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【play】「ミス・サイゴン 2022」鑑賞 @帝国劇場

2022-09-09 00:39:26 | play

【play】「ミス・サイゴン 2022」鑑賞 @帝国劇場

 

 

もう10年以上になるのかな? 東宝は毎年「レ・ミゼラブル」と「ミス・サイゴン」を交互に上演している。今年は「ミス・サイゴン」の年で、日本初演30周年の記念公演となっている。

 

実は2020年も「ミス・サイゴン」の年だったのだけど、コロナ禍の緊急事態宣言を受けて全公演中止となってしまった💦 キャストも観客も2年間待って満を持しての再演となった。

 

前回見たのはなんと2016年だから6年も前になるのか スルーした年はなかったと思うのだけどどうだったんだろう?🤔

 

前回の感想記事(コチラ)にも書いたのだけど、一応、簡単に書いておくと「ミス・サイゴン」は「レ・ミゼラブル」と同じくアラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルクのコンビによる作品。クロード=ミッシェル・シェーンベルクが目にした1枚の写真から着想し、プッチーニの「蝶々夫人」を下敷きにして、ベトナム戦争時のベトナムを舞台としたミュージカル作品にしたもの。

 

「蝶々夫人」を下敷きにしていることからも分かるように、これは悲劇的な結末を迎える物語。現代の日本人からすると、西洋人が書いた「蝶々夫人」のストーリーに共感する部分は無いし、アジア人蔑視を感じいい気持ちはしていない。正直、今作も欧米人が見たアジアだと思っていた。

 

でも、今回見方が少し変わった。その辺りのことを書きたいなと思っている。

 

 

 

 

見に行っておいてなんなのだけど「ミス・サイゴン」は好きな作品かというとそうではない。上記の理由に加え、製作者の意図がどこにあるにせよ、テーマ的に女性蔑視もあると思うので、アジア人女性としてはスッキリとしないものがある。

 

でも、一方で非常に力のある作品だとも思っていた。熱量がとても高い。それが今回とても良く出ていたように思う。とにかく「火がついたサイゴン」から熱かった! 誰一人気を抜いている人などおらず、気合入りまくりでもう圧がスゴイ! 

 

どんな作品でも気を抜かないのは当たり前のことだけど、この作品については押し寄せてくるような圧を感じさせるのはとても重要な気がする。

 

そういう意味では冒頭からすごかった! 陥落寸前のサイゴンで兵士たちも女性たちも追いつめられている。その感じがビシビシ伝わって来る。

 

あと驚いたのは「ドラゴンダンス」の素晴らしさ。キレがあってポーズの一つ一つがビシッと決まる! 男性だけでなく女性ダンサーも加わっているけど、全然分からないくらい力強くて本当に圧倒された!

 

 

キャストは皆ホントに良かったのだけど、書ききれないので主役3人のみ追記する。

 

駒田一:エンジニア

 

エンジニアは初演から市村正親さんが演じている当たり役。自身も一度市村さんが休演された時以外は市村エンジニアを見てきた。そういう意味では自分の中では貴重な駒田エンジニア。

 

ツイートにもあるとおり悲しさを感じるエンジニアだった。

 

後半に分かることだけどエンジニアは実はフランス人とのハーフで辛い生い立ち。それを全く感じさせず本来のずる賢いヤツと見せて、後の告白でビックリさせるのもありかと思うけれど、駒田エンジニアはどこかずっと悲しさと孤独を感じさせるエンジニアで、それがとても良かった。

 

 

高畑充希:キム

 

今回はe+貸切公演での鑑賞。限られた日程の中で重要視したのが海宝クリスと高畑キム。

 

高畑充希は映画やドラマで見たことはあるけど、生で見るのは初めてだった。ミュージカル経験もあるとのことで楽しみにしていた。ツイートにもあるとおり歌も上手いし声もいいけど、お芝居で見せる感じ。

 

登場時にはまだ少女だったキムが、愛を知りタムの母親となり、そして彼のために人を殺し、悲劇的なラストを迎える。それが母の強さなのか弱さなのか分からないけど、とにかくその変化を明確に感じさせた。

 

キムがタムを守るためにトゥイを殺した後、お前のためなら命をあげようと歌う「命をあげよう」がキムの見せ場。これも素晴らしかったのだけど、個人的にはホテルでクリスの妻エレンに会ってしまうという、最悪の形で自分を支えてきたものが崩れ去ってしまった後からの演技が素晴らしかった。

 

この後半のジョンが訪ねて来てからのキムって、とにかくクリスに会える!クリスと結婚できる!アメリカに行ける!って突っ走ってしまう。そうなってしまうからジョンがきちんと話せず悲劇に向かうって設定になっているのだけど、その設定自体が納得いかないこともあり、かなり上手に演じていてもちょっとイライラしてしまうこともあった。

 

