日南線が舞台となる今回の九州八十八ヶ所百八霊場めぐり。初日の9月9日は「にちりんシーガイア5号」のコンパートメント~青島神社~鵜戸神宮と来て、17時半頃すぎ、宿泊地である油津に到着。油津駅が最寄りの第39番・潮満寺は駅からだと徒歩20分ほどのところにあり、翌朝一番に参詣する予定である。
さて油津での宿泊だが、いくつかある中で目についたのが「fan! ABURATSU スポーツバー&ホステル」。こうしたホステル型の施設に泊まることは滅多にないのだが、油津駅近辺で宿泊施設が少ない中、最近リニューアルされたばかりということで予約した。
チェックインは、商店街の中にある「油津Yotten(ヨッテン)」で受付という。商店街の多目的交流スペースとのことで、ちょうどホステルの斜め前にあるが、その入口で「鯉神社」の鳥居が出迎える。
ここで出迎えるのはこれでもかというカープ関連の展示である。昔なら現在までの日南キャンプの写真もずらりと並ぶ。日南はカープのキャンプ地ということで、町をあげてカープを歓迎、応援しているとは聞いていたが、先ほどの「カープ油津駅」といい、こうしたスポットといい、改めてその熱意にうなるばかりだ。練習が行われる天福球場も徒歩圏内ということで、明日の札所めぐりの前に行ってみようか。
オーナーらしき人が出てきて、ホステルのチェックイン手続きを済ませる。用紙に住所氏名を書くのだが、「広島市~」と書いたのを見つけ、「おぉ~広島からですか。やっぱりカープファンですか?」。「それにしてもカープは残念でしたね~、さすがにここまでですかね。でも、クライマックスシリーズがあるから・・」と話しかけられる。
ちなみにこの日(9日)、カープは優勝へのわずかな望みをかけてタイガースとの直接3連戦に挑んでいたのだが、前日に続き敗れたことで優勝はほぼ絶望となった(そもそも3連戦3連勝が絶対条件だったのだが、結果的に翌10日の試合にも敗れ、3連戦3連敗となった。このことで、タイガースが「アレ」を一気に引き寄せることとなった・・)。
先ほどカープコーナーをいろいろ眺めていて、そして宿帳に広島市からと書いたら、オーナーとしては当然「カープファンが来てくれた!とウェルカムになることだろう。これに対して「いや、私はバファローズのファンです、パ・リーグ派です」などと正直に答えようものなら、一瞬にして気まずいものになるだろう。まあ、私は一応セ・リーグならカープなので、そこは円満に。私が毎年願うのはバファローズ対カープの日本シリーズで、だからこそ両チームの交流戦、オープン戦には関西、広島それぞれで観戦している。
オーナーにホステルの建物に通される。玄関はカードキーで出入り自由だという。建物は元々居酒屋だったそうで、商店街の空き店舗を活用する形で改装したという。その後オーナーが変わり、改めてリニューアルしたのだとか。
ホステルというと相部屋のドミトリー形式が多いのだが、こちらはシングル、ツインと個室もある。私が今回泊まったのは、ツインルーム+和室の組み合わせで、このホステル最も広い部屋である(他に、別棟としてコンテナルームもあるとのことだ)。部屋を見たところ、元々は4人部屋(2段ベッドなら8人部屋)だったのだろうが、空きがあればシングルユースでの利用も可能ということで、広いスペースを得ることができた。部屋にはテレビがないが、Wi-Fiがつながっており、ネットの利用には支障がない。この頃はこれで充分なのだろう。
トイレ、シャワーブースは共用で、ミニキッチンも備えられている(個室にはミニ冷蔵庫あり)。コーヒーや紅茶、日本茶なども自由に飲むことができる。
しばらく部屋で涼み、外に出る。ここは油津の中心で、赤ちょうちんにも灯りがともる。そういう店にふらりと入るのが旅の楽しみなのかもしれないが、油津の夜の事情がわからなかったので(居酒屋はあるが早くから満席という事態もあり得る)、あらかじめグルメサイトで店を予約していた。
