まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第12回九州八十八ヶ所百八霊場めぐり~日南線の終点・志布志へ

2023年10月06日 | 九州八十八ヶ所百八霊場

10月4日にセ・リーグの全日程が終わり、原監督の退任が決まったジャイアンツがベイスターズに勝利して、その結果カープが2位でレギュラーシーズンを終え、なんとマツダスタジアムでクライマックスシリーズのファーストステージが行われることになった。

なお、前売りチケットは5日10時から各プレイガイドで発売とあり、どんなものかと昼前に予約サイトをのぞいてみたのだが、3試合とも見事完売となった。そして、チケット流通のサイトには早速いくつかの座席が高値でアップされていた。その是非はさておき、レートを見るとバファローズのファイナルステージのそれよりも軒並み高値がつけられている。こういうのを見ると、やはりバファローズ、ひいてはパ・リーグはマイナーなのだと思う。

まずはホームの優位性を活かしてファーストステージを勝ち抜き、ファイナルでタイガースを破ってぜひバファローズとの日本シリーズを実現してほしいものだ。CSでの「下剋上」についてはさまざまな意見がある中で、あくまで個人的にはこの対戦が観られる可能性にかけてみたい。

さて、本題の九州八十八ヶ所百八霊場めぐりは、油津からいったん日南線の終点である志布志まで向かう。ほんの少しだが、鹿児島県にも足を踏み入れる。カープキャンプ地の油津の人たちも久しぶりの2位に喜んでいることだろう。

これから乗るのは11時07分の志布志行き。キハ140の単行で、1ボックスに1人、そしてロングシートにパラパラと座るくらい。10数人の乗客だが、そのうち半数はその筋の人たちと思われる。先日、本当に存続が危ぶまれる線区を対象とした「再構築協議会」の設置が認められるようになり、その第1号はわれらが広島の芸備線と言われているが、こちら日南線の油津~志布志間も設置対象の候補になるのではと言われている。

さて、今回訪ねた9月10日は夏の青春18きっぷの最終日。今季、ヤフオクにて1回分を購入していたのだが使う間もなく最終日となった。まあ、油津~志布志~南郷と乗れば元は取れずとも無駄にするよりはましである。ただ、日付をどうするか。油津の駅は業務委託の方がいない時間で、ワンマン運転士に訊ねると、そのまま志布志で降りてかまわないという。

車内は扇風機がフル回転し、一応クーラーもついているが、窓ガラスの汚れがあまりにも目立つので、窓を開ける。外からの風が心地よく、そのまま志布志まで過ごすことにする。

エンジン音をあげて出発。先ほど訪ねた天福球場の前を過ぎる。この先、油津~大堂津~南郷にかけては日南海岸の一端が見られる。

特に、大堂津を過ぎた細田川河口にかかる鉄橋は、日南線の名所ポイントにもなっている。

そして南郷に到着。九州八十八ヶ所百八霊場の第40番・西明寺はここから徒歩10分ほどに位置しており、志布志からの帰りに立ち寄ることにする。その後、南郷を始発とする特急「海幸山幸4号」で宮崎に戻る予定だ。

その南郷だが、ライオンズのキャンプ地である。同じ日南市内にあって、この度で何度も触れている「カープ油津駅」の向こうを張って、「ライオンズ南郷駅」として駅舎がライオンズブルーに塗られている。後ほど列車を降りた時に見物しよう。

その南郷を過ぎると山間部に入る。国道220号線とも並走する。

日南市から串間市に入る。串間といえば、かつてドラゴンズのキャンプ地だったところ。その中心である串間で数人が下車。以前訪ねた都井岬へは、串間駅からバスに乗ったはずで、現在は市のコミュニティバスが運転されているので岬に行こうと思えば行ける。

この先はいよいよ日南線の末端である。「福島高松」という、県庁所在地2つの名前を重ねた駅名もある。

遠くに志布志湾の景色を見る。そのうち県境をまたぎ、鹿児島県に入る。この九州八十八ヶ所百八霊場めぐりも、いよいよ南部にたどり着いたと感じる。

終点の志布志まであと少しというところでスピードがガクンと下がる。線路脇を見るうち、時速25キロ制限の表示がである。中国山地のローカル線なら珍しくない光景だが、九州の南部で出会うことになるとは・・。

