公認ブロガーをさせていただいているシネトレさんから出版された"Cinema Table"で紹介されていた映画。映画に登場した料理のレシピ本で、映画をイメージした写真も素敵で、ストーリーも紹介されているかわいらしい本。この中で、Birthday Cakeのコーナーで取り上げられていたのが、この映画のマジパンのケーキ。直径20cmくらいのホールケーキにたくさんのロウソク。とっても気になっていた。TSUTAYAでDVDを発見したので借りてみた。
「1950年代スウェーデンのある会社が主婦のキッチンでの導線を調査。さらに統計を取ろうと、独身男性の導線調査に乗り出す。隣国ノルウェーの静かな農村に1人で住む老人イザックのもとには、堅物そうな調査員フォルケがやって来る。フォルケもまた独身男性。初めは観察されることに反発するイザックだったが…」という話のノルウェー映画。ノルウェーの映画って見たことあっただろうか… あるかもしれないけど、咄嗟には出てこない。
調査自体は実際に行われたそうだけど、これはおもしろい。調査員達は被験者宅の庭に止めたトレーラーハウスで寝起きして、キッチンに運び込んだプールの監視台みたいなイスに座って、1日中被験者のキッチンでの行動を記録する。被験者とは話したり、交流したりしてはいけないというルール。人ごとだと面白いけど、実際にはイヤだな(笑) どんな人が来ても最初は戸惑うとは思うけれど、フォルケはホントにつまらなそうなオジサンだし(笑) だけど、このキャスティングは絶妙。この人と1日中キッチンに居るのは辛いかも。
一応、この調査の被験者は応募者から選ばれている。最初は嫌がって姿を現さなかったイザックも、自ら応募した。応募しておいて嫌がるとは何だと思うけれど、馬をくれると言われたからなのだそう。それなのに、もらったのは木製の小さな馬のオモチャ。このオモチャ自体はかわいいけれど、独身男性にそれはないだろうと(笑) まぁ、頭にくる気持ちは分かる。だけどイザックが隠れたのは、頭にきたからだけでないと思う。田舎で1人暮らしをしている老人にありがちなシャイで頑固、そして少々偏屈な感じがして、すごく面白い。嫌な態度に見えるようには描いていない。フォルケと上司が困ってイザックの寝室の窓にハシゴをかけて説得するシーンなどは、イザックに翻弄されているオジサン2人の姿がかわいらしくて、クスッと笑ってしまう。
この映画のトーンは全体的にこんな感じで、大事件が起こるわけでもなく、セリフとかもあまりなく、沈黙とか気まずい間みたいなところをクスッと笑ったり、そこから口には出さない気持ちを感じたりするような映画。『オーストラリア』みたいないわゆる大作映画も好きだけれど、私はこんな感じの映画の方が好きなんだと思う。セリフや映像からの情報は表面的にはむしろ少ない。でも、よく見ると役者の表情や、例えばセットの微妙な変化などで、主人公達の心の動きが分かる。そして、伝えたいことは、その声高でない語り口から、直ぐにはハッキリと言葉にはならないけれど、心の中にほっこりと伝わってくるような。そういう映画が好きなんだと思う。まぁ、私のことはいいか(笑)
話を戻して(笑) 被験者イザックも、調査員フォルケも独身男性。そして、若くはない。2人の過去や個人的な事はほとんど語られない。もちろんフォルケはイザックのデータを持っているとは思うけれど、こちら側にはほとんど紹介されない。現在、独身だけど以前は結婚していたのか。それともずっと独身なのか。日本人の感覚では1人で住むには広い家や、そこそこ片付いているキッチン。壁に作りつけられた棚にきれいに並べられたお皿を見れば、なんとなく以前は奥さんがいたような気がしないでもないけれど、今現在の住まいには女性らしさが全く感じられないので、少なくとも10年くらいは1人で暮らしているように思う。もちろんこれは私の勝手な解釈だけど、多く語られないからこそ、想像が膨らむ。そうゆうのがいい。
