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【cinema】『アリス・イン・ワンダーランド』

2010-04-27 01:17:05 | cinema
'10.04.17 『アリス・イン・ワンダーランド』@TOHOシネマズ六本木

これはもうホントに映画化のニュースを聞いた時からずっと待ってた! yaplog!さんのおかげで、ファン・イベントでジョニデ&バートン監督にも会えたし、ファンとしては行かないわけにはいかないでしょう! ということで、歯痛にも関わらず座席予約。出遅れてしまったため、前から2列目しか空いてなかった(涙) 3D辛そうだけど頑張る! これを励みに歯痛にも耐えたのだもの… ということで、朝には雪も降ったこの日、UNIQLOのコラボキャミ着用で鑑賞!

*ネタバレありです! そして長文

「19歳のアリスは13年前のワンダーランドでの体験を時々見る悪夢だと思っている。夢見がちなアリスの唯一の理解者で、優しかった父を亡くし寂しい日々。知らないうちに、貴族の孫との結婚話が進み、気づけば婚約発表パーティー会場。おなかの弱い彼から列席者の前でプロポーズ! 思わず逃げ出したアリスは、ウサギ穴に落ち再びワンダーランドへ。しかし、そこは赤の女王が支配するアンダーランドだった…」という話で、ここから先はアンダーランドでのアリスの活躍が描かれる、バートンワールドが展開される。アリスがアンダーランドに足を踏み入れた入口横にある木は『スリーピー・ホロウ』で首なし騎士が出てくる木みたいだ!と思って期待でドキドキしたんだけど…

うーん。ちょっと「不思議の国のアリス」の記憶が曖昧になってしまったのだけど、今回登場のキャラ達は全員原作にも登場するのかな。映画オリジナル・キャストもいるんだろうか? ラスボスはオリジナルっぽいけど… 各キャラがバートン作品にしてはまともというか、おとなしめな印象。マッドハッターにしても見た目は強烈だけど、意外にちゃんとした人なので『チャーリーとチョコレート工場』のウォンカほどのインパクトはない。頭を巨大化した赤の女王も見ているうちにしっくりきちゃったし(笑) 『チャーリー~』も有名な原作の映画化だったけど、やっぱりアリスともなるとそんなにバートン・ワールド全開にもできないのかな。イヤ、もちろんバートン・ワールドではあるんだけど、全開ではなかった気がする。

そのワールド全開でない感じは作品全体にも言える。マッドハッターが実はマッドではないのも、悪役である赤の女王が意外に孤独でかわいそうな人であるのも、特別問題ないと思うんだけど… 多分、今回の主役がアリスであるということも大きいんだと思う。あんまりバカなことはさせられないというか(笑) 19歳のイギリスの良家の娘さんなので、せいぜいラストにビックリダンスを踊るのが精一杯かも。この時代の娘としては、親に反抗するなんて有り得ないことだし、女性が自分の意志で思うように生きるのは難しかった。だからアリスも自分で決断できないと思っている。夢見がちな少女にありがちな、人と違っていることにも不安を感じている。でも、自分の気持ちは守りたい。だから、周囲からは扱いずらい娘だと思われてしまう。そんなアリスの窮屈な感じは伝わってくる。そしてそんな彼女の成長を描いているのだけど、多分やりたかったことは別にあるのかなと思ったりする。

ストーリー的にはいわゆる少女が苦難を乗り越え、成長する姿を見せるということになるんだと思うけど、多分バートン監督がやりたかったのは、アンダーランドを舞台としたロールプレイング・ゲーム。だから、アリスの成長もラスボスに立ち向かえるかにかかっている。結果については、ネタバレも何も、予想どおりなので、あえて書きもしませんが(笑) 最後、インド映画もビックリなくらい、やけに強引に自立した女性になってしまうけど、多分最終ステージに上がったのかと… って、ゲームはスゴイ苦手で、全くやらないからよく知らないけど(笑) 予言の書に描かれたラスボスと戦う救世主アリス。みんな一丸となって予言の日に向かって頑張る姿が描かれるけど、王道中の王道。アリスを本物じゃないと決めつけるキャラがいることすら王道。恐ろしい赤の女王と、優しく美しい白の女王は戦うことになる。この感じも、王道過ぎる感じも、もしから『ロード・オブ・ザ・リング』以降、やたらと作られているロールプレイング系ファンタジーを茶化しているのかなとも思う。予言の書とか唐突に出てくるけど、どういう由来なのか全く説明もないし(笑) そこに書かれている内容も、スゴイ早口でまくしたてながら、ざっくりと語られるだけで、"~の剣"とかのアイテムや、予言の日とかのキーワードも覚えにくい名前なので、そもそも予言はそんなに重要じゃないのかなと… まぁ、バートン調な気もするけれど。



