年09月02日 | 本と雑誌
 
 滝田ゆう「私版・昭和迷走絵図」(東京堂出版、1987年)を眺めた(正式な書名は「滝田ゆうの私版昭和迷走絵図」)。東京堂出版というのは、あの神田神保町すずらん通りにある東京堂(書店)と関係あるのだろうか。

 この本も、川本三郎さんの「荷風と東京--『断腸亭日乗』私註」で引用されていたので、興味をもって図書館で借りてきた。「寺島町奇譚」と同じく、著者が育った旧向島区寺島町、かつての玉の井の風景や人物を描いた絵も多いが、本書は玉の井に限られず、著者が旅した日本各地の昭和の風景が描かれている。しかも、前書と違ってほぼ全頁カラー版である。

 モノクロだった「寺島町奇譚」で描かれた玉の井はそれらしくうらぶれた風景に見えたが、カラー版の本書で描かれた玉の井は、例えば、「2 迷路への小路」「12 わが下町」「44 旧玉の井停車場跡」などを見ると、著者の同級生だった円歌が回想したような汚い町(私娼窟)ではなく、日ざしを浴びてどことなく美しい町並みのように見える。幼年・少年時代の著者にとっては玉の井は懐かしく輝いていたのだろう。

 2024年9月2日 記

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