11月3日、下関駅前から国道191号線がスタートする。ここから響灘に沿って下関から長門市を目指す。前回の広島勤務時も、国道191号線をひたすら走ったことがあるのだが、その時とは様子もずいぶん変わっているだろう。
まずは商店やビルが並ぶ中心部を走るが、そこを抜けると新たに下関北バイパスができており、山陰線の安岡駅近くまで続く。
この先は鮮やかな色の響灘が続く区間もあり、思わず下車してしばらく潮風にも吹かれてみる。並走する山陰線の観光列車「○○のはなし」でも途中海の眺めがよいポイントで運転停車するが、国道はより海岸に近いところを行く。国道191号線の山口県西部の区間は「西長門ブルーライン」の愛称もある。青い空、青い海・・。
景色がきれいなのはいいが、ずっと下道を走って来たために、下関を出た時点ですでに10時半を過ぎており、かつ、山口県の最西部の国道を走り続けている。目的地の油谷半島に着くのは何時頃になりそうだろうか・・。まあ、こうしたこともやっているから、今回の中国四十九薬師めぐりも1回で1ヶ所だけ回るという、相変わらずの効率悪い札所めぐりになっているのだが。だいたい、第32番に着くのに「第20回」っていったい・・・。
瓦そばで知られる川棚温泉や、下関からの山陰線の列車の多くが折り返しとなる小串を過ぎる。その先、前方の高台に赤い鳥居が連なっているのを見る。長門地方で赤い鳥居が連なるスポットといえば、この先の元乃隅稲成神社が有名で、中国四十九薬師の向徳寺の後に立ち寄る予定にしているのだが、ここにも同じような稲荷神社があるようだ。
そこに現れたのが、福徳稲荷神社の看板。そういえば、仕事の関係で山口の人と話をした時に、その人が県内でおすすめの寺社だとしてこの神社が挙がっていたのを思い出す。彼が言うには、元乃隅稲成神社はごく最近のインスタ映えのおかげで有名になっただけで、神社の「格」としては福徳稲荷神社のほうがよほど上なのだとか・・。
クルマは急斜面を上り、境内の駐車場に入る。稲荷神社らしく朱塗りがベースで、社殿も堂々としたものである。ちょうど鳥居から振り返ると響灘の景色を眺めることができる。
この地には第12代の景行天皇が訪ねたことがあり、景色の美しさに魅入って時が経つのを忘れてしまったという言い伝えがある。その頃にはすでに神が祀られていたそうだが、福徳稲荷神社として現在地に設けられたのは1970年代のことだという。また、現在の形に整備されたのは平成になってからだそうだ。
鳥居の真下、そして拝殿の正面に「撮影禁止」の札がある。建物自体が撮影禁止というわけではなく、その場所での撮影がNGということのようだ。ちょうど神様の通り道に当たるし、例えば社殿を真後ろにして記念撮影するとは、神様に尻を向けているから失礼・・というそうで、なるほどそれも一理あると思う。
ちょうどこの日は行事に当たっていたようで、拝殿内では儀式が執り行われていた。
さて、先ほど国道から見えたのは千本鳥居である。伏見稲荷大社を思い出す。ここを下ると響灘を見下ろす祠があるとのことで行ってみる。鳥居には順番に番号が振られており、ずっとたどると970番台まで確認できた。正味千本といっていいだろう。
この先端に建つ谷川稲荷からの眺めも良い。国道191号線の奥に山陰線の線路も走っている。響灘沿いということで、乗った時は海の方に目が向いていたはずで、山側にあるこの稲荷神社の存在に気づいていなかった。クルマで来たからこそのスポットだが、なるほど、山口の彼が薦めるだけのことはある。今度会った時、福徳稲荷神社に行ったことを報告しよう。
さらに響灘沿いに進む。この辺りは「北浦街道」の通称があり、人気の道の駅もある。立ち寄ってもよかったが、駐車場待ちの渋滞が国道の分岐点まで伸びている。
次に向かうのは角島大橋。こちらも元乃隅稲成神社と並んで北長門の人気スポットで、クルマのCMのロケ地になったことで注目されている。日本にもこうしたスポットがあるものだ。ここに来るのは初めて。ちなみに公共交通機関だと山陰線の滝部からバスで行くことができるが、本数は限られている。
大橋の本土側のたもとには展望公園が整備されており、売店もある。駐車場も常にクルマが出入りしている。幸い、ほとんど待つことなく無事に駐車できた。
さすが晴れの特異日である。実際に橋を渡るクルマも多いのだが、中にはゆっくり楽しもうとわざと速度を落として走るクルマもいる。
展望台に上がってみる。こちらからだと、海の鮮やかさをより感じることができる。年配の団体客もカップルも一人ドライバーもこの景色に魅入っている。
これが山口県、それも日本海というのが意外である(冬の荒天の時に来るとまた違った景色なのだろうが・・・)。それにしても、こういう色合いというのは何が作用すれば現れるものだろうか・・。
本来なら角島大橋をクルマで走って、この海をさまざまな角度から楽しむところなのだが、何せ時間が押し気味である。目的地である油谷半島へはまだまだ距離がある・・・。