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【play】「ミス・サイゴン」鑑賞

2016-11-27 00:42:59 | play

【play】「ミス・サイゴン」鑑賞

 

 

ここ数年東宝は「レ・ミゼラブル」と「ミス・サイゴン」を交互に上演している。今年は「ミス・サイゴン」の年。この上演スタイルは今後も続くようで、来年は「レ・ミゼラブル」が上演される。

 

一応、簡単に書いておくと「ミス・サイゴン」は「レ・ミゼラブル」と同じくアラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルクのコンビによる作品。クロード=ミッシェル・シェーンベルクが目にした1枚の写真から着想し、プッチーニの「蝶々夫人」を下敷きにして、ベトナム戦争時のベトナムを舞台としたミュージカル作品にしたもの。

 

 

 

実は今回はスルーしようかなと思っていた。「ミス・サイゴン」は好きな作品ではあるけれど、自分の中では何があっても見たいという作品ではない。資金難なので、他に見たい作品やコンサートがあればそちらを優先したいと思っていたので・・・

 

でも、今回で市村正親さんがエンジニア役を卒業されるということで、これは見ないわけにはいかない! しかも、キム役にウエストエンド公演で同役を演じたキム・スハさんが出演すると聞き、是非見てみたいと思った。ということで、お2人が出演する日を狙ってチケットを取った。

 

 

 

 

ザックリした感想をtweetしておいたので、そこに追記する形で感想を書いて行こうと思う。

 

ということで、感想をドゥゾ♪(っ'ω')っ))

 

【ACT1】

 

前述したとおり、ここ数年交互に「レ・ミゼラブル」と「ミス・サイゴン」が上演されていて、一昨年(感想はコチラ)にも観ている。実は初演以来の観劇で、しかも新演出版も初めてということで、新演出によってよりアグレッシブに分かりやすくなったことや、なにより新鮮さがあった。そしてなにより自分が年を取ったこともある。初演時はキム目線で見ていたけれど、今では親世代。当然見方も変わって来る。前回はそんな視点の変化自体も新鮮で、とにかく圧倒されて見ていた。

 

今回は前回鑑賞から時間が空いていないこと、新演出版を見るのが2回目であり変更点なども分かっていたこともあり、とっても冷静な目で見ることが出来た。その分見る目も厳しめになっていたかもしれない。下のtweetにもある通り、ドーンと来なかった理由についてはいくつか思い当る節がある。その1つがこの厳しめ目線。そしてやっぱり作品に対する情熱のようなもの。自分の中大好きで何度でも見たくなる作品は「レ・ミゼラブル」、「オペラ座の怪人」そして「キャッツ」。「レ・ミゼラブル」ほどの深みはなく、「キャッツ」ほどのエンターテインメント性もなく、「オペラ座の怪人」ほども酔いしれない。というのが個人的な感想。

 

そのあたりが自分の中で優先度がやや低くなっている理由で、前回鑑賞時の記事にも書いたけれど、作り手の視点がどこにあるにせよ、作品の重要な要素に女性蔑視、アジア人蔑視が含まれているのは間違いないわけで、アジア人の女性としてはいい気分のする作品ではない。出演者のほとんどが幸せではなく、心に深い傷を抱えており、最終的にそれが解決することなく悲劇で終わる。ハッピーエンドでなければ気に入らないというわけではないけれど、その悲劇に納得できない場合はモヤモヤしてしまう。今作のラストにはそういう部分がある。その点については後に触れようと思う。


とりあえず第一幕で気になった点などについて書いておく。毎回どうやって始まったのか忘れてしまうオープニング。旧演出については思い出せないけれど、新演出ではキムが1人雑踏を歩いているところから始まる。エンジニアが声をかけてドリームランドで働くことになったらしい。こういう細かい演出が入っていたの気づかなかった。


「火が付いたサイゴン」の歌詞は前回から変わっている部分があったかな? かなりきわどい歌詞でドキドキする。女性キャストたちの頑張りがスゴイ。これかなりきわどいよね キムが自己紹介的に歌う歌詞も少し変わっていたような気がする。お目当てのキム・スハ。今作が初演されたロンドンのウエストエンドでキム役を演じたとのことで、かなり期待値が上がっている。韓国出身ということで、イメージとして強い声で声量豊かに歌い上げる系なのかと思っていたけど、美しい声で儚げに歌う。人の好みはそれぞれなので、力強い女性に惹かれる男性もいるかと思うけれど、すっかり自信を失って、現実を嘆いているクリスのような男性が一目ボレするのは、清純可憐で守りたくなる女性だと思うので、この感じはイメージどおり。

 

