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【cinema】『シャッターアイランド』(試写会)

2010-04-10 00:09:23 | cinema
'10.04.01 『シャッター アイランド』(試写会)@中野サンプラザ

yaplogで当選。いつもありがとうございます。これは予告編見た時から見たかった。今回は"超吹替え版"とのことで、日本語吹替えでの鑑賞。普段、吹替えではめったに見ないので、どんな感じなのか楽しみ。決算期なので行けるか心配だったけど、頑張って行ってきた。18:15中野着。サンプラザ前は長蛇の列! 入れるのか心配したけど、中に入ってみれば空席もあるくらいで、左端ではあるけれど無事2階席最前を確保。

*ネタバレすると思います(笑)

「ボストン沖に浮かぶシャッターアイランド。精神病犯罪者を収容した厳戒体制の施設から、1人の女性が失踪した。連邦保安官のテディは、島に入り捜査を開始するが、誰もが本当のことを言わず、何かを隠している様子。嵐で島に閉じ込められたテディは、本来の目的である妻を殺害した放火犯レディスを捜すが…」という話。原作は『ミスティック・リバー』のデニス・ルヘイン、監督はマーティン・スコセッシ。サスペンスものではあるけれど、チラシなどで宣伝されているとおりオチがある。終演後配られた"謎解きチェックシート"にも幾つかポイントが書かれていたけれど、そのオチに結びつく伏線もきちんと張りつつ、失踪した女性の謎や、放火犯レディスの行方、島で行われていること、大きな陰謀の疑い、そしてテディの過去など、様々な要素が盛り込まれていて、飽きさせない。度々盛り込まれる回想シーンやテディの悪夢など、少し混乱する部分もあるけれど、上手くまとめられているので、オチまで一気に見てしまう。おもしろかった。

まずは"超吹替え版"について。確かに最近、字幕についていろいろ言われることが多いように思う。以前に比べれば英語が分かる人はずいぶん増えたし、原作のあるものは読み込んでいるファンも多い。翻訳者の意訳で字幕をつけてしまうと、違和感を感じてしまう。事実『ロード・オブ・ザ・リング』は原作ファンには吹替え版の方が評判が良かったりする。かといって、忠実に訳そうとしてあまりに長いと字幕を追うのに精一杯で映画に集中できなくなってしまう。吹替えならば情報をたくさん入れられるので、謎解きサスペンスなどにはいいのではないかということで、今回の"超吹替え版"となったらしい。うーん。確かに謎解きには集中できるのだけど、主演のレオナルド・ディカプリオをはじめ、マーク・ラファロ、ベン・キングスレー、マックス・フォン・シドーなどの名優の演技を聞きたいかも。そして刑事モノだからといってマーク・ラファロが「~っすよ」って話すのはなんか違うかな。まぁ、それも伏線ならいいと思うのだけど… 字幕を追う必要がないので、画面に集中できるのは確かなんだけど、字幕版で見ると違う映画のように感じるような気もする。

オチについては明記するのはやめておくけど、この手の精神病がらみの捜査モノを何本か見ていれば、何となく想像がつくと思う。"謎解きチェックシート"には、オチについては秘密にしておいて欲しいと書いてあったし、映画としてもやっぱりそこが見せ場ではあるけれど、その事実自体にはそんなに衝撃は受けなかった。そうなった背景については、細かい部分までは分からなかったけれど、見せられていたこととは違う側面があるのだろうと思っていたし、これもまた衝撃的ではなかった。前にも書いたけど、オチにしても、背景にしても特別目新しくはない。そこに至るまでの過程自体も見たこともある気がするけど、その描き方が上手いので、混乱はするけれど飽きたりはしない。もちろん作品の構成上オチは重要なので、そこでビックリしてくれないと意味がないだろうけれど、見せたいのはそこじゃない。見せたいのはテディと一緒に味わう混乱。そして、冒頭に説明されたとおり"錯覚"。

