まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

「みまさかスローライフ」列車に乗りに行く~美作滝尾に「寅さん」出現

2022年11月23日 | 旅行記F・中国

11月6日、津山から因美線を走る「みまさかスローライフ」列車に乗車。因美線の東津山~智頭間は岡山、鳥取の県境を越えるところで、ローカル線らしい景色、また昔の設備の名残が残されている区間である。とはいうものの、芸備線の東城~備後落合間までとはいかないが路線の存続も決して楽観視できないところだ。岡山から鳥取に向かう特急が、わざわざ兵庫県まで行って智頭急行経由で走るくらいだから・・・。

因美線のこの区間だが、この夏に急行「砂丘」の復刻運転として、キハ47の国鉄急行色を使った団体列車が走り抜けた。このツアーには乗ってみようかなと思ったが、ネットでの発売開始日を失念していて、気づいたら完売になっていた。まあ、今回「みまさかスローライフ」で乗ることができてよかった。「砂丘」は団体列車ということでツアー料金も強気に出ていたが、こちらはあくまで臨時列車で、普通運賃と指定席530円で乗車できる。

次の高野にて4分停車。短い時間だが駅舎や列車の撮影に多くの人がホームに降り立つ。別に先を急ぐ列車ではないのだが、一応定時運行は確保しなければならない。発車時刻が近づくと車掌がハンドベルを鳴らして乗客に車内へ戻るよう促す。

この日は天気もよく、沿線にはさまざまな撮り鉄が集まっている。だいたいは安全な場所から、また列車だけではなく周囲の景色と組み合わせたらしい構図の写真を撮っているように見えるが、中には線路際すれすれの場所でカメラを構えるのもいる。

次の停車は美作滝尾。昭和初めの開業当時の木造駅舎がそのまま残っており、映画「男はつらいよ」のロケ地になったことで知られている。私も、この駅舎を見るためにわざわざクルマを走らせたことがある。美作滝尾では12時50分発まで27分停車し、地元の人たちからのおもてなしが受けられる。

列車が入ると、駅前からエレキバンドの演奏が聞こえてくる。また歓迎の横断幕が広げられる。長時間停車ということで100人あまりいた乗客のほとんどが下車するので、ホームは人であふれかえる。通常のローカル線輸送では見られない賑わいである。もう何度も列車が運行されており、地元の人たちにとっては年中行事のお祭りの日のような感覚だろう。

・・・と、そこへ降り立ったのはフーテンの寅さんの出で立ちの人々。トランクを手にした寅さんが3人、そして佐藤蛾次郎さんが演じていた弟分の源ちゃんの出で立ちが1人という「御一行」である。「男はつらいよ」ロケ地の美作滝尾に「スローライフ」が停まることから、いつの頃からか寅さんのコスプレ客が乗り込むようになったという。この御一行は前日5日の「スローライフ」にも乗車していたようで、地元の人たちとも顔なじみであるかのようだ。

現存するのはもちろん映画のセットではなく、現役として使われたものである。改札口を通して、国鉄急行色の車両が停まるのも、私個人はそれほど経験がないことだが懐かしい景色として伝わってくる。「スローライフ」という名とは裏腹に駅前はごった返すのだが、ちょっと時間を距離をおくと静かな風情が楽しめる。

駅前では地元の人たちのお出迎えで、地元の農産品や弁当としてちらし寿司の販売もある。

バンドによる「男はつらいよ」のテーマソングの演奏もあり、寅さんたちも手拍子で応える。

この後は獅子舞の披露。

テレビの取材もあったようで、寅さんの一人がインタビューに応じている。その様子をスマホで撮影する別の寅さん。

楽しいひと時が過ぎ、そろそろ車掌のハンドベルが鳴って乗客が車内に戻る。

次の三浦はすぐの発車で、13時02分美作加茂に到着。13時35分発まで30分あまりの停車である。

こちらでは物販のほかにうどんのスタンドが出ている。美作滝尾でのちらし寿司は見送ったが、うどんなら喜んでいただこう。列車を眺めながらホームでうどんをすするのも汽車旅の風情である。寅さん御一行もうどんに舌鼓のご様子(寅さんの一人は「大盛はないのか」とボヤいていて、結局おかわりでもう1杯注文していたな)。

停車中、駅員によるタブレット授受の演出があった。現在は指令室にて信号のコントロールが行われているが、こうしたアナログな光景もこの駅に似合っている。撮影時間中、ずっとポーズを保っている駅員もお疲れ様・・・。

昼下がりのローカル駅の景色。

次の和知も昔ながらの駅舎が残っているが、「みまさかスローライフ」はわずかな時間ですぐに発車する。次の岡山県最後の美作河井でまた長時間停車のようで、さらなる風情を楽しむことに・・・。

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