歌詞は全体的にいろいろ変わっている部分があったと思う。より分かりやすくなっているとは思うけれど、なんとなく違和感がある部分もあったりする。一番気になっているのは、ジョンがクリスにキムをすすめる場面で、クリスが「こんな子まだガキだぜ、卵一個で抱けるさ」と歌っていた部分の後半が、正確な歌詞は忘れてしまったけれど、抱けないという意味になっていたこと。クリスとしてはキムをそういう相手として扱いたくないと思っているということが強調されていて、より分かりやすくなっていたと思う。でも、自分としては前の方が好きだったかな。(でも抱かない)っていうカッコ書き部分まで説明してしまうのはやぼったい気がした。

 

クリスの見せ場の「神よ何故?」(Why God Why?)で改めてしっかりと聴く上野哲也の歌唱。うーん。まず声があまり通らないと感じた。歌い上げる部分で少し安定しない。真面目そうで優しいけれど、流されやすく裏目に出てしまう感じが合っているとは思うのだけど、何かがピンとこない。顔もスタイルも悪くないのだけど・・・ 第二幕の「エレンとクリス」のところかな? アメリカ人ならやれるはずだったって憤るところ。そこの演技はとっても良かったと思うし、全体的に全くダメだったというわけではない。でも何かが足りない。このあたりがドーンと来なかった理由の1つでもある。

 

あと、スハキムは前述したとおり好みではあったし、下の方にtweetしたけど日本語の発音もきれいだった。でも、時々アクセントが違う。気にならない時もあるのだけど、そこが重要なポイントだったりするとアレ?(o゚ェ゚o)っとなっちゃって、入り込めないというか気が反れてしまうところがあったのは事実。そういうわけで、前回は気づいたら泣いていた「サン・アンド・ムーン」も、唯一と言っていいほど幸せな曲「世界が終わる夜のように」でも、グッと来るものがなく、サラリと流れてしまった気がする。全然ダメというわけではなのだけど、感動。・゚・(ノД`)・゚・。となりたいわけなので、そうはならなかったのは残念

 

自分としてはちょっと狂気を感じるようなトゥイが好きなので、藤岡正明のトゥイはちょっと男前。Twitterなどでもトゥイの方がいいじゃんという意見も見かけたけれど、ホント「クークープリンセス」から「トゥイの死」までの流れを見ていると、前回の感想にも書いたけれど、ここでトゥイと生きる道を選択できていたら、あんなことにはならなかったのに とはいえ、その選択肢が一切ないのがキムという女性だし、トゥイがタムを受け入れることはできなかったでしょう。 事実、激昂してタムを殺そうとしてキムに撃たれてしまうわけだし。そしてその一部始終を幼いタムが見ているのが辛い。無垢な魂が見つめる業。イヤ、キムも頑固なほどに真っ直ぐで純粋なんだと思う。そのことが、タムの存在により強調されている。その姿に泣いた。・゚・(ノД`)・゚・。

 

キム最大の見せ場「命をあげよう」 前述したとおり、強い声で最初からガンガン歌い上げる系だと思い込んでいたキム・スハ。実際はとても繊細に歌う。この曲オリジナル・キムのレア・サロンガを含め、何人かの歌唱を聞いたけれど、レアさん以外はかなり力が入っている人が多い印象。それって実は諸刃の剣で、その勢いに乗って大感動できる場合と、置いてけぼりな感じになってしまう場合がある。自分としてはやや後者の状態になることが多かった。なので、徐々に上げていく好きだったし、「4Stars」(感想はコチラコチラ)で生で聴いて、号泣状態になったレア・サロンガのイメージに近いと感じた。

 

段取りをつけて戻って来たエンジニアと3人、手を取り合って去っていく後ろ姿で終わる第一幕。この後姿でもタムの姿に涙 この後彼の身に起こることを考えると切ない。この演出はイイ。

 

【ACT2】

 

第二幕冒頭はサイゴン陥落から3年後、ジョンがベトナムに取り残された米兵と現地女性との間に生まれた混血児ブイドイの問題について訴える場面から。上原理生は超絶歌上手いし、声量があって声もいい。上原アンジョルラスは大好きなのだけど、正直この「ブイドイ」はあまり心に響いてこない。これ静かに抑揚なく始まって、終盤に向かってゴスペル調のコーラスも加わり、どんどん盛り上がって行く。技術的にも、感情の込め方的にも高度なものが必要なのかなと思うし、素人があまり偉そうなことは言えないのだけど、響いてこないのだから仕方がない。最終的には歌い上げて終わる曲なので、それで正解なのだけど、フルパワーで歌い上げれば響くかといえばそういうことでもないのだなと思ったりもする。この曲はJOJことジョン・オーウェン=ジョーンズ、アール・カーペンターの歌唱を聴いた。どちらも素晴らしく甲乙つけがたいけれど、個人的にはまるで独り言のように語り始めたアールさんの歌唱に心打たれて号泣だった。最後まで自分の思いを誠実に伝えようと思っているような。その感じが好きなので、熱く思いのたけをぶつけるような上原ジョンはイメージと違っていたと思うし、やっぱりまだ歌いこなせていないように感じた。絶対自分のものにできると思うので頑張ってほしい。エラそうでごめん🙇