フォルケについてはもっと謎。大好物のスウェーデン名物ニシンの漬物を送ってくれる叔母がいるけれど、家族はいない。人は良いけど、真面目で社交的なタイプではなさそう。堅物そうに見える彼が、狭いトレーラーハウスの中で、ウキウキとニシンを食べるシーンがいい。この人にも楽しい瞬間はあるんだと思ったりする。って失礼か(笑) とにかくイザックもフォルケも少しとっつきにくい感じはするけれど、実はフツーのおジイちゃんとオジサン。そんな2人がキッチンで観察し、観察される。そこに気まずい空気が流れる。人って多分、自分のテリトリー内に見ず知らずの人が入ってきたら、それを承知していたとしても戸惑うと思う。まして、交流してはいけないというルール。人はコミュニケーションをとって生きていく動物。それは相手を思いやるというよりも、むしろ自分の居場所を心地よくするための手段なのじゃないかと思う。だから、結局2人は交流してしまう。きっかけはほんの小さなこと。双方からの一方通行だった2人の間に接点が生まれる。ぎこちなく始まったそれは、堰を切ったようにどんどん大きく深くなっていく。その感じが微笑ましい。特にイザックのフォルケに対する気持ちがかわいい。
イザックは外見もあまり気にせず、友人も電話を5コール鳴らした後コーヒーを飲みにやってくるグラントぐらいしかいないようだ。外出もほとんどしない。一見すると偏屈な老人という印象だけど、病気の飼い馬に愛情を注ぐ姿からは、本当は情が深いのにシャイで不器用な人なんだということが伝わってくる。フォルケと友達になると、彼の事が気になって仕方がない。まるで恋する少女のよう(笑) でも、その姿が見ていてかわいくて、そして切ない。
そのかわいくて切ない感じは、フォルケに嫉妬してしまう友人グラントにも言えること。フォルケにあげるんだと、嫌いだったスウェーデンのタバコをうれしそうに買うイザックを見送る姿や、誕生日ケーキのシーンは切ない(涙) そして彼はとんでもない行動に出る。この行動自体は犯罪。もし、そのまま実行されたら大惨事だった。普通に考えて、いい年をした大人が、友人を取られたからといって起こした事件だと報道されていたら、大人になりきれていない何とバカな人物かと思うと思う。でも、あの切ない表情を見てしまうと、この行動も切なく、そしてどこか滑稽に感じる。えぇっと思いながらも、クスッと笑ってしまうのは、彼を見守る監督の目線が温かいこともあるけれど、これは良く出来たブラック・ユーモアでもあるんだと思う。ゴトゴト揺れるトレーラーハウスで何も知らずに眠るフォルケ。よく考えるとこのシーン、最初の方で伏線がはってあった。
そして、イザックはフォルケを救う。その事もフォルケは知らないのもいい。その救出シーンは本当に切なくてかわいらしくて泣ける。そして、その事がさらに切ないシーンの伏線になっている。大切な者のために、大切なモノを犠牲にする。愛情ってそういうことなんだと思ったりする。そして、フォルケも大切だったかは分からないけれど、代償を払うことになる。それはイザックの願いを叶えるためだけじゃない。それは自分のためでもある。イザックがフォルケを救うのも究極を言えば自分のためでもある。情けは人のためならずというのとはちょっと違うし、自分達の中にはその気持ちは明確にはなっていないと思うけれど。ラストも切ない。切なくてそして、本当のラストに少しホッとする。
役者さんたちは良かった。自身の出世と保身のため、規則にしばられている上司役とか、キャラの立った脇役の人達も面白かったけれど、友人グラント役の人と、イザック役のヨアキム・カルメイヤー、フォルケ役のトーマス・ノールストロームの3人は本当に良かった。とにかく3人とも本当に普通のオジサン。特に、グラントとイザックは田舎の素朴なオジサンという感じがかわいらしかった。そして、そのシャイで素朴なかわいらしさが、とってもとっても切ない。それがすごくいい。
