気ままに

大船での気ままな生活日誌

山中常盤物語つづき

2012-03-21 10:57:30 | Weblog
岩佐又兵衛作”山中常盤物語”の前半のハイライトは、第五巻の常盤御前が盗賊共に殺害される場面であった。そして後半のハイライトというと、牛若が盗賊共を山中の宿におびき寄せ、仇討する第9巻である。これがまたすごい。まず、牛若が一人の盗賊の首をはねる。それをみた五人の盗賊が牛若を取り囲む。牛若は霧の印を結び、盗賊たちの眼をくらませ、小鷹の法を使って飛び上がり、全員を次々と切り倒す。こうして仇討が成就する。目をそむけたくなるような(でも怖いものみたさみたいな)場面がいっぱいだ。胴を真っ二つに切られてしまった盗賊たちも描かれている。



そのハイライトまでに、次の四つの絵巻の物語りがある。

第5巻。騒ぎに駆け付けた宿の太夫は瀕死の状態の常盤御前を抱き上げる。常盤は身分を打ち明けて、”牛若に会えずに、盗賊の手にかかって果てるのは口惜しい。せめて道端に土葬にして高札をたててほしい。牛若が都へ上る折りに見守ってやりたい”と述べ、息絶える。一方、秀衡の館の牛若は母の常盤が夢うつつに現れるのが気にかかり、館を忍び出て京へ上る。


第6巻。牛若は奇しくも山中の宿まできて、常盤の襲われた宿に泊まることになる。その夜、夢枕に立った、母常盤の姿、言葉を不審に思い、宿の太夫に尋ねる。事の次第を知った牛若は激怒し、かたき討ちを決意する。まず盗賊どもを宿におびき寄せるため、宿の女房に頼んで、座敷いっぱいに派手な小袖や黄金の太刀を並べる。さまざまな模様の華やかな小袖が並ぶ絵が見もの。

第7巻。牛若は先ず、宿場を出て、都の大名がおつきのようだが、宿はどこか教えてほしいと言って回る。その後、さまざまに変装して、この宿に大名が宿をとったとふれまわる。盗賊たちはこれを聞きつけ、宿の様子を伺いにいく。

第8巻。牛若の計略通り、盗賊たちは、その夜、大夫の宿を襲う。待ち構えていた牛若ははじめおびえたふりをして宝物は奥にあると盗賊たちをやり過ごす。

そして、牛若は盗賊をやりすごしたと同時に切りかかり、クライマックスの第9巻がはじまるのだ。そして第10巻で牛若は死骸の始末をし、宿の太夫と女房に感謝し、のちの褒章を約して立ち去る。

そして、11巻、牛若、秀衡の館にもどる。その後、三年三月が経ち、平家打倒のため十万騎の大軍を率いて都へ上る。うつくしい武具をつけた侍たちの列が延々とつづく。

最終巻、12巻。途中、山中の宿に立ち寄り、常盤の墓前で手厚く仏事をいとなみ冥福を祈る。そして、大夫と女房を呼び、そのときの感謝を述べ、山中三百町の土地を与え、そお恩にむくいた。

こうして、全12巻をたっぷり時間をかけて、絵巻を楽しませてもらった。まさに絢爛豪華な絵巻だった。生き生きとした、流れるような描写、またストーリーも、ふたつのハイライトを配し、変化があり、おもしろく観ることができた。常盤と侍従の殺害シーンや牛若による盗賊切り倒し場面など残酷なシーンもあるが、漫画的な描写なので、からっとした印象である。

又兵衛は、摂津国の有岡城主荒木村重の子として生まれたが、誕生の翌年、村重が信長に謀反を企て、荒木一族はそのほとんどが斬殺される。又兵衛は乳母に救い出され、石山本願寺に保護された。堀江物語もそうだが、又兵衛が仇討物に強くひかれた理由は、自分の幼児体験にあるのではないかと、ちょっと思ったりした。

11巻(上)と12巻(下)の一部


全12巻



次回の又兵衛絵巻は浄瑠璃物語。見逃さないようにしよう。

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