第二幕の見せ場の1つ。本物のヘリコプターが舞台上に登場するサイゴン陥落のシーン。バンコクでホステスとして働くキムが、トゥイの悪夢を見てから、舞台上にクリスが登場して一気に場面転換。ここはアンサンブルの迫力もすごくて緊迫の場面。ただ、ここでのキム・スハの演技はちょっとアッサリし過ぎていたように思う。可憐なキムがあまりに取り乱し、怒鳴り散らすのも違うと思うので、そのあたりのことはいいと思うのだけど、クリスを乗せたヘリが飛び立つ前に、あきらめて去ってしまう部分がちょっとアッサリし過ぎだった印象。見ている側としては、すぐ近くにクリスがいるのに--- あきらめないで---となるところなので、ここはキムが思い切り絶望してくれた方がより切ないように思った。「ブイドイ」歌唱についても、ここでの歌唱についても、あくまで個人的な意見ではありますが・・・


さて、ここからはホントに何とかならなかったのかの連続で辛い。サイゴン陥落でキムとクリスがすれ違ってしまったのは、戦時中だし仕方がない。でも、キムが生きているだけじゃなく、自分の息子の存在も知っているのに、クリスの対応はあまりに人任せでグダグダに感じる。何故クリスはジョンと別行動をしていたのかが不明なのだけど、二手に分かれて探していたってこと? ジョンはブイドイを支援する活動をしているわけで、おそらくそういう組織に所属しているはず。その組織がエンジニアの届け出を受けたわけなのだから、キムの居所がきちんと把握できていないというのはおかしな話。まずはキムが働く店に行くのが手っ取り早く、その店が分からなかったからといって二手に分かれる必要はないように感じる。この辺りはベースとなっている「蝶々夫人」の流れに沿っているのだと思うけれど、40年以上前の話ではあるけど現代の感覚からすると不自然な感じがする。


ベトナム戦争に限らず、戦争では誰もが心に傷を負い、その癒し方はそれぞれ、ジョンとしてはこの活動に光を見出しているわけで、それは立派なことだと思う。そして、クリスが過去といまだに向き合えず、エレンという存在に依存していたとしても責めることはできない。あまりに大きな心の傷は完全に癒えることはないだろうし、回復する速度も方法も人それぞれ。頼れる存在がいるならば頼るべきだとも思う。だから現在のクリスの状況を卑怯だと逃げだとは思わない。でも、なぜジョンと共に会いに行かなかったのかは納得できない。エレンのセリフでキムを探しに行ったと言っていたので、それは間違いなのだろうし、あの結末に持っていくために、すれ違わせているのは分かるけど、どうも雑な感じがする。いきなり訪ねて行くと驚くからってこと?


たしかに、ジョンが訪ねるとキムは興奮してしまい、彼の言葉も耳に入らない状態になってしまった。前回はここの笹本玲奈の演技が自分にはやや過剰で、とりあえず落ち着け!と思ったものだけど、キム・スハの演技は自然だったと思う。キム・スハの演技が全体的にややアッサリめに感じたのは、前回の笹本玲奈の全編力の入った演技と対比されているからかもしれない。もちろん笹本玲奈の演技も素晴らしく、見ている間は感動していたので、ダメだと言っているわけではない。あくまで対比としてということ。個人的にはここはあまり興奮し過ぎずに自然に演じてくれた方が好きかも。キム・スハの演技は良かったと思う。


一方、キムがクリスの訪問を待たずにホテルを訪ねる流れは、エンジニアの入れ知恵も含めて納得できる。近くにクリスが来ていれば会いたいと思うのは当然。ただ、これはやっぱり本人からではなく、エレンからクリスに妻がいるという事実を突きつけられてしまう方がよりショッキングであって、ラストへの布石としてはインパクトがあるからこの流れなのでしょう。エレンとしても突然の対面にビックリしたとは思うけれど、精一杯優しく対応しようとしていることは伝わる。ただ、キムが去った後、戻って来たクリスとの会話で分かるように、タムの存在を知ってバンコクまで来たわりに、2人の間で自分たちがどうしたいのか、キムとタムのためにどうするべきなのか結論を出していかなったことにビックリする。2人は一体何をしにバンコクまで来たのか? 自分にはこの設定はちょっと雑に感じた。知念里奈の声はちょっとキンキンしていてるのが気になるけど、ここの演技は良かったと思う。今まであまり感情をあらわにしなかったキムが感情を爆発させるけど、ここのキム・スハの演技もやり過ぎ感がなくて良かったと思う。