その店は「日南酒処 かつを専門店」。一昨年開業したばかりの店で、行ってみるとビルにいくつか入るテナントの一つであった。「かつを専門店」というくらいだからカツオ料理がメインで、グルメサイトから飲み放題つきのコースを予約しておいた。
カツオ料理と聞いて、私の中では高知、枕崎、焼津、気仙沼といった地名が浮かぶ。その中にあって、日南市はカツオの一本釣りの漁獲量が日本一だという。これは初めて知った。宮崎といえば宮崎牛や地鶏、マンゴーなどが連想されるが、日南を中心にカツオも名物だという。もっとも、カツオは回遊魚なので日南の漁師たちも季節に応じて黒潮を行ったり来たりしており、その積み上げの結果だという。
カツオの漁獲量が日本有数ならばもっと宮崎名物としてPRすればよいと思うが、これまで宮崎県をたどった中で、高知などと比べるとカツオの生節や酒盗の瓶が土産物コーナーに並ぶわけでもなく、どういう扱いなのかなと思う。
まずはビールで乾杯。今回は10品プラス飲み放題で5000円のコース。
小鉢3種に続いてサラダが出る。野菜の上にのるのはカツオのシーチキン。
そして刺身3点盛り。通常の刺身、たたき、そして漬けである。いい感じだ。
中盤となり、この店の一押しという「ゴロゴロ肉鰹炭火焼」が登場する。コースなのでハーフ盛りのようだ。炭火焼だから、藁焼きで造るたたきとは異なる。カウンターから調理の様子が見えたが、調理法は宮崎の地鶏の炭火焼から連想したのかな。もっとも、あまり火を通しすぎずレア焼にしている。魚というよりは肉に近い味わいで、こういう食べ方もあるのかと感心した。コースとは別におかわりしてもよかったかな。
焼酎は芋ばかりあったのでパスし、酎ハイの次はサントリーのジン「翠」に入っている。先ほどの炭火焼にも合う。最初は、「翠」のサワーを注文したが、後に「翠ジン鰹節サワー」というのが目についた。
梅干しサワーのように鰹節の風味を楽しむもののようだが・・・これはちょっとハズレ。出汁を取るわけではないのだから、液体の中に入ってしまうと鰹節がグズグズになり、ほじくり出すのが大変だった。
料理は後半に入り、地鶏ならぬカツオのつくね。カツオをミンチ状にするとして、アジのなめろうやさんが焼きのようなものをイメージしたが、つなぎにレンコン、山芋を使いつつ、鶏肉のつくねとほとんど変わらない完成度である。卵黄と合わせていただく。
揚げ物の部では、とうもろこしの天ぷら、そしてやはり宮崎ということでチキン南蛮も登場。さすがに「カツオ南蛮」とまでは行かなかったか。
締めは鰹ラーメン。カツオと地鶏の出汁でこしらえた一品である。麺とともに入っていたのは、鰹ギョーザ。まあ、つくねになるくらいだからギョーザの具になるのも簡単なことだろう。
予約時、コース料理といいながら、食べ足りなければ他に単品を追加注文しようかと思ったが、さまざまな形のカツオ料理にというのもなかなかできない経験で、十分満足した。日南にカツオあり、宿泊地に油津を選んでよかった。
ホステルに戻る。表のテラスでは女子会だろうか、バーベキューで盛り上がっている。フリースペースも若い人の姿が目立ち(画像は、皆さん寝静まった後だが)、カウンターでも一献やろうと思えばできるようだ。
せっかくの個室なので、シャワーを浴びた後、冷房がよく効いた部屋の畳スペースでリラックスする。テレビがない静かな夜もたまにはいいだろうということで(話し声は聞こえてくるが)、続きの一献をやりながら持参の柳田國男「海南小記」の続きを読む。
それはそうと、バファローズの試合はどうだったか、この日は千葉でのナイトゲームで・・と途中経過をチェックするつもりスマホ画面を出したところで驚いた。何とこの試合先発の山本由伸がマリーンズ相手にノーヒットノーラン達成!
しかも2年連続2回目という。それもこの優勝争いの中での達成とは大したものだ。
そういえば山本投手の出身校は宮崎・都城高校である。生まれは岡山・備前だが、野球に集中できる環境を希望して都城に入学したという。日南とは少し離れてはいるが、これも八十八ヶ所百八霊場めぐりで宮崎県に来た時に触れたこととして、この先の旅程、交通安全を願うばかりである・・。。
この快挙に、もう一度乾杯・・・。