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【cinema】『カフーを待ちわびて』(試写会)

2009-02-25 01:31:03 | cinema
'09.02.19 『カフーを待ちわびて』(試写会)@九段会館

これは気になった。yaplogの試写会に応募。当選したのでバレエのお稽古サボって行ってきた!

「沖縄の離島で小さな日用雑貨店を営む明青。友達と行った神社でふざけて書いた絵馬に返事がくる。手紙に書いてあったとおり、後日差出人である幸が明青を訪ねて来るが…」という話。これはなかなか良かった。ちょっと余計な要素を入れてしまったため中途半端な感じになってしまった気もするけど、心に傷を負ったため、踏み出すことを避けている明青の姿を通して、今の自分が見えたりもした。

明青が絵馬に書いたのは「嫁に来ないか」というもので、幸はそれに応えて会いに来る。実は大方の予想どおり、からくりがあるのだけど、けっこう無謀な設定ではある。ムカツク絵馬を「ムカ絵馬」と称して鑑賞しているMJことみうらじゅんだったら確実に撮影されていると思われる絵馬(笑) そしてそれに対して来た返事は近々伺いますとの内容。それをウキウキ待つ明青。普通あまり有り得ない設定。そんな返事が来たら多分怖い。期待する気持ちはゼロではないけど、普通警戒すると思う。でも、不審に思いながらも、やって来た幸を受け入れる明青。そして、ホントの妻もしくは彼女のように振る舞う幸。そこに違和感がなく、それはないだろうと思いながらも、二人が夫婦のようになっていく姿を微笑ましく見守ってしまうのは、きっと玉山鉄二とマイコのおかげ。だって普通に考えて、絵馬を書いた男の人が玉鉄だったり、それに反応して現れる女性がマイコの確率は限りなく低い(笑)その時点ですでに現実離れしているので、その設定をいぶかしく思うこともない。

たいして流行っているとも思えない雑貨屋で、1個50円のアイスを売る明青の家に、女性1人居候するのだって結構な負担じゃないのかとか思ってしまうのもなし! そういう現実的なことは考えずに2人の新婚生活みたいなところを楽しむ映画なんだと思う。前半のその辺りはすごくかわいくて良かった。とくにマイコが良くて男の人の理想の奥さん像を体現していたと思う。あくまで"理想像"だけど。だって2人がしていたことは、朝起きてご飯を一緒に食べて、玉鉄がカフー(島の方言で「幸せ」という名前の犬)の散歩に行って、その玉鉄をゆったり縁側になまめかしく腰掛けたマイコが笑顔で迎えるだけ。掃除や洗濯も一緒にしていてなんとも微笑ましく、独身OLちゃんとしては羨ましいかぎりだけど、実際結婚てそれだけじゃないだろうと… 別にドロドロしたことが見たいわけではないけれど、結婚生活って"生活"なわけだから、ご飯食べて洗濯してるだけじゃないよねって気はする。もちろん、それだけで終わるわけもなく、2人の関係は島という大きな単位の問題に絡め取られて意外な方向へ向かう。

少しずつ明らかになっていくけど、明青の傷は悲しい。大人になって、その理由とか相手の気持ちを思いはかれるようにはなっている。きっと心の中では赦していると思っていると思う。明青はあまり感情をあらわにしないのだけど、その体験が影響していることは間違いない。拒絶されたのだという思いは、人と深く関わることに対して臆病にさせる。その相手の気持ちを思いはかれたとしても傷は癒えない。それは自分に対しての言い訳だし、慰めだから。本当の理由は本人にしか分からない。でも、それを確かめるのは怖い。また傷つけられるのが怖いから。それは間違ってはいないし、逃げているかもしれないけれど、そういう風に生きていったとしても別にいいんじゃないかと思うけれど… 正直、東京でエリート・サラリーマンになった幼なじみの俊一が、こんな生活していて恥ずかしくないのか的な発言をした時には、余計なお世話じゃないかと思ったりもした。まぁ、友達を心配して言いたくなる気持ちも分かるけど…(笑)

だけど、このまま2人の仲がふわふわした感じで終わるはずもなく。終わったらそれはそれで困るよと思っていると、島の開発問題が持ち上がってくる。正直、この設定がありがちで中途半端な印象。せっかくの2人の出会いのあり得ない感じが、与那喜島ののんびりとした、でもどこか浮世離れした雰囲気と合って、その現実感のなさに恋愛初期の「この気持ちがずっと続けばいい」と思っている頃の感じがして良かったのに・・・ もちろん、そもそも幸が誰なのか、本当の目的は何なのか分からないままでは困るし、2人が本当に恋に落ちて、きちんとした関係を築きたいのであれば、このまま踏み込まないままではいられないはず。だとすれば現実を見なければならない。でも、彼女に向き合うきっかけとなる開発事業があまりにおそまつな印象。いまどきリゾート開発っていうのも・・・。リゾート開発が失敗してる例はたくさんあるわけで、第三者から見れば現実感がないこの計画に、藁にもすがるというような島の現実は、幼なじみの俊一が訴えるほど感じられない。むしろほのぼのとして皆仲の良い楽しげなシーンが多い。そういうシーンの裏側にある島の窮状が全く感じられないわけではないし、感じ取れないのは私の想像力が足りないのかもしれないけれど、あまりにも取ってつけた感じ。

