10月29日、糸島半島から伊都国を経由して、ようやく九州西国霊場の目的地である千如寺に向かう。標高954メートルの雷山の中腹にあるとのことで、後半数キロは上り坂が続く。一応、筑前前原駅から糸島市のコミュニティバスが出ているが、土日祝日ダイヤだと1日3往復しかなく、着いたらすぐに折り返すか寺で3時間待ちのいずれかという運行である。これだとどうしてもクルマで行くことを選択してしまう。
駐車場に到着。駐車場はあくまで参拝者向けで、登山者は駐車しないよう看板が出ている。雷山は福岡近郊で登山者にも人気の山だそうで、登山口の駐車場は別途設けられているとのこと。その参拝者向け駐車場だが、クルマも頻繁に出入りする。
千如寺は聖武天皇の勅願により、天竺から来た僧の清賀上人により開かれたという。かつては霊鷲寺という名前で、雷山に多くの本山、僧坊を持ち繁栄していた。千如寺はそれらの総称だったという。また、雷山は水火雷電神を祀る曽増岐神社(上宮・中宮・下宮)があり、千如寺はその神宮寺でもあった。長く神仏習合の歴史を持っていたが、明治の神仏分離令により切り離され、中宮は雷神社という名前になり、中宮に祀られていた本尊の十一面千手千眼観音も現在の千如寺に移された。なお、千如寺は後ろに「大悲王院」とつけて呼ばれることも多い。
まずは境内横の入口から入り、仁王門に出る。今は外から入ることはできず、中からくぐって階段下から改めて見上げる。
改めて仁王門をくぐった正面に本堂がある。まずはここでお勤めとする。
境内がまだ奥に続いているので先に進む。突き当りにあるのが聖天堂で、歓喜天を祀っている。本堂や聖天堂は江戸時代からのものという。
ここから階段があり、上ったところが観音堂である。本尊の十一面千手千眼観音はこの観音堂に祀られており、九州西国霊場の表札、石碑も建っている。観音堂とあるが、実際はこちらが本堂である。もし、先ほど階段の下にあった「本堂」で満足してそこで引き返していたら残念なことになっていた。神仏分離で観音像を引き受けることになったから後からこのお堂を建てたのかな。
いったん、観音堂の外で改めてのお勤めとする。お堂の中からは僧侶による般若心経と太鼓の音が聞こえる。御祈祷でも行っているのかな。ただ、中の一般拝観も400円とあり、特別な申し込みがなくても入れそうだったので、横の入口から観音堂の中に入る。拝観料を納めると、そのまま外陣に進んでしばらく待つように言われる。
ある程度人数が集まっていたところでまとめて中の案内をしてくれるという。しばらく待ち、10人ほどが集まったところで僧侶がやって来て、千如寺の歴史や見どころについて解説をしてくれる。そこには先に触れた神仏習合・神仏分離の歴史もある。その他、災いから身を守る「サムハラ」の紹介もある。「禍を転じて福と化す」など、「十転化」の功徳があるという。
また、雷山、千如寺は九州でも指折りの紅葉の名所としても知られており、この日(10月29日)は特に混雑もなく駐車場もスムーズに入れたが、僧侶の話だと、紅葉の時季は渋滞して駐車場も1~2時間待ちになるそうだ。この記事が出ている頃、紅葉はどのような様子だろうか(さすがにまだ早いかな)。
内陣に入る。正面には本尊の十一面千手千眼観音が私たちを見下ろす。丈六(約4.8メートル)と立派なもので、鎌倉時代の作とされる。ここで皆さんの祈願をということで、案内の僧侶が般若心経、御本尊真言と一連のお勤めとする。先ほど観音堂の外で聞こえたのはこの読経で、実際に観音像と対面しての参詣にありがたさを感じる。
この後、本尊の十一面千手千眼観音、脇侍の持国天、多聞天の足元を通る。直接触ることはできないが、観音像の足元はこれまでの長い歴史で多くの人が触れて祈ったとみえてつるつるになっている。
内陣にはその他にも多くの仏像が祀られており、拝観順路は後ろの扉からいったん外に出る。奥には、国東の富貴寺を模した開山堂があり、清賀上人の像が祀られている。
その横の斜面には五百羅漢。かなり上のほうまで並んでおり、これも結構圧巻である。
観音堂を一回りして、出口の授与所にて九州西国霊場の朱印をいただく。
さらに奥には護摩供が行われる道場がある。少しばかり葉も色づいており、カメラを向ける人の姿も見える。青空によく映えている。
これで雷山千如寺を後にして、次は福岡市の正覚寺を目指す。しばらくは福岡市の外側を走ることに・・・。