気ままに

大船での気ままな生活日誌

ルーベンス展/バロックの誕生(2)

2018-12-03 10:36:04 | Weblog

おはようございます。ルーベンス展、第2報です。

第1報では思い出話に終始したので、ここでは、まず、ルーベンス(1577-1640)のプロフィルを。ベルギーのアントワープの生まれかと思っていたが、そうではなく、ドイツのジーゲンという街で生まれている。父親がプロテスタントで、迫害されため、ドイツに逃れたそうだ。その後、父親は、ルーベンスが10歳のとき急死し、一家は故郷のアントワープに戻ってきた。13歳のとき、伯爵家へ小姓として出され、ここで彼の芸術的素養が認められ、当地の有力画家のもとで修業を積んだ。そして、21歳で、芸術家ギルドの聖ルカ組合の一員となり、画家としてスタートする。

そして、1600年(23歳)から8年間、イタリアへ修行の旅に出る。はじめベネチアを訪れ、ティツィアーノ、ヴェロネーゼとティントレットの絵画を目の当たりにして、影響を受ける。さらに、1601年にフィレンツェを経由してローマへ向かう。ここでは古代ギリシャ、古代ローマの作品の模写に努め、本展にもラオコーン群像の模写等が展示されている。さらに、イタリア・ルネッサンスのレオナルドダビンチ、ミケランジェロ、ラファエロの作品に心酔したのは言うまでもない。加えて、同時代の先頭を走るカラヴァッジョの作品にも触れ、多大な影響を受けた。こうして、実り多い8年間のイタリア留学を終え、故郷へ帰還。この地を治める総督夫妻の宮廷画家となり、大規模なルーベンス工房を設立した。こうして、ルーベンスは、バロックと呼ばれる壮麗華美な美術様式の栄えた17世紀ヨーロッパを代表する画家となり、”王の画家にして画家の王”と呼ばれるほどになる。

本展では、ルーベンスのイタリアとのかかわりに焦点を当て、以下のような章立てで構成されている。10か国からの40点の作品が、それぞれの章に組み込まれている。3メートル級の大作・祭壇画が一堂に並ぶ展示空間には圧倒される。

1章 ルーベンスの世界
2章 過去の伝統
3章 英雄としての聖人たち/宗教画とバロック
4章 神話の力/ヘラクレスと男性ヌード
5章 神話の力2/ヴィーナスと女性ヌード
6章 鉛筆の熱狂
7章 寓意と寓意的説話

では、以下、ちらし等、手に入る画像を載せながら、振り返ってみたい。

1章 ルーベンスの世界
ルーベンスというと、筋肉もりもりの男性裸体画や豊満な肉付きの女性ヌードを思い起こすが、かわいらしい子供の絵も結構ある。本章では、それら子供の絵や
公的な肖像画が展示されている。 

クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像(1615-1619) ルーベンスの長女クララ・セレーナを描いている。5歳のときの作。ヨーロッパ絵画史上、最も魅力的な子供の肖像画とされる。しかし、7年後、12歳で短い生涯を終える。リヒテンシュタイン侯爵家のコレクションの代表作で、2012年のリヒテンシュタイン/華麗なる侯爵家の秘宝展(国立新)のポスターを飾っていた。

眠るふたりの子供(1612 - 13 )これは西美の常設館でいつも見る絵。ルーベンスの兄フィリップの子供、クララとフィリップと考えられている。兄は1611年に没し、残された二人の子供に慈しみをもって描いた。

ほかに、ルーベンスの自画像(模写)、幼児イエスと洗礼者聖ヨハネなど、合わせて7点が展示されている。

2章 過去の伝統
古代彫刻や16世紀の作品のルーベンスによる模写、そして、同時代の先端をゆく画家の作品を研究した成果が如実に示されるルーベンスの作品が並ぶ。

セネカの死(1615-16年) プラド美術館 皇帝ネロに謀反の濡れぎぬを着せられ、師でもあったセネカが自害を命じられてしまう。たらいに足を入れ血管を切るシーン。この作品の横に”偽セネカ像のヘルメ柱”(2世紀前半)が展示されている。顔がそっくり。哲人セネカの言葉を紹介する、中野孝次の”セネカ/現代人への手紙”を持っている。久しぶりに読んでみようか。

”ラオコーン群像の模写素描”と共に、ベルニーニのラオコーン群像(ローマ、スパーダ美術館)が見られたのはうれしい。

この写真はないので、今年7月の”ミケランジェロと理想の身体展”でみた、模刻(ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ、1584年頃)を載せておこう。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオと工房《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》(1560-70頃)と、ルーベンスのティツィアーノに基づく《毛皮を着た若い女性像》(1629-30頃)が並ぶ。


3章 英雄としての聖人たち/宗教画とバロック

宗教を主題とした作品が並ぶ。
ルーベンスは宗教画に快楽的かつ古典的な性格を与えたとのこと。彼が参考にした作品もともに展示されている。

キリスト哀悼 1601-02年 ボルゲーゼ美術館

法悦のマグダラのマリア (1625 - 28)リール美術館

聖アンデレの殉教(1638 - 39)マドリード、カルロス・デ・アンベレス財団 聖アンデレはX字型の十字架で処刑され、殉教したことになっていて、ここでもX字型の十字架と共に描かれている。十二使徒のひとりとして崇敬され、X字型の十字架は、アンデレの十字架と呼ばれ、スコットランドの国旗にもなっている。日本初公開の大型作品ということで、本展の目玉のひとつ。 

では、ここで、中休みとさせていただきます。(つづく)

それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!

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