それまでの過程でキムにはクリスとの未来という道しかなかったのだということが、しっかりと伝わってきていたので、その未来は手に入らないのだという絶望が自分のことのように腑に落ちた。イヤもちろん今までも分かってはいたのだけど、初めてピタッとはまった感じ。

 

前半もとても良かったけれど、後半が本当に素晴らしくて、初めてしっくり来たキムだった。

 

 

 

 

海宝直人:クリス

 

前述した理由で今作は積極的に見たい作品ではなかった。でも、今回見ようと思ったのは海宝直人がクリス役だったから。出演作は必ず見に行く!というほどの熱量ではないけれど、ファンでございます🥰

 

コロナで中止になってしまった2020年も見る予定でチケット取ってた。今回はそのリベンジ。結果大正解! 海宝クリスのおかげで作品の見方が大幅に変わることになった。

 

まずはビジュアル面から。しっかり海兵隊員の体型を作っており、髪も短く刈り込んでいて軍服が似合う。そしてやさぐれていてカッコイイ😍

 

クリスが歌う「Why God Why」では、彼が一度帰国したものの、周囲の目が冷たく、またベトナムに戻って来たことが語られる。それは表面的には分かってはいた。

 

でも今回、海宝クリスの演技と歌唱で、心身ともに疲弊して帰国すると、アメリカでは反戦運動が繰り広げられていて、居場所をなくして戻って来たものの、大使館のドライバーという曖昧な立場で、全く自己肯定できずにいるというような、そういう行間がしっかりと埋まった感じ。

 

そうなるとクリスがキムの中に光を見てしまった理由がより分かる。もちろんクリスはキムに恋をしたのだし、本当にアメリカに連れて帰ろうと思っていたのだと思うけれど、その根底に自分という存在を丸ごと信頼して愛してくれる存在=自己肯定という側面もあったのだろうと。

 

その辺りについても前回や前々回でも書いてきたように思うけれど、彼もまた戦争の被害者なのだということがスッキリと落ちて来た。

 

今作って最後の悲劇に向かうために、やたらとすれ違いが起きる。最大のすれ違いは実物大のヘリコプターが現れるサイゴン陥落シーンで、ここもなんとかならなかったのかと思うけど、バンコクでのキム探しのグダグダさは、ちょっと雑さを感じてしまう。

 

その雑な感じの割りを食っているのがクリスで、クズ男に見られがち。でも、クリスはクリスなりの思いがあって、彼なりに頑張っていたよ! 少なくとも前半は! と、思えたのも海宝直人のおかげ。

 

クリスデビュー初日ツイッターのトレンドになった海宝クリス。納得! 歌が上手いのも声量がスゴイのも知っていたけど、想像を超えて来た! 海宝クリス爆誕しましたね😊

 

 

クリスのセリフの中で一番彼のことを表しているのは、ホテルでエレンに過去を語る曲の中での"アメリカ人ならやれるはずだった"という部分。クリスはそいうい思いで戦争に来たのだし、国のために戦っているはずだった。なのに祖国の人々からは白い目で見られてしまい、アイデンティティや自信を見失った。

 

キムを守るということが、その失ったアイデンティティと自信を取り戻すために必要だった。でも、失敗してしまった。だから、失敗してさらに心に傷を負う羽目になってしまった。それを救ってくれたのはエレンだった。

 

そういう意味だと思っていた。それは間違いないと思うのだけど、それだけじゃなくてクリスの姿がベトナム戦争時のアメリカを象徴しているのだということに遅ればせながら気づいた。そして当時のベトナムの象徴がトゥイでありキムなのでしょう。

 

例えばドラゴンダンスなどもベトナム人から見れば違和感があったりするかもしれない。そういう部分含めて白人から見たアジアだなという感じは変わらない。以前も書いたけど、製作陣の意図や思いがどこにあるにせよ、アジア人蔑視、女性蔑視を含む物語であることは間違いない。

 

そして、毎回書いているけどあのラストは納得ができない。「命をあげよう」でも歌っていた通り、親が子供に"生きるチャンス"を与えるために命をあげるという局面はあるかもしれない。キムにとってはあの瞬間だったのかもしれないけれど、タムにとってはそこじゃなかったのじゃないか。そもそも"チャンス"じゃないのではないか。

 

でも、作品としてはあの結末しかないのかなとも思う。母親として子供を手放すということは、心を殺すことなのだということなのかも。

 

その辺りのことが今回とても伝わってきたし、主要キャストがそれぞれの国を象徴している、そして誰もが"戦争"の被害者なのだということがスッと落ちてくる瞬間に巡り合えたのはとても良かったと思う。

 

そういう意味ではやっぱり名作なのだと思うし、自分にピタッとくるキャストに出会えたことはとても嬉しかった。

 

次回見るかはまだ分からないけど、今回は見て本当に良かったと思っている。

 


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