こういう作品の特性として、後から考えると別の真実が見えてきたり、伏線だったんだと分かったりすることは多い。そのいくつかは"謎解きチェックシート"に書いてあったりするけれど、個人的にヒントになったのはテディが度々見る悪夢と、嵐で島に閉じ込められてしまうところ。これを書いてしまうとネタバレになってしまう気がするけど、見終わった後、語り口は違うけど『アイデンティティ』に似ているなと思ったので。多分、治療法としてあるのかなと… でも、嵐まで起こしたのかな? どこまで、見ていたことが真実なのか… 冒頭に両側が矢印状になっている直線と、その矢印部分が逆を向いた直線が映し出される、目の錯覚の例としてよく見かけるアレ。実は2本は同じ長さ。でも、矢印状の方が短く感じる。要するに人間は錯覚するし、見たいものしか見ていないという説明が入る。なるほど。その通り(笑) オチ自体は分かっても、アレは実はこういうことだったのかと、正解をいちいち説明してくれるわけではないけど、自分で納得できるのも楽しい。でももしかしたら、そのオチにしちゃえば何でもありじゃんと感じる人もいるかも。個人的にもちょっとそんな気がしないでもないけど、むしろ見ている時に感じた違和感が解消されて納得したりする。例えば、車に乗っているシーンで、窓の外の景色が妙に合成っぽい感じとか。なるほど現実じゃないからなのかと思ったりする。まぁ、深読みし過ぎで、実は浮いてしまっただけかもしれないけれど(笑) でも、多分狙いなんだと思うんだけどな。

1954年が舞台となっている。いくつか見るテディの悪夢のうちの1つは第二次大戦中の記憶。ナチスの強制収容所の解放に立ち会った。そして、度々出てくる妻の幻影。夢の中の妻はいつも悲しそうで、なぜか濡れている。妻がテディがアルコール依存症であるかのようなことを口にするし、彼がお酒をあおっているシーンも出て来る。それは伏線でもあるけど、PTSDを描きたいのかなと思ったりする。今だに戦争はなくなっていない。彼の戦争体験が、その後の人生において重大な影響を及ぼしたことは間違いない。アルコールに走ったのもそのためかと。それを押し付けがましくなく、描いている。これを書いてしまうのもネタバレなのかもしれないけれど、ここは重要な伏線。この伏線をしっかり描いているのに、サラリと見せているのが上手い。そういうネタを仕込む的なものから、主人公の性格描写など細かいところまで張り巡らされている。マーク・ラファロがいつも見守り目線なこととか…

この時代に設定したことの最大の理由は、戦後アメリカでさかんに行われたロボトミー手術のことを描きたかったんだと思う。ロボトミーというかわいらしいネーミングにも関わらず、手術自体は人権を無視したもの。ロボとはロボットとは関係なく、前頭葉とかの"葉"のことで、トミーとは"切断する"という意味なのだそう。こめかみ辺りに穴を開けて、脳の一部を切除する手術をすると、狂暴化した精神病患者がおとなしくなるとのことで、戦後のこの頃アメリカが中心となって研究が進められたのだそう。脳については今だに解明されていない部分が多い上に、手探りで行うかなり乱暴な手術だったらしく、今ではほとんど行われていない。実際に行われたと考えると人道的にどうかと思うけれど、映画の題材として取り上げたくなる気持ちは分かる。詳細については今回初めて調べたけれど、ロボトミー自体は以前から映画で見て知ってた。ジョニデ主演の『フロム・ヘル』でも、イアン・ホルムがロボトミー手術をされていた。この映画の中ではテディがこの島に来たホントの目的のうちの1つとなっていて、それが全体的に不安で不気味な感じを演出している。そして同時にオチから目を反らす役割も果たしている。ってこれもネタバレかな(笑)

周囲を海に囲まれた島。南北戦争時代の城塞を利用した病院。そこにいるのは精神を病んだ凶悪犯と、口裏を合わせるかのように真実を語らない職員達。失踪した女性。立ち入り禁止のC棟。ロボトミー手術。謎の灯台。テディの真の目的である放火犯の行方など、サスペンスとしての要素は多くて、やや混乱するけど、その混乱が狙い。混乱して見失ってもイライラしたり、飽きたりはしない。1954年が舞台ということもあって、レトロっぽい画なのもいい。何となくヒッチコックっぽい。前にも書いた車の外の画が浮いて見えるのも、あの時代の手作りの合成って感じを出してるのかなと思ったんだけど、考えすぎかな。でも灯台の螺旋階段はヒッチコックの『めまい』のオマージュだと思う。あの作品も錯覚や思い込みを利用した作品だった。

