原宿の太田記念美術館で北斎の娘さん、葛飾応為の展覧会をやっているというので観に行った。予備知識なしで入ったので、応為の作品はたった一枚だったのには驚いた。でも、たった一枚のためか、その絵「吉原格子先之図」がとても印象に残るものとなった。
舞台は江戸の遊郭の夜。格子の向こうには、明るい部屋の中で華やかな衣装を纏う遊女たちがずらりと並ぶ。一方、格子の外は暗く、ちょうちんや行燈の灯りで足元を照らしながら、遊女たちを覗き込む男達の姿が。シルエットのような外の人々、道には幾筋もの格子の影が。光と影の対比のうつくしさがたっぷりと楽しめる。
何故、たった一枚か。応為の作品は世界に10点ほどしかないのだそうだ。でも、実際はもっと描いていたのではないか、もしかすると晩年の北斎の絵は彼女が一部代筆していたのではという説もある。彼女の画才については、北斎の”余の美人画は阿栄(応為のこと)に及ばず、妙に画きて、よく画法にかなえる”の言葉で知ることができる。”親ばか”じゃないのかと言う人がいるかもしれないので、英泉も”美人画の名手なり”と述べていることも付け加えておこう。
応為の展示品は一点と言ったが、実はもう一点ある。高井蘭山箸の”女重宝記”で、挿画を応為が担当している。これをみると、たしかに、美人がたくさん描かれていて、さまざまな仕草や表情が細やかに描かれている。たしかに美人画の名手なり。
そして、参考として、メナード美術館の、応為作”夜桜美人図”のカラー写真が置かれているが、(吉原格子先之図では遊女の顔が判然としないが)この絵では、はっきりとした美人が描かれている。女重宝記で描かれた美人顔と同類で、ぼく好みである(汗)。そして、その美人顔は北斎の美人画のようだとも思った。帰ってから、氏家コレクション(鎌倉国宝館)と北斎展図録をめくっていたら、たしかにそうだった。
北斎”酔余美人図”
北斎”雪中傘持ち美人図”
この2枚はきっと応為が描いたのではないかと思った(笑)。
このほか、光と影、洋風表現をキーワードにした浮世絵作品がいっぱい。北斎、国貞、英泉、広重、国芳、芳年、小林清親、など楽しめます。
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原宿駅前の歩道橋が撤去されていたのにはびっくり。歩道橋から見る、表参道の景色もなかなか良かったけどね。橋上からこぶしの花を目の前で観るのも楽しみだった。ここのは、初花がいつも一番乗りなんだよね。桜の木が切られていたので、コブシはどうかと、探したら、これはOKで安心した。でもへそまげているのか、蕾が膨らんでいなかった。ちょっと心配。
とても寒い日だった。NHK前の温度計が4℃を示していたもの。