全体的に"毒"が足りないかな… バートン作品といえばポップで一見バカバカしい"毒"の中にある哀しさや、切なさなんだと思う。そもそもポップな毒が足りないので哀しさもあまり引き立たない。アリスのミア・ワシコウスカにはちょっと荷が重くてかわいそうなので、その役は主にジョニデと、赤の女王ヘレナ・ボナム・カーターが担うことになる。2人相変わらず上手いので、それでも哀しさ故の毒を感じさせてはくれるけど、いかんせん弱い… これはやっぱりディズニーだから? 子供にも分かりやすいようにかな。まだ10歳以下と思われるチビッコが「おもしろいね!」って言っていたので、それは成功(笑) バートン作品は子供向け題材であっても、実際は大人が見たら毒の中にある切なさがグッとくるんだけど。『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』を6歳の甥っ子は3歳の頃から大好きだけど、大人が見ると切なさがグッとくる感じっていうか… それはやっぱり毒があるから。

うーん。なんだか酷評してるみたいだけど、やっぱりおもしろかったし、好きではある。ティム・バートン×ジョニー・デップ×アリスとなれば期待値が上がってしまうっていうのもあるんだけど… ファンだから普通に見に行くつもりだったけど、宣伝などで煽り過ぎな気がしないでもない。まぁ、普段あまり映画を見ない人にも見てもらわないと、大ヒットにはならないわけなんで、映画会社としては興味を引くように宣伝するのは当然なんだけど、どうにも『シャッター アイランド』にしても煽り過ぎ。「世界はもうまともではいられない」というけど、意外とまともだからね(笑)

ただ、19歳という大人でもない子供でもない時期に、将来の選択を迫られたアリスが、アンダーランドでの冒険を通して成長する物語としても、王道ではあるけど良く出来ている。王道を踏襲しながら、サラリと描いているので、押しつけがましくないので、すんなり入ってくる。この辺りのさじ加減はさすがに上手いなと思う。ビジュアル的にもやや抑えめな気はしたけど、原作(映画はオリジナルだけど)ファンでも満足できるんじゃないかと思う。その中にバートン・テイストが上手くミックスされている。実は帽子屋が肌が真っ白で赤毛なのは、当時帽子を作るのに水銀を使っていたそうで、水銀中毒の症状なのだそう。ジョニデの役であるマッドハッターはMad as hatter(帽子屋のように狂ってる)からきてるけど、これも水銀中毒によるものなんだとか。映画の帽子屋は身を守るために狂ったふりをしているのだけれど。ニタニタ笑いのチェシャ猫は原作どおりな気がするけどどうだろう? 個人的に好きだったのは、アリスを諭すイモ虫。青っていうのがグッときた! この声はアラン・リックマン。さすがの存在感。

アリスのドレスがカワイイ! 「『アリス・イン・ワンダーランド』の世界展」でも見た、最初に着てた水色のドレスはまだ少女っぽい。ボタンで留めるブーツカバーの見える足首丈。アリスといえばディズニーの水色のパフスリーブのワンピースに白いエプロン(?)というイメージ。そのイメージから水色なのかなとも思うけど、この色と小さなパフスリーブが、アリスがまだ少女であることを表している。だから、婚約者になるかもしれない相手のことより、ウサギの方が気になってしまう彼女が、プロポーズされることに違和感を感じる手助けになっている。それは相手がイケてないからじゃなくて、アリスがまだ少女だから。まぁ、ホントにイケてないけど(笑) その衣装はウサギ穴に落ちて、大きくなり過ぎたり、小さくなったりして着れなくなる。そんな彼女のためにマッドハッターが作ったドレスは袖のない肩出しドレス。この時代の女性は着たことないスタイルに違いない。でもカワイイ。同じ布で作った靴がイイ。そして、とうとう甲冑に身を包む。そこに至るまでの服の感じが、アリスの成長を表している。赤の女王のドレスも、白の女王のドレスも「~世界展」で見たけど、やっぱり実際着用されて動いていると印象が違う。赤の女王の衣装は、赤と黒でトランプ柄モチーフだけど、悪趣味ではない。悪役にしては意外におとなしめ。白の女王はその名のとおり、ウェディングドレスのような純白ドレス。でも、スゴイ毒々しい口紅。それが、いい人に見えて実は…ということの伏線になっている。