キャストについては、前にも書いたけど、かなり豪華。キャスティングが上手い。大体、ベン・キングスレーやマックス・フォン・シドーが、特異な精神病院の医師だと聞けば、これは何かしらやってるなと思ってしまう(笑) 2人とも怪演。ベン・キングスレーは人道的な意見を言いながら、実は非人道的なことをしているんじゃないかと思わせて、監督が見せたい方向に導いている。マックス・フォン・シドーはそんなに出演シーンは多くないけど、元ナチスの医師という、これまた怪しい人物を好演。マーク・ラファロは好き! 穏やかにテディを見守るかのような相棒チャックがとっても合ってるし、すごく好き。途中、ある疑念を持つような方向への導きがあるけど、それでも信じたからこそのオチなわけで、それはマーク・ラファロのたたずまいのおかげかなと思う。最後まで彼だけはテディを見守り続ける感じもいい。レオナルド・ディカプリオはかなりのガッチリ感でビックリ。けっこうアクション・シーンもあるし、かなり男くさい。正直、特別好みではないけど、『タイタニック』のジャック役以降の"レオ様"みたいなイメージがあったので驚いた。そもそもは『ギルバート・グレイプ』などで、若手演技派注目されたのに、レオ様と呼ばれ出した頃から、人気が先行してしまい、演技を評価されにくくなってしまった気がする。その辺りのことは本人も気にしているのかなと思う。そんな役作りな気がした。ベイビーフェイスなので、一時期は中途半端な感じになっていた(あくまで個人的見解)けど、この骨太路線がファンにも受け入れられれば、もともと演技は上手いわけだし、いろんな役が出来るんじゃないかな。って上からだけど(笑) 割といつもイライラしているけど、ところどころ伏線となる演技をしている。ラストの決意が哀しい。とはいえ… やっぱり吹替えだと半分は声優さんの演技になってしまう気がする。声優さんたちも良かったし、英語分からないんだけど(笑) でも、マックス・フォン・シドーはドイツ語訛りの英語を話してるらしく、それで彼の過去を暴いたりしてるのに、その辺りが吹替え版だと辛い(涙) そして、前にも書いた「~っすよ」が板についてないのは実は伏線なのかもしれないけど、でも、違和感を感じてしまうとなかなかぬぐえないからなぁ… ということで、役者の演技を楽しみたい作品についてはやっぱり字幕でみたいかも。

というわけで、作品の性質上出来るだけネタバレを避けたので、なんだかよく分からない感想になってしまっているけど、おもしろかった! よく考えるとつじつまが合ってなかったり、そのオチにしたからといって納得いかないぞという部分もある気がする。どこから人為的なのかとか。でも、個人的にはそういう部分は気にならなかった。テディの捜査は全然進まないし、後から考えると最終的には何が目的だったのか分からなくなる。でも、実はそれも伏線。そういうまとまらなかったことが、オチでふに落ちて、なおかつ後から思い出すと、あれはそういうことだったのかと気づいたりして楽しい。大人の謎解きサスペンス。謎は最初に思っていたのと違うけど…

サスペンス映画や、そもそも映画自体がそんなに好きではない人が、ディカプリオ目当てで行ってしまうとガッカリするかも。いろんな意味で意外に汚れてます(笑) ちょっとクラシカルな大人のサスペンスが見たい方はぜひ!

★追記★
他の方の記事を読んでみると、気づかなかったオチがさらにあるらしい! なるほど・・・ ラストの言葉、テディのある決意を示唆しているのだと思っていて、その決意自体は間違いないんだと思うけど、それにはもう一つ重大な意味があったらしい・・・ 全く気づかなかった(涙) まさに錯覚、そして思い込み。「見たいことしか見ない」ってなるほど! 参りました(笑)


『シャッター アイランド』Official site

コメント (8)
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