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【cinema】『余命1ヶ月の花嫁』(試写会)

2009-04-30 00:20:08 | cinema
'09.04.24 『余命1ヶ月の花嫁』(試写会)@ニッショーホール

yaplogで当選。正直に言うと、闘病を描いた実話ベースの作品はあまり積極的に見たいとは思わない。もちろん全然、否定するつもりはない。でも、どうしてもドキュメンタリーのようになってしまう気がする。そして何より見ていて辛いから。でも、試写会に応募したのは乳ガンのことを知りたかったから。そして瑛太くんが出ていたから(笑)

「イベント・コンパニオンの千恵は、イベント会場で広告代理店に勤める太郎と知り合う。太郎から交際を申し込まれるも、戸惑う千恵。結局、付き合い始めた2人は太郎のマンションで同棲を始める。千恵の父親にも会い順調。幸せな時を過ごしていた。そんな時、千恵が乳ガンであることが分かるが…」という話。これは悲しい。案の定号泣。映画の主人公でもある長島千恵さんは24歳の若さでこの世を去っている。その事実を知っている以上、これは冷静に映画として見れないので、感想を書くのがとっても難しい。

テレビで放送されたドキュメンタリーを見たbaruによると、とっても忠実に映画化されているらしいので、別のイベントに出る千恵さんが、間違えて太郎さんのイベント会場に来てしまったというのもホントなんだろうか? だとしたら、運命の出会いってあるんだなと思ってしまう。それくらい2人の関係がいい。もちろん、多少脚色している部分はあるとは思うけれど、お互いがお互いを思いやる姿がホントに素敵で、そういう相手との出会いが、千恵さんの短すぎる人生にあったことが、心からよかったと思ったし、見ていて救いだった。そして、正直うらやましかった。もちろん、恋愛の部分だけを見て、今こうして生きている自分がうらやましいなんて、バチが当たるけれど…。でも、数年前に辛い経験した身としては、病床にあっても結婚したいと思われるというのは、女性として素直にうらやましい。それだけ千恵さんが素敵な女性だったのだと思う。

太郎さんと出会った直後、千恵さんは乳ガンであることを告げられる。このシーンはなし。お母様をやはりガンで亡くしている千恵さんは、ガンと闘うことの意味をよく理解している。だから、太郎さんには何も告げなかった。何も告げずに楽しく幸せな時を過ごしていたのは、太郎さんを騙しているようで辛かっただろうとは思うけれど、そうしなければいられなかったのだと思う。それは太郎さんを愛していたからだし、そうしていなければ不安でいられなかったからだろうし、何より自分が1番幸せだったからだと思う。太郎さんに病気の事が知られてしまった日、彼に別れを告げるシーンでは、セリフ以上にそういう言葉にならない気持ちが伝わってきた。

乳房の切除手術を受けた後、屋久島へ向かう千恵。このエピソード自体は映画オリジナルだそうだけど、女性として乳房を失うという悲しみを癒すシーンとしては、屋久島の神秘的な自然は効果的。もちろん、簡単に整理のつくことではないので、本人としては辛いだろうと思うけれど、見ている側は癒される場面。食堂のオバちゃんとの何気ない会話に、癒されつつも涙…。病気になってしまうと屋久島の縄文杉を見に行くことが出来なくなるってことは想像できるけれど、こういう何気ない会話をするという日常も失うってことなんだと改めて理解。そして、ここで千恵と太郎は改めて絆を取り戻す。

そして、再発。千恵さん以外のお父さん、叔母さん、そして太郎さんに余命が告げられる。ここからはずっと病室での闘病生活ということになる。その辺りきちんと描かれているし、千恵さん役の榮倉奈々も頑張っていたけれど、映画としては彼女が苦しんでいる姿そのものよりも、千恵さんと太郎さんの関係を描くことに比重を置いているため、そんなに悲痛なものではない。でも、辛さはきちんと伝わってくる。太郎さんは病室に泊まり込み闘病を支える。自分が苦しんでいる姿を見せたくないという人もいると思うけど、千恵さんには逆に辛い姿は見せまいという励みになっていたように見えた。それは、千恵さんが友人達と焼肉に出かけて留守の時、千恵さんのお父さんの貞士さんが絞り出すように太郎さんに言う「ありがとう」に表れている。このシーンは泣けた。

