気ままに

大船での気ままな生活日誌

玉縄桜 出生の秘密

2007-02-13 14:36:59 | Weblog
タマちゃん(私が玉縄桜につけた愛称です)のあまりに早い開花に感激した私は、タマちゃんのことをもっと知りたくなりました。タマちゃんの前の案内板には、これはソメイヨシノの自然交配で選抜されたと、さりげなくかかれていましたが、もっと何か出生の秘密があるのではないかと思いました。

出生の秘密というと三浦綾子さんの「氷点」を思い出しますね。内藤洋子さん、かわいそうでしたね、お母さん役の新珠三千代さん、冷めたかったですね。としがわかるって?(・・汗)。ひとより早めに悲しげに咲くタマちゃんも洋子さんのような悲しい過去があるのではと感じたのでした。

ホームズ君(私のこと)は、早速捜査を開始しました。聞き込み調査をはじめましたが、切符を売っている人に聞いても、的確な答えは返ってきませんでした。そうだ、このフラワーセンターの近くに、市の玉縄図書館がある、ここに必ず、なにか手がかりがあるはずだと思いました。

ホームズ君は資料捜しの名人です。まず、郷土資料を集めた書棚を右から左、上から下とざっと、ながめ、すぐにみつからないときは、一呼吸おいて、耳をすまします。そうすると、「私をみて」とか細いけど、しっかりした声が聞こえてきます。その方に目をこらすと、目指す資料がはたと、みつかるのです。今回も、その資料は大きな本にはさまって、ひっそりと隠れていました。薄っぺらな小冊子で、背表紙も薄く、タイトルも折れ曲がっていて、なんて書いてあるかわからないほどでした。

その資料は、センター長さんが、ご自分の月一度の園内ガイドの資料をまとめたもので、「わくわく花散歩」という冊子でした。そこには、タマちゃんの秘密がいっぱい書かれていたのです。

タマちゃんの生れ年は1969年でした。昭和44年です。ということはアポロ12号の年です、人類月に立つ、歴史的な年に生まれています。タマちゃんすごいね。この年に接ぎ木用の台木をつくる目的でたくさんのソメイヨシノの種が蒔かれました。そしたら、元気よく、ひとより先に芽を出して、ぐんぐん成長しているのがみつかりました。こんな尋常でない子は、ふつうは捨てられてしまうところですが、心やさしい職員の人が、何年も大事に育ててくれました。この子がタマちゃんなのです。

タマちゃんが5才になったとき、初めて蕾をつけ、そして、なんと皆より20日も早く花を咲かせたのです。そして、ひとつの芽につく蕾の数まで多いことも分りました。職員の人は、そのあと、毎年観察して、いろいろなことを調べあげました。そして、1987年に、タマちゃんが、花も恥じらう18才になったときに、「品種登録」申請という、成人式に出られるかどうか審査するところに出されました。そのときの名前は、「かしお桜」として出されていました。このセンターの近くを流れる、柏尾川に因んでつけられました。ところが審査が進んでいくうちに、もうこの名前はよそで使われていると、却下されてしまったのです。タマちゃんの最初の挫折です。やっぱり悲しい過去があったのですね。

そして、今度は名前を「玉縄桜」と変えて申請されました。この辺の由緒ある地名からとったものです。むかし、近くに玉縄城という、小田原北条の出城がありました。難攻不落の山城で、戦国時代、上杉謙信も落とせなかったそうです。今は、そのお城のあった丘には、女の城が建っています、お嬢さん学校の清○女学院です。ですから、玉縄というと、玉縄城から、「強靱」「男らしい」「武士の一分」といったイメージが浮かんできます。一方、女学院からは、「優しい」「女らしい」「大奥の一分」といった全く逆のイメージも浮かんできます。結局、タマちゃんはいいこ、いいこ、どうでもいいこ、の名前になってしまったわけです。2度目の挫折です。

でもこの名前のおかげで、1990年、タマちゃんが21才のとき、審査会をパスして、1才遅れでしたが、晴れやかに成人式を迎えたのでした。そして年々、花の数を増やし、ますますきれいになって、そして、目立ちたがり屋の性格がますます冴え、なんだか、年々咲く時期まで早めています。現在、女盛りの38才となり、フラワーセンターの女王(早春の部だけのね)にまでに成長したのです。

タマちゃんは、きっとジン生をしなやかに生きるヒトで、あるときは強く、あるときはやさしく、あるときは武士のように、またあるときは大奥のようにと、したたかに生きてきたのでしょう。それ故、間引きされてもおかしくない変った子がりっぱに育ち、そして、あの「名前差し替え事件」の悲しい過去もゆうゆうと乗り越えられたのでしょう。

タマちゃんが、満開になって、一番きれいなときに、またフラワーセンターを訪れ、ほめてやろうと思います。








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