おはようございます。2月のはじめに、横浜美術館で開催されていた展覧会、石内都/肌理(きめ)と写真を見に行ってきた。
石内都の回顧展を見るのははじめて。いろいろな写真があった。空家となった古びたアパートが並ぶコーナーとか、亡くなった母親や広島の被爆者の衣類などの遺品を撮ったものとか、身体の傷跡シリーズとか。ぼくは知らなかったが、写真家として、高い評価を得て、1979年に”Apartment”で女性として初めて木村伊兵衛写真賞を、2014年には”写真界のノーベル賞”と呼ばれるハッセルブラッド国際写真賞も受賞しているとのこと。すごい人なのだ。
ぼくは”廃虚の美”がわりと好きで、前述のおんぼろアパートシリーズはとても気に入った。でも、古いと言っても、遺品とか傷跡には”美”は感じない。でも、”存在と不在”、”人間の記憶と時間の痕跡”を一貫して表現し続けているということなので、ただうつくしければいいということではないのだ。
前述の写真はすべてモノクロだが、ある日突然、カラー写真を撮ろうと思い立ち、母親世代が愛用した絹織物を撮り始めた。これは、被写体がもともと美しいので、写真でアレンジしても文句なくうつくしい。このコーナーだけが撮影可能コーナーである。何故、絹か。石内は生糸や絹織物の生産地であった群馬県の桐生市の生まれ、そして活動拠点にしている横浜はその貿易港である。かっては両市とも絹で輝いていた共通の過去があったのだ。


真ん中にあるのは絹の原料の蚕の繭。

阿波の人形浄瑠璃から。

石内が個展”絶唱、横須賀ストーリー”で写真家としての実質的なデビューを果たしてから40年を迎えたのを機に、本展が開催されたとのこと。ところが、その”横須賀ストーリー”シリーズが離れた場所に展示されていたようで、うっかり見逃してしまった。ドブ板通りの古い街並みとか、ぼく好みの作品が並んでいたに違いない。そのうち、もう一度、見に行こうと思っていたのに、この3月4日に終了してしまっていた。残念。またの機会を待とう。


それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!