まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ボランティア堕胎!聖母の大罪

2008-03-07 | イギリス、アイルランド映画
 仕事からの帰り道、最近やけにパトカーやおまわりさんを目にすることが多いです。別に何も悪い事はしてないのに、ドキっ&ギクっと不安に襲われるのはWHY?
おまわりさん『ちょっと、そこの松嶋なな子似のひと、待ちなさい』
私『え!あわわ、は、はい』
おまわりさん『バッグの中を見せなさい』
私『え!で、で、でも、な、何でですか?』
おまわりさん『いいから見せなさい。ん?この瓶に入った白い粉は何ですか!?』
私『そ、それは携帯用のヨクイニンという漢方薬です!ヘンなクスリではありません!』
おまわりさん『ん?「人を殺したくなる夜に読む本」!?』
私『そ、それは仕事で使う資料の本です!』
おまわりさん『ん?この写真の中東男性は?!』
私『英会話教室の友達です!アル○イダのメンバーなどではありません!』
 なんてことになるのでは、とビクビクしながら通り過ぎてる私、やっぱアホですか?

 「ヴェラ・ドレイク」
 50年代のロンドン。善良な主婦ヴェラ・ドレイクは、望まない妊娠をした女たちのため、違法である堕胎を施していたが...
 うう~ん。感想を率直に述べるには、難しいテーマの映画ですね。堕胎の是非については、ここでは触れません。
 驚いたのは、ヴェラがいとも気軽に淡々と堕胎をしてるところ。恐ろしいことをやってる、といった感じが全然しないところが、返って恐ろしい。報酬も受け取らず、まったくの善意のボランティアなところも。このヴェラおばさん、ほんと善いひとなんです。家族や近所の人たちにも親切で、困ってる人を見ると放っておけない性分。その親切心が今に厄介なことになる、という夫の弟嫁のイヤミが、ズバリ的中!生き仏のようなヴェラが、善意で生命を奪う子堕ろしをする、というのも恐ろしいまでの矛盾と皮肉を感じます。
 宿った命と女性の人生、どっちが重いのだろうか。赤ちゃんポストとか、子供虐待・殺害の畠山鈴香とかを思い出し、その計れなさに暗澹となります。
 子供を堕ろさねばならない女性たちの深刻な事情と、ヴェラの明るく幸せな日常生活をクロスさせた展開に、つくづく思った。ホント、女ほど生きるのが難しいものはない、と。男には理解できないかもしれません。苦しむのも悲しむのも痛いのも、ぜんぶ女。男にも責任はあるのに、不公平だよなあ。事件が露見し、おぞましい!とヴェラを責める息子の姿に、男って幸せで身勝手な生き物だよなあ、と痛感もしました。
 女の苦患を描きながらも、フェミニズムを声高に訴えるのではなく、それでも女は男より大きい存在だという敬愛がヒロインに注がれているような内容に、何だか救われる思いがします。それは、同じマイク・リー監督の「秘密と嘘」も同じかも。「秘密と嘘」は、公開当時つき合ってた男と観に行ったのですが、観終わった後に彼は、最悪に不快な映画!と唾棄せんばかりに罵ってた。ヴェラの息子もですが、若い男にとっては正視できない、したくない女の現実なんでしょう。
 堕胎シーンも、よく映画に出る怖い道具ではなく、使われるのが石鹸とポンプなので、ゾっとすることはない。流血シーンなども皆無です。けど...あんなんでホントに堕胎ができるのか~簡単すぎて、返って危険だよなあ。いくら人助けとはいえ、素人堕胎はやっぱダメだよ。事件が発覚するまで、誰も死ななかったのが奇跡だとしか思えません。最後は罰を受けるヴェラですが、同じ堕胎女がヒロインの「主婦マリーがしたこと」に比べると、はるかにマシ。マリーはギロチン処刑だもんね。
 ヴェラ役で、ヴェネチア映画祭女優賞を獲得、オスカーにもノミネートされたイメルダ・スタウントンの、細やかでリアルな演技が素晴らしい。ほんと、その辺にいるオバチャンって感じ(日本でリメイクなら、市原悦子?)。その慈母・生き仏キャラは、堕胎を本当に善行に見せてしまうほど。それにしてもイメルダおばさん、実年令はイザベル・アジャーニより年下なんですよねえ。吃驚!
 でもホント、ヴェラみたいな人を求める女性が後を絶たないことが、本当に悲しく辛いですね。
 
 
 
コメント
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