横浜のそごう美術館で開催されている表記の展覧会を覗いてきた。木工作家で人間国宝の黒田辰秋(1904~1982)の作品展なのであるが、副題にもあるように、”目利きと匠の邂逅”という切り口での展示がとても面白い。
その、目利きというのがすごい。展示順にあげれば、河井寛次郎、柳宗悦、鍵善良房、白洲正子、小林秀雄、武者小路実篤、川端康成、黒澤明である。みな彼の作品や人柄を愛し、自分の手元に作品を置いていた。
黒田が、初めに出会った目利きは、河合寛次郎であり、さらに柳光悦である。彼らの支援により上加茂芸協団で木工藝術の腕を磨く。当時の作品、根来鉄金具手箱などが展示されている。ぼくにでもいいものだとわかる、落ち着いた輝き。そして、まだ無名だった頃の彼に店内装飾を依頼した京都祇園の老舗菓子屋”鍵善良房”。家一軒建つような高額な請求書がきたが、出来栄えがすばらしく認めたとのこと。現在でも大飾り棚がお客様を迎えるらしい。その実物大の写真も展示されている。
そして、白洲正子も長女が嫁ぐときに白洲家家紋入りの溜漆椀をつくってもらう。それも展示されている。武相荘所蔵のいくつもの小物も。小林秀雄は、あるところでみた小箱が気に入ったが、何年振りかに友人宅で再会、どうしても欲しくなり手に入れたという拭漆欅彫花文小箱。黒澤明監督は御殿場に別荘を建てたときに、内装を依頼。”王様の椅子”というニックネームの拭漆楢彫花文椅子が会場に。座ってみたいようなりっぱな椅子。
そして、人間国宝に認定され、晩年は宮内庁新宮殿に朱溜栗小椅子30脚を納入。そのひとつが展示されている。晩年の傑作とのこと。
著名人に好まれた黒田辰秋の作品の多くは、生漆を木地に何度も拭きこする、拭漆という技法によるもの。うつくしい木目がとても印象的。ほかに、朱漆、溜漆のもの、螺鈿などの華やかなもの等、多彩な作品も。そうそう、赤楽茶碗まで手がけていた。
さすが目利きの眼、素晴らしい作品ばかりだった。
こういう作品が。でも、本当にいいものはこのちらしには載っていません(笑)。
真央ちゃん、残念でしたね。フリーでは思い出に残る、伝説の演舞をみせ、有終の美を飾ってね。