フォルケのトーマス・ノールストロームの配役は絶妙。フォルケは独身のサラリーマン(調査員だけど・・・)で、たぶんスウェーデンというか、本来の自分の居場所に帰ったら、サエない普通のオジサンなのだろう。まぁ、別にここにいてもサエてはいないのだけど(笑) 中年独身男性の彼は、味気ない生活を送っているのだろう。だけど、田舎で1人で暮らすイザックにとっては、調査員という彼の姿に少し憧れの対象でもある気がする。都会から来たエリート調査員というような・・・ ホントはそんなでもないと思うけど(笑) それくらい、フォルケの事を見守っちゃっている(笑) 後に、実はイザックが覗き穴からフォルケを観察していたというオチ(※ストーリーの主旨としては、それがオチという話ではない)出てくる。そいう事がお互いの理解を深めたのだと思うけれど、その対象がフォルケというのが面白い。そして、トーマス・ノールストロームの腕カバーをして市役所で働いてるような風貌が、フォルケにとっても合っている。
イザックの田舎風のキッチンがいい。結構広くて、真ん中にドーンと大きなテーブルがある。手前右側にフォルケの監視台があって、そこを視点とすると、左側に流しとかキッチン設備がある。ここは実はほとんど使われない。だからどんな設備なのか実はあまり印象に残らない、それよりも突き当たりにある洗面台とか、右側の壁に作りつけられたお皿の飾り棚とか、そういうものが素朴でかわいい。でも、かわいすぎなくて絶妙。イザックがだんだんフォルケに近づいてくるのもいい。徐々にテリトリーに入ってくる感じ。フォルケのトレーラーハウスがいい! 少し丸みがある黄緑色の外観がいい。'50~60年代のミッドセンチュリー・モダン的な、でもどこか北欧的なデザイン。内装はむしろ古い感じでいい。狭いながらも結構快適そうなのがいい。
そして、この映画を見るきっかけとなったマジパンのケーキのシーン! もう素敵だった。フォルケの狭いトレーラーハウスのソファーに並んで座って、素朴なケーキにたくさんのロウソクを立ててイザックの誕生日を祝う。初めてイザックがフォルケのテリトリーに入った瞬間。きっと誕生日を祝ってくれたことよりも、そのことの方がうれしかったんだと思う。そんなに細かく自分の気持ちをいちいち分析してはいないと思うけれど(笑) 自分を受入れてくれた事、それがうれしい。このシーンはホント好き。それは、フォルケが1人でニシンを食べるシーンや、上司と2人並んで協力的ではなかった頃のイザックの事を報告するシーンとの対比となっていていい。かわいくて切ない。
95分と短いけれど、どのシーンも好き。とにかく切なくてかわいい。キッチン・ストーリーというけれど、食事のシーンや料理をするシーンはほとんど出てこない。イザックは観察されるのを嫌って寝室で調理してたし(笑) でも"Cinema Table”にこのマジパンのケーキが選ばれた理由はとっても良く分かる。かわいらしくて切ない。いい映画だった。

調査自体は実際に行われたそうだけど、これはおもしろい。調査員達は被験者宅の庭に止めたトレーラーハウスで寝起きして、キッチンに運び込んだプールの監視台みたいなイスに座って、1日中被験者のキッチンでの行動を記録する。被験者とは話したり、交流したりしてはいけないというルール。人ごとだと面白いけど、実際にはイヤだな(笑) どんな人が来ても最初は戸惑うとは思うけれど、フォルケはホントにつまらなそうなオジサンだし(笑) だけど、このキャスティングは絶妙。この人と1日中キッチンに居るのは辛いかも。
一応、この調査の被験者は応募者から選ばれている。最初は嫌がって姿を現さなかったイザックも、自ら応募した。応募しておいて嫌がるとは何だと思うけれど、馬をくれると言われたからなのだそう。それなのに、もらったのは木製の小さな馬のオモチャ。このオモチャ自体はかわいいけれど、独身男性にそれはないだろうと(笑) まぁ、頭にくる気持ちは分かる。だけどイザックが隠れたのは、頭にきたからだけでないと思う。田舎で1人暮らしをしている老人にありがちなシャイで頑固、そして少々偏屈な感じがして、すごく面白い。嫌な態度に見えるようには描いていない。フォルケと上司が困ってイザックの寝室の窓にハシゴをかけて説得するシーンなどは、イザックに翻弄されているオジサン2人の姿がかわいらしくて、クスッと笑ってしまう。
