08.05.09 国宝薬師寺展@東京国立博物館 平成館
絶対見に行こうと思って全然行けなかった。毎週金曜日は20時まで開館。土日より空いているかと思ったけどやっぱり混んでいる。
もちろん一番のお目当ては日光・月光菩薩立像。建物中央のエントランスからエスカレーターで2Fに上がると左右に第1会場と第2会場がある。日光・月光は第1会場のクライマックス(笑) イヤホンガイドを借りる。市原悦子の語りが分かりやすく心地よい。
全体を4つの章にテーマ分けして展示。第1会場は日光・月光を含めて「第一章 薬師寺伽藍を行く」となっている。入口を入ると休ヶ岡八幡の境内が再現されている。朱色も鮮やか。両脇の阿吽の狛犬がかわいい。ここでの見モノは「国宝 八幡三神坐像」仲津姫命・僧形八幡神・神功皇后の木像。3人とも片ヒザをわずかに立てて座している。あまり大きくない。仲津姫命と神功皇后は奈良時代のゆったりとした衣装を着ておられる。細かな花柄が描かれていて、今も残る色からは色鮮やかな彩色が感じられる。
次の部屋に進むと薬師寺のシンボル東塔をイメージで再現。休ヶ岡八幡の再現に比べると・・・ではあるけれど、屋根の上の装飾の土台部分「東塔伏鉢」の大きさにビックリ。さらに「東塔水煙」がある。まさに塔先端にある飾りで、透かし彫りが見事。インドの影響を感じる。天女の衣のやわかいドレープと唐草模様が美しい。しかし、塔のさらに上、人の目に触れない所にまで手を抜かないのが素晴らしい。「仏足石」も興味深い。これは巨大な足。たしか清水寺にも釈迦の足型の石があるけど、古代インドでは釈迦の姿を表現することは不可能ということで、足型を信仰していたのだそう。そういう人々の考え方が愛おしい。
さらに進むと「聖観音菩薩立像」がある。かなり大きい立派なお姿。謀反の疑いをかけられ処刑された悲劇の皇子、有馬皇子を模していると言われるそのお姿は穏やかで美しい。前姿は堂々とした立ち姿だけど、後姿は優しく女性的でもある。背中のラインが美しい。そして横は意外とふくよか。この後、日光・月光だけどお2人は別格なので、後ほどゆっくり語るとして、第2会場へ。
「第二章 草創期の薬師寺」では、「唐草文軒丸瓦」や「塑像残欠」が見られる。皇后(後の持統天皇)の病気平癒のため、天武天皇が薬師寺建立を発願されたのは680年。天皇は志半ばで崩御されたが、持統天皇が遺志を引き継ぎ藤原京に建立。一応の完成を見たのは7世紀末。「唐草文軒丸瓦」「唐草文軒平瓦」のほとんどは、この藤原京の本薬師寺跡から出土している。唐草模様が素朴でかわいらしい。「塑像残欠」は現在の薬師寺西塔跡から出土したもので、木製の人型に藁と土を混ぜたものを貼り付けた像で、これらを使って仏教の成り立ちを教えたらしい。いわゆる人形劇か? そのわり直立で表情どころか目鼻もないけど(笑)
「第三章 玄奘三蔵と慈恩大師」では、「西遊記」でおなじみの玄奘三蔵の像や、三蔵法師の弟子で法相宗を開いた慈恩大師の像や、彼らが伝えた「大般若経」などが見られる。三蔵法師がガンダーラへ向かって出発してから、サンスクリット語の経典を翻訳し、長安へ戻ったのは17年後。「玄奘三蔵坐像」がいつのお姿を想定して彫られたのか不明だけど、これは・・・。ちょっと桜金造似・・・。弟子の「慈恩大師坐像」がいい。どっしりとした徳のあるお顔。法相宗とは”心のありようで世界は変わる。心を見つめよう”という教えだそう。たしかにそのとおりだと思う。「紺紙金字成唯議論」は美しい金文字でちょっとポップ。「大般若経」の印刷のような字の美しさと乱れのなさに感心。
「第四章 国宝吉祥天像」では、この展覧会もう一つの目玉。「吉祥天像」が見られる。というか「吉祥天像」しか展示物はない。各パーツの拡大コピーで細部を確認した後、ガラスの向こうに展示された「吉祥天像」を見る。小さい・・・。そして保護の為最小限の明かりのため暗い・・・。しかしそのふくよかなお顔や印を結んだ手の美しさ、身につけた衣のドレープと描き込まれた模様と彩色の美しさは素晴らしい。なんでも経典には”吉祥天を描く際には15歳の少女をモデルにすると良い”と書かれているとのことで、確かにその頬のふくよかなみずみずしさは少女のよう。太い眉が印象的で、小さくてふくよかな唇は少し微笑まれている。髪の生え際も美しい。そしてうっすらとした後光。これは素晴らしかった。
