・*・ etoile ・*・

🎬映画 🎨美術展 ⛸フィギュアスケート 🎵ミュージカル 🐈猫

【cinema】『オーストラリア』(試写会)

2009-02-16 01:29:36 | cinema
'09.02.08 『オーストラリア』(試写会)@東京厚生年金会館

yaplogで当選。母親が見たいと言うので応募。なのに本人行けないと… 試写状届いたのが木曜日。試写会は日曜日ってことで、これは一人鑑賞かなぁと思いながら友達に連絡。次々断られて5人目でやっと見つかった。子供がいなくて映画が好きな友達が年々減っている(涙) というわけで久々Bちゃんと鑑賞。しかし日曜日の夜、厚生年金会館、しかも強風で酷寒とあって空いてる。最初から3F席にしたけどガラガラ。1Fも前の方はかなり空いてた。意外に人気ないんだろうか…。

「イギリス貴族の奥方サラは、牛肉の買い付けでオーストラリアに行ったまま1年が過ぎても戻らない夫の浮気を心配し、はるばるやってきた。夫が寄越した牛追いドローヴァーと道なき道を走ること数日。辿り着いた農場で待っていたのは、夫の不慮の死の知らせ。残された彼女はドローヴァーの協力を得て、農場を手に入れようと目論む地元の有力者カーニーと対決するが…」という話で、これはメロドラマ。言いたいことはいろいろあるみたいだけど、見終わった感想としてはそんな印象。裕福で美しく気の強い女性が、突然の不幸で一家を背負うはめになる。そこにワイルドなヒーロー登場。初めは反発しあいながらも、いつしか惹かれ合う。2人の恋愛を軸に戦争や人権問題を絡めて描く。さんざん見てきた印象。『風と共に去りぬ』を越えたということらしいけど… どうかな…

いきなりダメ出ししているけど、面白くないわけではない。ニコール・キッドマンは相変わらず美しいし、スレンダーながらメリハリのきいた体にピッタリとしたシルエットの衣装が似合う! ヒュー・ジャックマンはセクシー。好みではないけど… キーマンとなるアボリジニと白人のハーフの少年も良かった。コミカルな場面を盛り込みつつ、結構残酷なシーンや、重いテーマを盛り込みつつ、恋愛映画として無難にまとまっている。オーストラリアの自然もキレイ。

オーストラリアはかつて英帝国に属し、その後独立。現在は英連邦に属している。元は流刑地だったように思う。『スウィニー・トッド』で主人公はオーストラリアに流刑されていたし。原住民はアボリジニ。現在はイギリス系の人口が多い。あまり詳しくないので、この時代がどんな状態だったのかイマヒトツ分からないのだけど、アボリジニの子供達、特に白人との間に生まれたハーフの子供達を親元から引き離す政策が取られていた。建前は、教育ということらしいけれど、おそらく実際は奴隷のように扱われたのだろう。女性たちは性的な相手をさせられていたと映画の中でも語られていた。この映画の主人公の1人でもあるナラも、白人との間に生まれたハーフで私生児。描きたい事の一つはこの問題。多くの黒人問題同様、ここでも高級クラブというわけでもない荒くれ男達が集うバーですら、黒人はお断り。そういう問題自体は伝わってきたし、ナラを警察から守るため、母親と2人で身を隠した水溜用タンクに、サラがやって来て雇い人フレッチャーの不正を暴き、せき止められた水を流したため水が溜まっており、結果悲劇を招いてしまうのは皮肉ではある。それらのエピソード1つ1つは辛いことなのに、なんとなく心に響いてこない。役者達の演技は悪くは無いのだけど・・・。

後半、やはりもう一つ描きたかったのであろう戦争シーンが出てくる。これも、その戦闘シーンの迫力はすごくて圧巻なのだけれど、亡くなってしまったと思った人物が実は生きていたとか、バラバラになってしまった主人公達は再会できるのか?というシーンが長すぎるし、サラと間違えられた人物との関係がほとんど描かれていなかった上に、取り違えられたという描写自体も、ドローヴァーが彼女への本当の気持ちに気づくという事にもあまり関係がなく、見てる側をハラハラさせることが狙いなのだとすれば、特別必要でもない気がする。確かにフレッチャーに逆恨みされるネタにはなるけれど、そもそも身代わりになったわけでもないし、仮にそうだとしても、その人物についてあまりに説明不足なので同情もできない。

と、ちょっとネタバレになることに触れつつもあえて書いたのは、このエピソードのように主人公にしろ、悪役にしろ何となく薄っぺらい印象。今回の悪役フレッチャーとカーニー。カーニーは思ったよりも根っこの部分では悪くない人物。だったら彼を絡めてもう少しおもしろく描けたような気もするのだけど・・・。まぁ、そんな必要は確かにないけど、そういうせっかく出ているのに生かしきれていないような人物が多い。例えばナラの祖父でアボリジニのシャーマン、キング・ジョージなど魅力的な人物もいるのだけど、イマヒトツ生かしきれていない印象。