遠くに志布志の街並みが見え、最後は下り勾配となって街中に入る。

1時間あまりのローカル線の景色を楽しみ、12時18分、志布志到着。片側ホーム1本だけの小ぢんまりした終着駅である。ここは「志布志市志布志町志布志」という地名で、とにかく「志」の文字が多い。市はそれをアピールのネタにしているところがある。

現在は車止めの先に駅舎があり、観光案内所も入っているが、その昔の志布志は日南線のほか、志布志線、大隅線という3つの線のジャンクション、交通の要衝だったところ。貨物の引き込み線もあった。それが1987年、国鉄の終わりとともに志布志線、大隅線が廃止となり、行き止まりの終着駅となった。そして駅舎は北東に70メートルほど移され、現在に至る。

そんな歴史のある志布志駅の入口には「終着駅は始発駅」というタイトルの歴史案内もある。

かつて広大な敷地を有していた志布志駅跡の一部は商業施設「サンポートしぶしアピア」になっている。いくつかテナントが入る中、「港湾通り」という志布志の特産品を取り扱う店もある。先ほど飫肥で「おび天」を買ったが、ここではさつま揚げと、宮崎地鶏に対抗して鹿児島の黒豚の煮込み(いずれも真空パック)を買い求める。まだ宮崎の札所は残っているが、久しぶりに鹿児島に少し足を踏み入れたということで・・。

さらに進むと、かつて機関庫だった場所に志布志鉄道記念公園がある。C58が展示されている。C58には車掌車のヨ8000、キハ52が連結されており、いずれも有志の人たちにより大切に保存されている。いかにも「国鉄」という面構えのラインナップである。

3つの線区のジャンクションだったが2つの線区がなくなり、ポツンと終着駅になる景色・・・中国地方にも、そう遠くない時期に同じような景色になるのでは?と予想されるところがいくつかある。ただ志布志の場合、鉄道が廃止になると町が衰退する!という悲壮感はなく、こうした商業施設もあれば新しいマンションも建っている。やはり海に面しているのがプラスになっているのだろう。志布志港は地方振興策として整備が進められ、九州唯一という中核国際港湾に指定され、中国、台湾等との貨物船も運航されている。大阪南港と「さんふらわあ」でも結ばれている。終着駅どころか、海に向いた玄関口である。

もう30年ほど前となる学生時代の旅で、大阪から「さんふらわあ」で志布志に上陸し、日南線を北上したことがあるのだが、ふと、現在の九州八十八ヶ所百八霊場めぐりにかこつけて、このルートで九州入りするのも面白そうだなと思う。以前の回でも、九州東部へのアクセスに変化をつけるために、広島からいったん愛媛に渡り、豊後水道を横断するフェリーで臼杵に着いたこともある。見ようによれば、九州一周のコマは日南線をたどって志布志まで進んでいるとも言えるので、この次は志布志から都城や、鹿児島県の垂水・国分といったところに進むこともできる。

志布志で1時間ほど過ごした形で、13時20分、同じ車両の油津行きに乗り込む。運転士も先ほどの方が折り返し、また乗客も先ほど見かけた顔の多くが乗り込んだ。

ふたたび志布志湾の景色、そして宮崎県に戻って山間の区間を走る。やはり鉄道に乗ると、さいはてのローカル線の景色に見える。湾内にぽつんと浮かぶのは枇榔島。今回の札所めぐりでたびたび出てくる柳田國男「海南小記」にも「蒲葵島」という表記で登場する。

のんびりとした一時。

14時20分、南郷に到着。西明寺を目指すべく下車する。

そして、「ライオンズ南郷駅」である。まさに同じ日南にあって「カープ油津駅」への挑戦状である。

ここはいったん置くとして、次に乗る特急「海幸山幸4号」までの1時間余を利用して、九州八十八ヶ所百八霊場の第40番・西明寺に向かうことに・・・。

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