そして、今作を代表する曲と言っても過言ではない「アメリカン・ドリーム」 とにかく、キムもエンジニアもアメリカに行くことに固執している。現代の自分たちからすると、アメリカに行ったからといって、必ずしも幸せになれるわけではないと思ってしまうけど、ベトナム戦争時のサイゴンを生き抜いた彼らには、アメリカは夢の国だったのでしょう。歌詞にもあるようにペチャパイがボインボインになることはあっても、残念ながらハゲが毛がボウボウになることはない。もしなるならドナルド・トランプ氏はあんな髪型じゃないだろう。アメリカにも不可能はある。それはきっとどこかで分かっているのだと思うけれど、それでも辛い現実から逃げたい、どん底の生活から抜け出したいという思いが、アメリカへの憧れになっているのかなと思う。そう考えるとキャデラックまで登場して華やかなシーンだけど、とっても切ない それは、エンジニアの夢が消え去って終わることでも伝わる。ここでの市村正親が素晴らしい。67歳歌って踊る。素晴らしい


そしてラスト。結局、クリスとエレンがどういう結論を出したのかはハッキリとは分からない。おそらく、バンコクに残して援助しようということになったのかな? でも、キムは答えを待たずに自ら命を絶ってしまう。せめてクリスの腕の中で逝けたことがせめてもの救い。でもやっぱりこの結末は好きではない。クロード・ミッシェル=シェーンベルクが、娘の将来を思いアメリカの父親のもとへ旅立たせるため、今まさに別れようとしている写真を見たことが、今作の誕生のきっかけだし、前述したとおりベースは「蝶々夫人」なので、キムがタムのために自分を犠牲にする話であることは分かるけれど、やっぱり何故話を聞きもせずに命を絶ってしまうのか? 17歳でクリスに出会って3年以上経っているとはいえ、キムはまだ20歳くらい。純粋で真っ直ぐで、何も持っていない彼女は、これしか方法がないと思い込んでしまったのでしょうけれど、クリスがタムを引き取ってくれる保証はない。仮にクリスとエレンの子供としてアメリカに行けたとしても必ずしも幸せになれるとは限らない。しかも、将来タムが自分のために母親が命を絶ったと知ったらどう思うのだろう・・・ もちろん、そのあたりを踏まえての問題提起としてのエンディングなのでしょうし、当時のサイゴンやバンコクには未来がなかったというのとなのかもしれない。ましてや米兵との混血児には。2016年の東京で観劇しているオバちゃんOLとしては、とってもモヤるエンディングだけど、この物語の終わりとしてはこれでいいのかも? 最後にエレンがタムを引き寄せる姿に少しだけ救われた。

 

キャストの感想は一応入れ込んで書いたつもりだけど、市村正親とキム・スハについてはtweetしておいたので貼っておく。



キム・スハについては感想内に書いたので1つだけ。日本語の発音がとってもキレイだったのだけど、時々アクセントが違っていて、それがちょっと気になったのもドーンと来なかった理由の1つであったりもする。でも、全体的には自分のイメージどおりのキムだったと思う。芯が強くて自分の運命を受け入れて、黙って耐えているような。静かに燃えているような。


 

市村エンジニア最後なのかと思うと感慨深かった。初演時から見ているけど、全体的に少しまるくなったかな? ご自身も小さなお子さんのパパだから、タムに対する視線が優しかったように思う。エンジニアは自身もハーフだから、タムに対してそういう思いがあってもいいと思う。前述したけど67歳。歌って踊る。スゴイ どうやら千秋楽のカーテンコールで続投したいという発言があったらしい? 再来年また市村エンジニアが見られるかも?

 

【Encore
カーテンコールでは市村さんのサービス精神が炸裂。何度も繰り返し楽しませてくれるのはさすが。最後はスタオベ


決して楽しい作品じゃないし、ラストもやっぱり納得できない。でも、好きな作品であることは間違いない。それは作り手やキャストのパワーを感じるから。そして楽曲の美しさ。「サン・アンド・ムーン」、「世界が終わる夜のように」など名曲ぞろい。やっぱり力のある作品だと思う。再演されたきっとまた見てしまのでしょう

 


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