さて、いよいよ「日光菩薩立像」と「月光菩薩立像」について。「聖観音菩薩立像」を見た後、スロープを上って角を曲がると、そこが展望台のようになっており、正面にお2人が立っておられる。この演出はいい。どーんとお2人が眼前に現れて感動的。そしてデカイ! 3m超というそのお姿は圧巻。まさにスーパースターだ! 展望台からだとあまり見上げることなくお顔が見れる。穏やかな表情。月光菩薩の方がほんの少しふっくらされている。向かって右が日光菩薩で左が月光菩薩。お互いの方へほんのわずか首を傾けている。腰をひねり片足に重心を置き、ヒザを少し曲げた立ち方を三曲法というのだそうで、そのお姿がなんとも優美。そしてSEXY(笑) 全体的に対称になっているようだけど、装飾や衣のドレープの感じなどがほんの少し違う。体型もほんのわずか月光菩薩の方が華奢でどこか女性的。肩から垂らして反対側の手にかけられた衣のドレープには確か意味があったように思うけど忘れてしまった(涙)
スロープを下りて間近で拝見する。やっぱり大きい。この迫力はスゴイ。今回最大の目玉はいつもつけていらっしゃる光背がはずされ、その後姿が見られるということ。後ろに廻ってみる。その優美さにウットリ。しなやかな筋肉、背骨の表現、そして優美な腕のライン。肩に掛けられた花紋の装身具も美しい。いちいちイイ! どこを見ても何一つ手を抜いていない。いつもは見られないその後姿までこんなに美しいなんて本当に素晴らしい。
NHKの特番で寺を出られるお2人のお清めをしていた僧侶が「普段こんなに間近にお仕えすることはないのでありがたいこと」と話すのが印象的だった。薬師寺管主安田瑛胤師がお顔を清めた時「耳元で”東京に行かれるんですね”と話しかけた」と語っておられたのも感動だった。信仰というのはそういうものなんだと漠然と思った。私は無宗教だけど、お2人のお姿には感動した。本当にありがたい。それは単なる像ではないから。造った人々や、守ってきた人々、そして信仰してきた多くの名もない人々の気持ちを受け止めてきたその重みも感じられた。
本当に素晴らしかった。もう一度お2人に会いたい。
★国宝 薬師寺展:6月8日(日)まで
⇒「平安遷都1300年記念 国宝 薬師寺展」Official site
絶対見に行こうと思って全然行けなかった。毎週金曜日は20時まで開館。土日より空いているかと思ったけどやっぱり混んでいる。
もちろん一番のお目当ては日光・月光菩薩立像。建物中央のエントランスからエスカレーターで2Fに上がると左右に第1会場と第2会場がある。日光・月光は第1会場のクライマックス(笑) イヤホンガイドを借りる。市原悦子の語りが分かりやすく心地よい。
全体を4つの章にテーマ分けして展示。第1会場は日光・月光を含めて「第一章 薬師寺伽藍を行く」となっている。入口を入ると休ヶ岡八幡の境内が再現されている。朱色も鮮やか。両脇の阿吽の狛犬がかわいい。ここでの見モノは「国宝 八幡三神坐像」仲津姫命・僧形八幡神・神功皇后の木像。3人とも片ヒザをわずかに立てて座している。あまり大きくない。仲津姫命と神功皇后は奈良時代のゆったりとした衣装を着ておられる。細かな花柄が描かれていて、今も残る色からは色鮮やかな彩色が感じられる。
次の部屋に進むと薬師寺のシンボル東塔をイメージで再現。休ヶ岡八幡の再現に比べると・・・ではあるけれど、屋根の上の装飾の土台部分「東塔伏鉢」の大きさにビックリ。さらに「東塔水煙」がある。まさに塔先端にある飾りで、透かし彫りが見事。インドの影響を感じる。天女の衣のやわかいドレープと唐草模様が美しい。しかし、塔のさらに上、人の目に触れない所にまで手を抜かないのが素晴らしい。「仏足石」も興味深い。これは巨大な足。たしか清水寺にも釈迦の足型の石があるけど、古代インドでは釈迦の姿を表現することは不可能ということで、足型を信仰していたのだそう。そういう人々の考え方が愛おしい。
さらに進むと「聖観音菩薩立像」がある。かなり大きい立派なお姿。謀反の疑いをかけられ処刑された悲劇の皇子、有馬皇子を模していると言われるそのお姿は穏やかで美しい。前姿は堂々とした立ち姿だけど、後姿は優しく女性的でもある。背中のラインが美しい。そして横は意外とふくよか。この後、日光・月光だけどお2人は別格なので、後ほどゆっくり語るとして、第2会場へ。