この映画のトーンは全体的にこんな感じで、大事件が起こるわけでもなく、セリフとかもあまりなく、沈黙とか気まずい間みたいなところをクスッと笑ったり、そこから口には出さない気持ちを感じたりするような映画。『オーストラリア』みたいないわゆる大作映画も好きだけれど、私はこんな感じの映画の方が好きなんだと思う。セリフや映像からの情報は表面的にはむしろ少ない。でも、よく見ると役者の表情や、例えばセットの微妙な変化などで、主人公達の心の動きが分かる。そして、伝えたいことは、その声高でない語り口から、直ぐにはハッキリと言葉にはならないけれど、心の中にほっこりと伝わってくるような。そういう映画が好きなんだと思う。まぁ、私のことはいいか(笑)
話を戻して(笑) 被験者イザックも、調査員フォルケも独身男性。そして、若くはない。2人の過去や個人的な事はほとんど語られない。もちろんフォルケはイザックのデータを持っているとは思うけれど、こちら側にはほとんど紹介されない。現在、独身だけど以前は結婚していたのか。それともずっと独身なのか。日本人の感覚では1人で住むには広い家や、そこそこ片付いているキッチン。壁に作りつけられた棚にきれいに並べられたお皿を見れば、なんとなく以前は奥さんがいたような気がしないでもないけれど、今現在の住まいには女性らしさが全く感じられないので、少なくとも10年くらいは1人で暮らしているように思う。もちろんこれは私の勝手な解釈だけど、多く語られないからこそ、想像が膨らむ。そうゆうのがいい。
フォルケについてはもっと謎。大好物のスウェーデン名物ニシンの漬物を送ってくれる叔母がいるけれど、家族はいない。人は良いけど、真面目で社交的なタイプではなさそう。堅物そうに見える彼が、狭いトレーラーハウスの中で、ウキウキとニシンを食べるシーンがいい。この人にも楽しい瞬間はあるんだと思ったりする。って失礼か(笑) とにかくイザックもフォルケも少しとっつきにくい感じはするけれど、実はフツーのおジイちゃんとオジサン。そんな2人がキッチンで観察し、観察される。そこに気まずい空気が流れる。人って多分、自分のテリトリー内に見ず知らずの人が入ってきたら、それを承知していたとしても戸惑うと思う。まして、交流してはいけないというルール。人はコミュニケーションをとって生きていく動物。それは相手を思いやるというよりも、むしろ自分の居場所を心地よくするための手段なのじゃないかと思う。だから、結局2人は交流してしまう。きっかけはほんの小さなこと。双方からの一方通行だった2人の間に接点が生まれる。ぎこちなく始まったそれは、堰を切ったようにどんどん大きく深くなっていく。その感じが微笑ましい。特にイザックのフォルケに対する気持ちがかわいい。
イザックは外見もあまり気にせず、友人も電話を5コール鳴らした後コーヒーを飲みにやってくるグラントぐらいしかいないようだ。外出もほとんどしない。一見すると偏屈な老人という印象だけど、病気の飼い馬に愛情を注ぐ姿からは、本当は情が深いのにシャイで不器用な人なんだということが伝わってくる。フォルケと友達になると、彼の事が気になって仕方がない。まるで恋する少女のよう(笑) でも、その姿が見ていてかわいくて、そして切ない。
そのかわいくて切ない感じは、フォルケに嫉妬してしまう友人グラントにも言えること。フォルケにあげるんだと、嫌いだったスウェーデンのタバコをうれしそうに買うイザックを見送る姿や、誕生日ケーキのシーンは切ない(涙) そして彼はとんでもない行動に出る。この行動自体は犯罪。もし、そのまま実行されたら大惨事だった。普通に考えて、いい年をした大人が、友人を取られたからといって起こした事件だと報道されていたら、大人になりきれていない何とバカな人物かと思うと思う。でも、あの切ない表情を見てしまうと、この行動も切なく、そしてどこか滑稽に感じる。えぇっと思いながらも、クスッと笑ってしまうのは、彼を見守る監督の目線が温かいこともあるけれど、これは良く出来たブラック・ユーモアでもあるんだと思う。ゴトゴト揺れるトレーラーハウスで何も知らずに眠るフォルケ。よく考えるとこのシーン、最初の方で伏線がはってあった。