そして"花嫁"のシーン。ここが最大の見せ場だけど、正直そんなにグッと来なかった…。何でだろう? 女性に生まれたからには1度は憧れる花嫁姿。写真だけでも撮らせてあげようと、太郎さんとお友達が企画、サプライズも用意してあって、幸せそうな笑顔に心からよかったと思ったのだけど…。それよりもむしろ、会場である教会に向かう車の窓から、久しぶりに見る外の景色を愛おしそうに眺める姿の方が切なかった。見ている側も千恵さん本人も、この何気ない風景をもう彼女が見ることはないことを知っているから。

キャストは実在の人物を上手く演じていたと思う。この映画のもとになったドキュメンタリーは見ていないので、キャスト達がご本人に似ているのかは不明だけど、少なくともベタな感じにはなっていなかった。上手く言えないけど…。父親役の柄本明はさすがの存在感。突然、娘が連れてきた彼氏に戸惑いながらも不器用に受け入れる姿がいい。そして何より「ありがとう」のシーンが素晴らしい。お父さんが登場した瞬間から、この人は最愛の妻と娘をガンで失ってしまうのかと思うと切なかった。柄本明のお父さんは、決して饒舌ではないし、感情をあまり表す人ではないけれど、この「ありがとう」の瞬間に溢れ出た悲しみに心打たれた。

瑛太くんはやっぱり上手い。本当の太郎さんのことは分からないけれど、誤解を恐れずに書くと、この役かなり少女マンガのヒーロー的なタイプなのです。彼女が末期ガンであるということがなかったら、かなり照れてしまうようなセリフが多い。あれ何て言うのか分からないけど、キャッチボールのようなことをしながら「千恵のお父さんに会いたいな~」って言ったりとか。だけど、きっと女性だったら言われたいし、言ってほしい。そういうセリフが自然に入ってきたのは瑛太くんの演技のおかげ。女性目線で見れば、結婚式をしてくれる彼より、お父さんといい関係を築ける彼の方が素敵。そういう部分も自然で良かった。何となく日本人が演じると照れてしまう、幸せいっぱいの恋愛時代の演技も良かった。またこんな恋愛したいと思ったし(笑)

榮倉奈々はちゃんと演技しているところ初めて見たけど、よかったんじゃないかと思う。かなり病状が進行した段階で、体を起こしたりする時に、若干動きが早いのは気になったけれど、その辺りも頑張っているけど、自分が思っているより早く動いてしまっているのかもしれない。三味線の師範の資格があるらしいけれど、千恵さんのお父さん貞士さんは実は三味線の師匠。2人で三味線を弾くシーンは印象的。ラストのビデオレターのシーンはすごくよかった。悲しくて号泣。

乳ガンの発症率は年々上がっている。乳ガンは唯一自分で発見でき、早期発見できれば命が助かる可能性が高い。千恵さんも実は胸のしこりに気づいていたのに放置してしまっていたため、手遅れとなってしまった。ネットなどでも情報が少なかったこともあり、もっと若い人達に乳ガンの事を知って欲しいとドキュメンタリーの取材に応じたとのことだった。このドキュメンタリーが映画になったわけだけど、乳ガンそのものについてはそんなに語られていない。でも"死"についてすごく考えさせられた。人は誰でもいずれ死ぬ。頭では分かっているけど、普段あまり意識していない。もちろん千恵さんもそうだった。だけど、死は急にやって来ることもある。そういうのが伝わってきた。

前半の2人の恋愛シーンをキラキラに描いたことで、2人の運命の苛酷さがより伝わったし、その運命に立ち向かう絆の強さもすんなり入ってきた。毎日チャリ通している身としては、夜中の激走シーンは「迷惑だな(笑)」と思いつつ、楽しい雰囲気が伝わってきた。実際は迷惑だけど(笑)ドキュメンタリー放送、書籍化、映画化と進み、千恵さんやの経歴や、太郎さんや、お友達たちに関していろいろ言われているようだけど、特別ご本人達を擁護するつもりはないし、全部本当だったとしても、個人的には非難するような事でもないように思う。仮に、美化している部分があったとしても映画としてはありだと思う。ただ千恵さん本人が残した言葉がきちんと伝わればいいんだと思う。

みなさんに明日が来ることは奇跡です。
それを知っているだけで、日常は幸せなことだらけで溢れています。


映画を見た後では、かなり重いけれど、しっかり心に刻んで頑張っていこうと思った。
心から、千恵さんのご冥福をお祈りします。


『余命1ヶ月の花嫁』Official site

コメント (4)
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