沢村一樹扮する俊一の上司の画策なんかは、現実にもそういうことはあるのかなとは思うけれど、なんとなくドタバタ感。それが幸への疑惑になるっていうのもあまりに安易な気がする。幸はとっても謎めいていたわけで、その辺りが明青が現実を見るきっかけになるのも分かる。でも、すでに違う方向に伏線を張っているわけだし・・・。まぁ、疑惑は明青だけに起きればいいわけで、見ている側への提起ではないのかも。見せたいのは明青の弱さであって、きっかけとなるのは何でもいいのかもしれないけれど、取ってつけたような開発問題なんかなくても、そういう感じは描けたと思うのだけど・・・。

明青は傷つくことを怖れて踏み込めず引いてしまう。何歳の設定なのか分からないけれど、それはないだろうと。まぁ、確かにああ言うのが一番楽ではあるけれど、あまりに自分のことしか大事にしていなくて、正直イラッとした。ちゃんと向き合ってないし。幸が本当はどういう人なのかとか、結局どうするのかは別として、ここで向き合わなきゃ意味ないじゃないかと。まぁ、ムリに変わる必要はないとは思うけれど、逃げているだけだと思った。でも、それは人ごとだからだと気づく。そして、自分が「それじゃ何も変わらない」と思ったということは、多分、今自分の中の傷が癒えて次に向かう準備が出来たからなんだと思った。まぁ、私のことはいいけれど(笑) でも、明青にはまだ準備ができていなかった。出来たと思っていたような描写もあったけれど、今また傷つけられるのは耐えられなかったのかも。

玉鉄はその辺り上手く演じていたと思う。若干ひきこもり気味な明青は、玉鉄くらいじゃないと成立しない気もするし(笑) どうにも自分を出さない、明青にイライラするところもあったけれど、嫌ではない。草食系男子の優しくて繊細だから引いてしまう感じも伝わってきた。最後までピリッとしないで終わる感じは、脚本などの設定でもあるので、玉鉄の演技だけによるものではないけれど、それもまたアリと思えたのは良かったと思う。

明青よりよっぽど現実離れしている幸役のマイコも良かったと思う。突然やってきて、翌日から新妻のように振舞う。ぷらぷら散歩に出かけたダンナを優しい笑顔で迎える。何をしてたとか、どこに行ってたとか一切聞かない。いつの間にかするりとテリトリー内に入ってくる。それが自然。そして自分のことを理解してくれているようでもある。正に理想の女性ではないでしょうか。ただし、寝室は別ですが(笑) でも、何でも聞いてと言うわりに踏み込めないのは、明青の気が弱いからだけではないのは見ている側にも伝わる。幸にも辛い過去があり、そこから立ち直りたいと思った。彼女は行動し、そして糸口を見つけた。その感じは良かったんじゃないかと思う。横顔がキレイ。明青が何かと世話になっているおばあ役の瀬名波孝子さんが良かった。といっても沖縄弁がすごくて、何を言っているのかほとんど分からず、字幕が出ているけれど(笑) でも、おばあのおかげで明青が救われている感じは分かる。

絵馬に書いたほんの少しの本心と、それにすがった女性の恋愛という題材はいいし、沖縄の自然の中でゆったりと2人が心通わせる感じもすごくいい。手の火傷の跡を気にしてずっと布を巻いて隠していた明青が、幸が触れてくれたことで、その布をはずしていくのがいい。少ずつ明青は変わっていっているのが分かる。与那喜島の平屋建ての家が並ぶ住宅街とか、静かな海がすごくいい。晴れた朝、おばあの家の庭で、おばあ手作りの沖縄料理を食べるシーンすごく好き。最近行ったバリ島のウブドの朝食の気持ちよさを思い出した。明青の髪を幸が切ってあげるシーンも好き。このシーンは幸が明青の心に自然に入り込んでいく感じがすごくいい。

結局、明青はものすごい一歩は踏み出さないけど、彼なりの一歩は踏み出す。ラストはちょっとご都合主義的だけど、前半の雰囲気と合っていたと思う。カフーを待ちわびているなら待ってないで行動しろというのが、最近話題の"婚活"なのだろうけれど、そう思ってもできない人もいるわけで。待ってちゃダメと言われると、決死の覚悟で大ジャンプをしないといけない気がするけれど、明青のように人から見れば2~3歩くらいしか歩いていないように見えても、本人にとっては大冒険な事もある。そういう感じは伝わったし、それは良かったと思う。「カフー、アラシミソーリ」ってかわいい言葉だと思う。

玉鉄が何度も着てたApple PieというTシャツがゆるくてツボ。2日続けて着ちゃってたし(笑)


『カフーを待ちわびて』Official site

コメント (8)
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