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【cinema / DVD】『エメランスの扉』

2013-04-07 00:00:00 | cinema / DVD
・・・『エメランスの扉』ジャパンプレミアム@WOWOW・・・
『エメランスの扉』見た。WOWOWの日本未公開作品を放送するジャパンプレミア。多くを語らない大人な作品。第二次世界大戦で傷つき、共産主義社会で自分を貫こうとした1人の女性と、彼女を理解しつつも救えなかった作家の話。ヘレン・ミレンとマルティナ・ゲデックの演技が素晴らしい! #映画 Posted at 09:46 PM



*ネタバレありです!

「1960年代ブダペスト。女流作家のマグダは向かいに住むエメランスを家政婦として雇う。雇われてはいるものの、エメランスは自分を貫く。20年間自宅に誰も入れない彼女の秘密は・・・」というあらすじだと、第二次大戦のユダヤ人迫害などの話かなと思う。まぁ、彼女の過去についてはそういう側面もあるのだけど、秘密については一見そんなに重くない。ただし、そのことも含めて彼女が守ろうとしたものを考えると、実はこれほど重いものもないのかもしれない。

エメランスは家政婦としては有能だけど、自分が気に入らなければ働かない。エメランスはマグダを気に入った様子。気に入ると勝手に犬の置物などを飾ってしまうところがある。自分に対しては一歩も踏み込ませないし、マグダに対しても踏み込んだりはしないのだけど、次第にテリトリー内に入っていく感じ。でも、それが迷惑に感じつつも、ストーカーのようで気持ち悪いわけではない。不思議な感じ。

隣人の老婆が自殺してしまうけれど、実はエメランスは彼女から相談を受けていた。自殺したい理由についての相談ではなくて、自殺を決めたのでどうしたらいいのかという相談。それについてエメランスは毒は止めておけとか、警察に宛てて遺書を書いておくようになどの指示をしたと毅然とした態度で語る。下手したら自殺幇助だと思うけど、エメランスとしては友達の尊厳を守ったということなんだと思う。エメランスが貫いているのは実はこの部分。尊厳を守るということ。

エメランスの過去のエピソードは3つ語られる。父親を早くに亡くし再婚した母親は育児放棄。エメランスは双子の妹達と家を出る。嵐が来たため妹たちを非難させた大木に落雷。2人は亡くなってしまう。3人を追いかけて来た母親は、2人の変わり果てた姿を見てパニックになり、井戸に飛び込んでしまう。このシーン少しアニメっぽく絵描かれるのでそんなに辛くなく見ることができる。2つ目は子牛との別れ。祖父に引き取られたエメランス。この祖父は良い人ではあるが、厳しい人だった。かわいがっていた子牛が売られる日、大人たちの制止を振り切って子牛を追いかけるエメランス。彼女の声に気づいた子牛が縄を振りほどいて貨物車から飛び降りる、脚を骨折してしまい売り物にならなくなった子牛を、エメランスの目の前で解体する祖父。生きていく厳しさを教えているのだから、間違っているとは言わないけれど、やっぱりそれは酷いよ・・・ マグダが拾ってきた子犬に子牛の名前をつけて、かわいがるエメランス。切ないけれど不思議としめっぽさはない。

そして3つめ。第二次大戦中に知り合ったユダヤ人一家。両親から娘を託されたエメランスは、自分の子供として祖父の家に帰ってくる。未婚の母となった孫を受け入れることができない祖父。さんざんエメランスに辛く当たるけれど、次第にひ孫がかわいくなっていく。戦争が終わり娘は両親に引き取られ、現在はアメリカに住んでいる。彼女が会いに来るので、家を使わせてくれないかとマグダに懇願するエメランス。料理や食器などこだわって用意したのに、娘はやって来なかった。後にやってマグダの元を訪れた娘が、何故この時来なかった理由を語ることはないけれど、彼女のために自分の全てを失ったエメランスにとって、これは裏切りだった。

家事が苦手なマグダは、エメランスと衝突する度に困って彼女と和解することになる。ある夜、突然の雨にエメランスの家に入ることを許される。20年間閉ざされた扉。気難しく奇行の多いエメランスの家は、いったいどんな風になっているのだろうと、見ている側もドキドキするけど、意外に普通。ただし、彼女にはある秘密があった。それは猫を9匹飼っていること。家主からは3匹までしか許されていないので、猫を外に出すことはできないし、人を中に入れることも出来ないのだった。もちろんそれだけではなくて、彼女のテリトリーっていう部分もあるのだと思うけれど・・・ でも、他人から見たらそんなことで?と思うことでも、その人にとってはとっても重要なことってある。エメランスにとっては自分の尊厳を守るってことが重要だった。

友人の自殺のエピソードの時と、この猫たちの秘密を見せた時、エメランスはマグダにあることを依頼する。自分が死んだら猫たちを殺してあげて欲しい。それはエメランスの尊厳を守ること。でも、エメランスが体調を崩した時、結局マグダは彼女の尊厳を守ることができなかった・・・ 病みやつれた姿や汚れた家の中を人目にさらしてしまった。見た方はそこまで重く受け取らないかもしれない。でも、エメランスにとっては見せたくなかった姿。それに気づきながらも上手く立ち回ることができないマグダ。ユダヤ人の娘と共にエメランスのお墓をたずねた時、急に嵐になる。2人が必死にエメランスに赦しを請うと嵐は止む。このラストも幻想的で好き。

マグダの夫や近所の人、祖父など出てくるけれど、ほぼエメランスとマグダの2人芝居のような感じ。マグダは『マーサの幸せレシピ』や『善き人のためのソナタ』のマルティナ・ゲデック。キレイな人だけどデカイ(笑) 作家として成功しつつあって、品もある奥様という感じだけど、家事や家を切り盛りするのは苦手。多分エメランスはマグダを娘のように思っていたのだと思うので、しっかりしてきたけど至らない感じを好演。←えらそう(笑) エメランスはヘレン・ミレン。見たいと思ったのはヘレン・ミレンだから。さすがの演技。その生い立ちなどからちょっと偏屈なおばあちゃんになってしまっている部分も含めて、たった1人生きてきた強さや悲しさを感じさせた。素晴らしい

ジャパンプレミア枠の作品は日本未公開なので、今後公開されることがあるのか分からないけれど、WOWOW見れる方オススメ!

エメランスの扉|WOWOW

http://twitter.com/maru_a_gogo


コメント
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