他キャラは三月ウサギにしてもそんなに作り過ぎていない。ディズニーのキャラに忠実なのかなという気もしたけど、あんまりハッキリ覚えていない(笑) 赤のトランプの兵隊がカッコイイ! 「~世界展」で気に入った真ん中に顔がある花は、思ったより毒がなかったかな。赤の女王の巨大な頭はイイ。あとサザエさんがお化粧した時みたいなおちょぼ口口紅(笑) 彼女に取り入るため、どこかしらを人より大きくしているおとりまきが、実はっていうのはおもしろい。ラスボス、ジャバウォッキーは結構怖い。『ロード・オブ・ザ・リング』のバルログの方が怖いけど(笑) でも、こっちの方が好き。だって声がサー・クリストファー・リーだから! やっぱりバートン作品にはリー様がいないとね。あの渋い低音で、演じてらっしゃった。



キャストはバートン作品常連ばかりな感じなので、安心感はある。赤の女王ヘレナ・ボナム・カーターはいつもイライラして「首をはねておしまい!」と言いつつも、庭で大きくなってしまったアリスをかわいがる感じなんかは、とっても淋しくてかわいそうな人という役作り。それが悪役としては若干弱かったので、作品全体の毒を薄めてしまった感はあるけど、ラストの滑稽だけど悲しいって感じさせることが、この作品最大の毒を引き立たせている。その辺りはやっぱり上手い。ただ哀しさで言ったら『スウィニー・トッド』の夫人の方が全然良かったけれど、作品自体にあそこまでの毒はないので、それはしかたなし。白の女王アン・ハサウェイはカワイイ女優さんというイメージ。出演作品って見たことあったかな… 何故かずっと小指を立てて、肘を曲げて手を広げたポーズをしている。厚めの唇に黒っぽい赤の口紅。ニコニコしながら毒を吐く感じや、実の姉に下した判決は"死刑"より酷いんじゃないのかという点で、実はこちらの方がくせ者であるという部分も、何となく迫力不足だったかなという気はする。バートン作品としては、実はくせ者であるとか、実は悲しい人であるとかが重要で、しかもできればここはなるべくサラリと、でも大袈裟にやって欲しいのだけど、ちょっとそれは荷が重かったかな… 下手ではないんだけど。クスッとかニヤリとかいう感覚で、その毒を見たいので。

アリスのミア・ワシコウスカがカワイイ。ホントにあの時代の良家のお嬢さんみたい。実は強くて熱く、自分の意志をちゃんと持っているけど、それはよくないことだと言われているため、自信が持てないでいる感じが、クラシカルな顔立ちに合っている。演技は正直、特別上手いと思わなかったけど、バートン監督の毒を担うのはなかなか大変なので仕方ないかも。原作ファンの方にはこのアリスが、あのアリスの19歳の姿としてどう感じられるのか分からないけど、この作品のアリスとしてはよかったと思う。ジャバウォッキーに立ち向かう時ですら、不安顔なのがいい。でもCGを駆使した戦いぶりはスゴイけど(笑)

帽子屋ジョニデはやっぱり上手い。バートン作品の中でも、エドワード・シザーハンズ以来のビックリな外見だけど、内面はかなりまとも。白の女王の軍勢を率いて先頭に立って戦ったりもする。ジャック・スパロウも戦ってたけど。正義のために皆で突撃みたいなジョニデって初めて見る気がする。あのいでたちってこともあるけど、何となく違和感(笑) でも、辛い記憶が甦って呆然としてしまった時の表情とか、アリスに勇気づけられた時の笑顔が、なんだか子供みたいで母性本能をくすぐるのはさすが! あの衣装を着て真面目に演技して、感動させるのもジョニデぐらいでしょう(笑)

このアリスがマッドハッターを勇気づける言葉「あなたは変人だけど、優れた人はみんな変わっている」というのは、アリスが亡き父に言われた言葉。これはいい。それは"個性"と称してて奇抜なことをすることではなくて、自分の内から自然に出てきた発想や気持ちこそが個性であるということ。人と変わっていることがコンプレックスでもあるアリスにとって、変わってないと言われるより、変わっていていいんだって言われることは、何より救いになると思う。これこそ、この作品でバートン監督の言いたいことなんだと思う。

と… 気づけば長文(笑) 何度も書くけど、バートン監督がアリスを撮るなら、もう少し"まともでない" 感じになるのかと思っていたので、物足りない気もするけれど、それはバートン×ジョニデゆえのハードルの高さであって、やっぱり飽きないし楽しい。ポップで毒のある画も、いつもほどではないけれど、アリスの世界をバートン調にしてはいる。ラストやけにあっさりしてしまうけど、ホントに言いたいことは成長後ではないのでいいのかも。バートン作品初めての人には見やすいかも。ダニー・エルフマンの曲がイイ!

『アバター』は見ていないので、3D映画は初めて。ホントに立体なのでビックリ。マッドハッターが立体で見れてうれしかった! IMAXで見たい!


『アリス・イン・ワンダーランド』Official site

コメント (10)
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