薄っぺらくなってしまった理由は人物の描き込みの足りなさもある気がするけれど、サラとドローヴァーの恋愛を主軸としたことにもある気がする。まぁ、もともとそれがテーマの恋愛映画なので当然といえばそうなのだけど(笑) 正直、2人の恋愛にあまり酔えなかったことが、全体的に薄っぺらい印象になってしまったのかなと思う。サラとドローヴァーが一体何歳の設定なのか不明だけど、ニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンの実年齢を考えると、若く見積もっても30代半ばと思われる。そのわり2人の恋愛から得るものもない。まぁ、恋の始まりなんて、若かろうが、年を取っていようがドキドキしたり、我を忘れて夢中になったりするのは同じだと思うし、そういう一緒にいるだけで幸せっていう時期が過ぎて、お互い相手がいることに慣れてくると、相手に求める部分が出てきて、すれ違ったり傷ついたりするのも同じだと思う。でもニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンを使って約3時間もある映画を作るのであれば、もう少し大人の恋愛を描けなかったかなと思ったりする。大人の恋愛って一体何と言われれば難しいんだけど(笑) 2人のすれ違う理由にしてもドローヴァーが踏み込めない感じもありきたりではある。2人とも結婚を経験していて、悲劇でその結婚生活が終わっている。サラの悲劇は見て知っているけど、後から語られるドローヴァーの悲劇は、その辛さのわりに取ってつけたような印象になってしまっているのは何故なんだろう。上手く言えないんだけど、全体的にさらっとなぞっただけという感じがした。

役者達は悪くはなかったけれど、可もなく不可もなくという感じ。フレッチャー役で『ロード・オブ・ザ・リング』のファラミア役デヴィッド・ウェンハムが出ていた。しかし、この役・・・。まぁ、嫌な役のわりに頑張っていた。どこかしら哀愁を感じたのはファラミアの印象が強いからかな(笑) キング・ジョージ役の人が良かった。本当のアボリジニの人なのかな。神秘的な存在感は、演技を超えていたような気がするのだけど・・・。ナラ役の男の子も良かった! 彼がいろいろな経験を経て、立派なアボリジニの少年に成長したのは良かった。

ニコール・キッドマンは相変わらず美しいし、演技も上手いと思うけれど、良家の奥様で、美しい衣装を何着も身にまとい、窮地に陥ると必ず誰かが助けてくれるお嬢様みたいな役多い気がする。確かに彼女のクラシカルな美貌にはピッタリとう感じだし、別にそんな設定でもいいと思うけれど、もう少し大人の女性としてのしなやかな強さが描かれる役を演じて欲しい気がする。この役、設定は何歳か知らないけれど、25~6歳くらいの印象なので・・・。それでも、サラが魅力的な女性に見えたのは、ニコール・キッドマンのおかげだと思うけれど。

ヒュー・ジャックマンはあまり好みのタイプではないけれど、セクシーではあった。ドローヴァーってありがちな設定の役ではある。心に傷を持ち人と深く関わることを怖れているため、仕事にかこつけて自由に生きている。こういう映画の主人公(の相手役)によく見るタイプ。類型的にも見ていて鼻持ちならなくもなく、知性を感じさせたのはヒュー・ジャックマンのおかげかも。ただ、サラにしてもドローヴァーにしてもイマヒトツ素材を生かせていない印象なのは、ラストあまりのご都合主義的に畳み掛けるハッピーエンドがウソっぽく感じられたからかもしれない。もちろんハッピーエンドになって欲しいんだけど、ちょっとあまりにも・・・(笑)

でも、その薄っぺらい印象というのも、いろんな要素を分かりやすく描くためには、複雑な人物設定やストーリーにせずに、メロドラマとして描こうとしたからなのだとすれば、これは完全に成功していると思う。映画にそんなに複雑さを求めず、娯楽作品が見たいという人にはおもしろいと思う。もちろん、そういうタイプの人も作品自体も全くバカにはしていない。そもそも映画はそいうものだと思うし、それぞれの見方があるのは当たり前。いろんな問題を描きつつ、最後にはきちんとまとまっているし、衣装やセットも豪華。オーストラリアの自然がスゴイ! サラの夫の牧場(といってもビックリするほど広大だけど・・・)ファラウェー・ダウンズは素晴らしい。乾季には砂漠の真ん中に取り残されたような邸宅が、雨季には緑に囲まれるのは美しい。2000頭(だったかな・・・)の牛の大移動も迫力大。相手は日本軍なので複雑ではあるけれど、戦争シーンの迫力もスゴイ。それら全てに現実味が薄いのも、逆にメロドラマとしてはいいのかもしれない。

おもしろくなくはなかった。全体的に私にはしっくりこなかったというだけ。


『オーストラリア』Official site

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする