九州の南部に差し掛かった九州八十八ヶ所百八霊場めぐり。帰りは宮崎16時39分発の特急「にちりんシーガイア14号」に乗る。県庁所在地ではあるが、先ほど寺を2ヶ所回ったのと、中心部をレンタカーで通過しただけで、実際の繁華街の様子を見るとか、宿泊、あるいは一献ということもなく慌ただしく戻ることになる。
この次は日南線沿線の2ヶ所を回る予定だが、いろいろプランニングする中で、日南市内に泊まるのが都合よさそうということで、同市内のホテルを予約している。県庁所在地を無視するようでもったいないのだが・・。
さて、列車の出発までは時間があるので、高架下の土産物コーナーやコンビニであれこれ買い求める。この先4時間半、ちょうど夕餉の一献の時間帯である。もちろん車内販売もなく、途中で買い物ができるだけの停車時間もないため、これでもかというくらい買っておく。ビールその他が途中でぬるくなるのも嫌なので、保冷も兼ねてカップ入りの氷も仕込んでおく。一献というより、酒盛りの籠城戦のような荷物となる。
列車は宮崎空港が始発で、途中南宮崎に停車した後に宮崎に着く。列車好きなら始発の宮崎空港から乗るところだろうが、JR九州のネット予約画面で割安で購入できる「九州ネットきっぷ」の場合、宮崎・南宮崎~小倉の設定はあるが、宮崎空港~小倉は設定がなく、通常運賃・料金となる。まあ、宮崎空港~宮崎は特例で乗車券のみで乗車できるから、その区間だけ別購入すればよいのだが・・。
6両編成の列車がやって来た。このうち前から4両が自由席、その後の1両が指定席、そして最後尾がグリーン車である。今回乗車するのはグリーン車である。「JR九州ネットきっぷ」利用だと、宮崎~小倉間は9850円と値段が一気に跳ね上がるが、これでも普通車指定席を通常に購入するのと比べて560円高いだけである。ならば、4時間半の長丁場ということでグリーン車に乗って行くことにする。
なお、ネット予約で購入できるのは通常のグリーン車のみで、最後尾の運転台寄り最後列のDXグリーン車や、グリーン個室は購入できない。グリーン車は1-2列の配列で、海側(進行方向右側)は2列席なのだが、先ほど駅のみどりの券売機で空席照会をかけたところ、隣の席は空席のようで、他にも窓側の席や1人がけの席も空いていたから、誰かと相席になることはないだろう。
その一方で普通車指定席は満席と出ている。もっとも、全員が宮崎~小倉を乗り通すわけではないだろう。指定席が1両しかないのと、途中の1駅間だけでも利用する客がいれば、宮崎~小倉の通しの座席が取れなくなる。だからといって区間を分けると、その都度特急料金がかかってしまう。
そんなことを思いつつ、宮崎を出発。朝からレンタカーで通った都市間を特急で戻るわけでだが、まずは缶ビールを開けて一人お疲れさんとする。今日も暑かった。その中で日中ハンドルを握り、終わった後の1杯というのも、今やレンタカー旅行の楽しみである。これ、広島まで延々と東九州道~中国道~山陽道と走るとなると・・・。
まずは宮崎の近郊を走る。平野の向こうにポツンと高い建物が見える。シーガイアにあるホテルということで・・名前は何だっけ。シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート。やはり結構なお値段がするのだろうな。
コンテナオフレールステーションのある佐土原を過ぎ(その昔、宮崎の某製薬会社工場からのコンテナ貨物が広島にも到着してていたのに携わったことがあり、そこで「佐土原」という地名を知った)、河口部の広い一ッ瀬川を渡る。
先ほど走った国道10号線とも並走する。高鍋を過ぎると国道10号線と別れ、日豊線は日向灘に近いところを行く。海が近いのはわかるが、海岸側の草木が伸びていて水平線をなかなか見渡すことが難しいのだが・・。
都農を過ぎたあたりから右手に高架橋が続く。かつてのリニア実験線跡である。確か日豊線の線路沿いにあったのを車窓で見たな・・と思っていたが、このあたりだったかと思い出す。宮崎のリニア実験線の歴史は古く、国鉄時代の1977年に建設され、1996年まで使用された。その後、宮崎の実験線の後を受け継ぐ形で山梨に実験線が設けられ、現在建設中のリニア中央新幹線の一部となっている。そのリニア中央新幹線、いろいろあって東京~名古屋の2027年開業は後ろ倒しになる見込みだが・・。
その実験線に沿ってしばらく走る。現在も高架橋が残るが、よく見るとその上の軌道部分に何やら乗っている。太陽光発電のパネルだ。時代が経てばこういう利用をするのかと思う。南国宮崎らしいといえばらしいのかもしれないが・・。
そもそも、日豊線をリニア化するわけでもないのに、ここに実験線が建設されたのはどういう事情かと思う。土地が取得しやすいところ、平坦な土地で並走する線路が長い直線であること、そして都市部から離れているところ・・などという理由があったそうだ。当初は電磁波の影響も心配されたという。実際に東京からリニアを建設するとなると中部地方のアルプス山脈を通すがあり、そういう場合の曲線や勾配のデータ、さらにはトンネルの出入り時の気圧の影響などの評価が必要ということで、新たな実験線の建設の声があがった。そこで建設されたのが山梨実験線だという。
それでも宮崎の場合は軌道をシンプルにした分、基本的な高速走行の実験に役立ったという点では評価されるところである。この実験線は、伝統的な町並みが残る美々津の近くまで続いた。戦国時代、九州の覇権をかけて島津氏と大友氏が激戦を繰り広げた耳川を渡る。
高架駅の日向市に到着。ここから、先ほど1名が乗っていた最後尾のDXグリーン席にもう一人やって来る。この1-2列シートだけ、通常のグリーン車の座席とは仕切られていて、スペースもゆったりしている。こういう座席でゆったり過ごせばなお快適だろうな。
今朝方、第33番・永願寺を訪ねる際に見た門川町の海岸を過ぎ、南延岡に到着。旭化成の工場への専用線が分岐するところである。
17時42分、ホームの向こうにコンテナ基地が広がる延岡に到着。日豊線もここまでは貨物「列車」がやって来る。とりあえず宮崎から延岡まで1時間。ここから、大分への県境越えの区間である。往路でたどった宗太郎越えだが、その時はうたた寝のまま通過してしまった。今回は見逃さないようにしなければ。
延岡から佐伯まで、次の1時間はノンストップである。外はまだ明るく、駅の様子は何とか見ることができそうだ。ここで油断しないように・・。
そして、通過しながらなので写真は上手く撮れなかったが、来訪記念のメッセージ石が置かれているベンチがあるホームをとらえることができた。
18時41分、佐伯に到着。ここでようやく2時間経過である。道のりはまだまだ半分以上残っている。さすがに18時を過ぎると辺りも暗くなるが、何とかリアス式海岸の一端を見ることができる。ここまでレンタカーで通過した区間が多かったが、今回「にちりんシーガイア」に乗ることで回収することができたところも多かった。やはり列車にも乗っておきたい。
19時41分、大分到着。宮崎を出発して、ほぼ1時間の間隔で延岡、佐伯、大分と途中の主要駅に停車する。
大分からの別府湾は暗闇となり、別府に到着。連休の最終日の夜となればさすがにホームもひっそりしている。
ここまで来れば何回か列車で走った区間で、ようやくゴールの小倉も見えてくるところ。外の景色も見えなくなったので、あとはゆらり一献である。小倉では数分停車して列車の向きが変わるので、さすがに車内もごそごそするから乗り過ごすことはないだろう・・。なお、宮崎からちょうど4時間後の20時37分、中津に停車。
21時10分、小倉に到着。列車は向きを変えて博多に向かうが、ここで広島に戻るべく乗り換えである。列車全体でも小倉まで乗って来た客は少ないようで、ホームやコンコースも静かなものだった。
小倉からは21時25分発の「みずほ614号」新大阪行きに乗り継ぐ。なお、広島までならこの後21時47分発「こだま876号」福山行き、22時08分発「さくら406号」広島行きがあるが、いずれも宮崎からなら先ほど乗って来た「にちりんシーガイア14号」に乗る必要がある。
この時間なので自由席でも空席があるとして、その分安くあげた。それでも自由席はそこそこの乗車率で、通路側の席に陣取る。今度こそ乗り過ごすとしゃれにならないところ、通路側ということで緊張感を保つことができた。
22時11分、広島到着。この時間なら在来線もまだまだ動いており、連休最終日、無事に帰宅できた。
これで九州八十八ヶ所百八霊場めぐりも何だかんだで南下し、久しぶりに日向の国、宮崎県に足を踏み入れることができた。古事記からの神話、そして神道の影響が強い土地なのかなというイメージだったが、真言宗の仏教寺院も頑張っているなというのが新たな印象となった。この後は日南線シリーズ、そして都城・霧島シリーズと続く予定だが、札所めぐりに合わせたスポットめぐり、そして鉄道を中心にさまざまな乗り物を利用したいものである・・・。