そして、イザックはフォルケを救う。その事もフォルケは知らないのもいい。その救出シーンは本当に切なくてかわいらしくて泣ける。そして、その事がさらに切ないシーンの伏線になっている。大切な者のために、大切なモノを犠牲にする。愛情ってそういうことなんだと思ったりする。そして、フォルケも大切だったかは分からないけれど、代償を払うことになる。それはイザックの願いを叶えるためだけじゃない。それは自分のためでもある。イザックがフォルケを救うのも究極を言えば自分のためでもある。情けは人のためならずというのとはちょっと違うし、自分達の中にはその気持ちは明確にはなっていないと思うけれど。ラストも切ない。切なくてそして、本当のラストに少しホッとする。
役者さんたちは良かった。自身の出世と保身のため、規則にしばられている上司役とか、キャラの立った脇役の人達も面白かったけれど、友人グラント役の人と、イザック役のヨアキム・カルメイヤー、フォルケ役のトーマス・ノールストロームの3人は本当に良かった。とにかく3人とも本当に普通のオジサン。特に、グラントとイザックは田舎の素朴なオジサンという感じがかわいらしかった。そして、そのシャイで素朴なかわいらしさが、とってもとっても切ない。それがすごくいい。
フォルケのトーマス・ノールストロームの配役は絶妙。フォルケは独身のサラリーマン(調査員だけど・・・)で、たぶんスウェーデンというか、本来の自分の居場所に帰ったら、サエない普通のオジサンなのだろう。まぁ、別にここにいてもサエてはいないのだけど(笑) 中年独身男性の彼は、味気ない生活を送っているのだろう。だけど、田舎で1人で暮らすイザックにとっては、調査員という彼の姿に少し憧れの対象でもある気がする。都会から来たエリート調査員というような・・・ ホントはそんなでもないと思うけど(笑) それくらい、フォルケの事を見守っちゃっている(笑) 後に、実はイザックが覗き穴からフォルケを観察していたというオチ(※ストーリーの主旨としては、それがオチという話ではない)出てくる。そいう事がお互いの理解を深めたのだと思うけれど、その対象がフォルケというのが面白い。そして、トーマス・ノールストロームの腕カバーをして市役所で働いてるような風貌が、フォルケにとっても合っている。
イザックの田舎風のキッチンがいい。結構広くて、真ん中にドーンと大きなテーブルがある。手前右側にフォルケの監視台があって、そこを視点とすると、左側に流しとかキッチン設備がある。ここは実はほとんど使われない。だからどんな設備なのか実はあまり印象に残らない、それよりも突き当たりにある洗面台とか、右側の壁に作りつけられたお皿の飾り棚とか、そういうものが素朴でかわいい。でも、かわいすぎなくて絶妙。イザックがだんだんフォルケに近づいてくるのもいい。徐々にテリトリーに入ってくる感じ。フォルケのトレーラーハウスがいい! 少し丸みがある黄緑色の外観がいい。'50~60年代のミッドセンチュリー・モダン的な、でもどこか北欧的なデザイン。内装はむしろ古い感じでいい。狭いながらも結構快適そうなのがいい。
そして、この映画を見るきっかけとなったマジパンのケーキのシーン! もう素敵だった。フォルケの狭いトレーラーハウスのソファーに並んで座って、素朴なケーキにたくさんのロウソクを立ててイザックの誕生日を祝う。初めてイザックがフォルケのテリトリーに入った瞬間。きっと誕生日を祝ってくれたことよりも、そのことの方がうれしかったんだと思う。そんなに細かく自分の気持ちをいちいち分析してはいないと思うけれど(笑) 自分を受入れてくれた事、それがうれしい。このシーンはホント好き。それは、フォルケが1人でニシンを食べるシーンや、上司と2人並んで協力的ではなかった頃のイザックの事を報告するシーンとの対比となっていていい。かわいくて切ない。
95分と短いけれど、どのシーンも好き。とにかく切なくてかわいい。キッチン・ストーリーというけれど、食事のシーンや料理をするシーンはほとんど出てこない。イザックは観察されるのを嫌って寝室で調理してたし(笑) でも"Cinema Table”にこのマジパンのケーキが選ばれた理由はとっても良く分かる。かわいらしくて切ない。いい映画だった。