「第二章 草創期の薬師寺」では、「唐草文軒丸瓦」や「塑像残欠」が見られる。皇后(後の持統天皇)の病気平癒のため、天武天皇が薬師寺建立を発願されたのは680年。天皇は志半ばで崩御されたが、持統天皇が遺志を引き継ぎ藤原京に建立。一応の完成を見たのは7世紀末。「唐草文軒丸瓦」「唐草文軒平瓦」のほとんどは、この藤原京の本薬師寺跡から出土している。唐草模様が素朴でかわいらしい。「塑像残欠」は現在の薬師寺西塔跡から出土したもので、木製の人型に藁と土を混ぜたものを貼り付けた像で、これらを使って仏教の成り立ちを教えたらしい。いわゆる人形劇か? そのわり直立で表情どころか目鼻もないけど(笑)
「第三章 玄奘三蔵と慈恩大師」では、「西遊記」でおなじみの玄奘三蔵の像や、三蔵法師の弟子で法相宗を開いた慈恩大師の像や、彼らが伝えた「大般若経」などが見られる。三蔵法師がガンダーラへ向かって出発してから、サンスクリット語の経典を翻訳し、長安へ戻ったのは17年後。「玄奘三蔵坐像」がいつのお姿を想定して彫られたのか不明だけど、これは・・・。ちょっと桜金造似・・・。弟子の「慈恩大師坐像」がいい。どっしりとした徳のあるお顔。法相宗とは”心のありようで世界は変わる。心を見つめよう”という教えだそう。たしかにそのとおりだと思う。「紺紙金字成唯議論」は美しい金文字でちょっとポップ。「大般若経」の印刷のような字の美しさと乱れのなさに感心。
「第四章 国宝吉祥天像」では、この展覧会もう一つの目玉。「吉祥天像」が見られる。というか「吉祥天像」しか展示物はない。各パーツの拡大コピーで細部を確認した後、ガラスの向こうに展示された「吉祥天像」を見る。小さい・・・。そして保護の為最小限の明かりのため暗い・・・。しかしそのふくよかなお顔や印を結んだ手の美しさ、身につけた衣のドレープと描き込まれた模様と彩色の美しさは素晴らしい。なんでも経典には”吉祥天を描く際には15歳の少女をモデルにすると良い”と書かれているとのことで、確かにその頬のふくよかなみずみずしさは少女のよう。太い眉が印象的で、小さくてふくよかな唇は少し微笑まれている。髪の生え際も美しい。そしてうっすらとした後光。これは素晴らしかった。
さて、いよいよ「日光菩薩立像」と「月光菩薩立像」について。「聖観音菩薩立像」を見た後、スロープを上って角を曲がると、そこが展望台のようになっており、正面にお2人が立っておられる。この演出はいい。どーんとお2人が眼前に現れて感動的。そしてデカイ! 3m超というそのお姿は圧巻。まさにスーパースターだ! 展望台からだとあまり見上げることなくお顔が見れる。穏やかな表情。月光菩薩の方がほんの少しふっくらされている。向かって右が日光菩薩で左が月光菩薩。お互いの方へほんのわずか首を傾けている。腰をひねり片足に重心を置き、ヒザを少し曲げた立ち方を三曲法というのだそうで、そのお姿がなんとも優美。そしてSEXY(笑) 全体的に対称になっているようだけど、装飾や衣のドレープの感じなどがほんの少し違う。体型もほんのわずか月光菩薩の方が華奢でどこか女性的。肩から垂らして反対側の手にかけられた衣のドレープには確か意味があったように思うけど忘れてしまった(涙)
スロープを下りて間近で拝見する。やっぱり大きい。この迫力はスゴイ。今回最大の目玉はいつもつけていらっしゃる光背がはずされ、その後姿が見られるということ。後ろに廻ってみる。その優美さにウットリ。しなやかな筋肉、背骨の表現、そして優美な腕のライン。肩に掛けられた花紋の装身具も美しい。いちいちイイ! どこを見ても何一つ手を抜いていない。いつもは見られないその後姿までこんなに美しいなんて本当に素晴らしい。
NHKの特番で寺を出られるお2人のお清めをしていた僧侶が「普段こんなに間近にお仕えすることはないのでありがたいこと」と話すのが印象的だった。薬師寺管主安田瑛胤師がお顔を清めた時「耳元で”東京に行かれるんですね”と話しかけた」と語っておられたのも感動だった。信仰というのはそういうものなんだと漠然と思った。私は無宗教だけど、お2人のお姿には感動した。本当にありがたい。それは単なる像ではないから。造った人々や、守ってきた人々、そして信仰してきた多くの名もない人々の気持ちを受け止めてきたその重みも感じられた。
本当に素晴らしかった。もう一度お2人に会いたい。
★国宝 薬師寺展:6月8日(日)まで
⇒「平安遷都1300年記念 国宝 薬師寺展」Official site