冬に戻ったかのような寒々しい春の宵ですが、皆さまご機嫌いかがですか?
歓迎会や送別会で、夜の街に繰り出すことが多くなる季節ですね。私も三連チャンで酒盛りでした。胸は焼けるわ腹こわすわ肌は荒れるわで、もう最悪です…年々、回復力が低下してます。それだけでなく、自己コントロール力やコミュニケーション能力も甚だしく低下してます。頃合いをつけて体力気力が許すうちに、楽しいうちにさっさと帰ることができなくなってます。面白いことを言わなきゃいけないというプレッシャーを無視できず、テンパって発狂言動に。自己嫌悪…
明日も飲み会があるんですが、一次会で帰ります!私にはやっぱ、自室で独りまったり引きこもるほうが性に合ってます。
皆さまも、飲み過ぎ食べ過ぎにご注意を♪



「愛、アムール」
カンヌ映画祭パルムドール、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したミヒャエル・ハネケ監督の話題作を、ようやく観に行くことができました。
音楽家夫婦のジョルジュとアンヌは、パリのアパルトマンで穏やかな老後を送っていた。しかし突然、アンヌが病に倒れ右半身麻痺となってしまう。献身的な介護を続けるジョルジュだが、アンヌの心と体は絶望的なまでに衰えていくばかりだった…
“老い”は人間にとって、決して避けることのできない宿命と試練です。痴呆症や寝たきり、介護の負担など、老いることへの不安や恐怖は募るばかりな高齢化社会を私たちは生きています。老いて死ぬことじたいは、怖くない。怖いのは、老いて心身ともに自由と尊厳を失ってしまうこと。代わりに苦痛と恥辱を与えられ、無理やり生かされること。その恐怖と痛みを、この映画は静かに冷徹に描いています。
老々介護の苦しみや悲しみを切実に訴えたり、福祉制度を非難したり、長年連れ添った老夫婦の愛情を感動的に描いて涙を誘うような作品ではありません。最初から最後まで、ドラマチックな演出もシーンもいっさいなく、不穏なまでに淡々と静謐に、時にショッキングなまでにリアルに、老夫婦の“終わりの始まり”と“終わり”を追った内容で、優しさとか温かさとか、いや、悲しささえ排除したような、センチメンタリズムなど微塵もない冷酷な映画です。怖いくらいイタい映画です。私は観てる間、不安と沈痛さしか感じませんでした。愛があっても、金があっても、才能があっても、美しい思い出があっても、ほとんどの人間の末路は惨めで醜悪なのだ。ああ~何もない私だって、いつかは…愛する人も、いずれは…屈辱や苦痛のない安らかな死を熱望せずにはいられない…
ジョルジュとアンヌがたどる夫婦愛の顛末は、日本でも頻繁に三面記事になる悲劇で、決して目新しいものではありません。ストーリーもほぼアパルトマン内だけで静かにゆっくりと展開されるため、ここのところハリウッド映画と韓流ドラマに偏っていた私は、寝るなー!寝たら死ぬ!な雪山遭難状態に陥っちゃうかな?と、映画の冒頭あたりでは心配になりましたが、先述した通り、この映画って何だか人を不安にさせて落ちつかなくさせる静かな不穏さに満ちてて、眠らせてくれませんでした(笑)。ジョルジュが介護士や実の娘までも遠ざけて、アンヌと二人きりの孤立生活を選ぶようになってからは、これまたイヤな緊張感が静電気のようにチクチク心を刺激して、居心地悪く最後まで引きつけられられました。ジョルジュが、え!?というような瞬間に、唐突にある行動に出るのですが…それを見て絶望とかやるせなさを感じず、ああ良かった!というハンパない解放感や安堵を覚えた観客は、私だけではないはず。そういう人間の暗部を、冷たく突きつけるように自覚させる手法は、やっぱハネケ監督らしい意地悪さ冷酷さだなあ、と怖くなりました。
老夫婦を演じたフランスの名優ふたりが、スゴい…ていうか、怖いです…

ジョルジュ役は、「男と女」や「Z」「暗殺の森」「トリコロール 赤の愛」など、数々の名作で知られるジャン・ルイ・トランティニャン。若い頃の彼、シャープないぶし銀の男前で、ほんと素敵でしたよね。すっかりおじいさんになり、ますます重く深い演技と存在感。何かやらかしそうな危ういムードも漂わせて(部屋に入ってくる鳩との絡みとか)、ハラハラさせられました。
アンヌ役のエマニュエル・リヴァは、今年のアカデミー賞主演女優賞に史上最高齢でノミネートされ話題に。美しく気品ある誇り高い老婦人が、心身ともに衰え壊れていく生き地獄を、ご老体にムチ打って凄絶に演じています。80半ばの女優が、ここまですべてをさらす演技、前代未聞なのでは。肉体的にも精神的にも、ご本人もさぞや辛苦だったことでしょう。オムツを替えられるシーンとか、全裸での入浴介助シーンとか、ここまでやるか、ここまでやらせるか、と慄然となりました。オスカーは、やっぱ彼女に受賞してほしかったです。それほど強烈痛烈なインパクトのある演技です。病に倒れる前、そしてジョルジュの思い出や幻覚の中の彼女は、ピアノを弾くのがよく似合う優美で気高い老婦人で、素敵だなあ、理想の年の取り方だなあと感嘆させられます。

ジョルジュとアンヌの一人娘役を、イザベル・ユペールが好演。ハネケ監督とユペりんといえば、超絶ぶっとび怪作「ピアニスト」ですが、今回のユペりんは変態女教師エリカ先生とは違って、両親を心配するごくフツーの女性役でした。
ジョルジュとアンヌの弟子役を演じた、実際にも高名なピアニストであるアレクサンドル・タローが、なかなかのイケメンでした。


ハネケ先生、オスカー受賞おめでとうございます!賞なんか興味ない気難しい偉い人、という勝手なイメージを抱いていましたが、アメリカでの賞レースや映画の宣伝にはマメに協力してたご様子。次回作が待たれます。
エマニュエル・リヴァさんは、オスカー授賞式当日に86歳!になられたとか。受賞してたら、驚きでポックリ…なんてこと、なくてよかった!
歓迎会や送別会で、夜の街に繰り出すことが多くなる季節ですね。私も三連チャンで酒盛りでした。胸は焼けるわ腹こわすわ肌は荒れるわで、もう最悪です…年々、回復力が低下してます。それだけでなく、自己コントロール力やコミュニケーション能力も甚だしく低下してます。頃合いをつけて体力気力が許すうちに、楽しいうちにさっさと帰ることができなくなってます。面白いことを言わなきゃいけないというプレッシャーを無視できず、テンパって発狂言動に。自己嫌悪…
明日も飲み会があるんですが、一次会で帰ります!私にはやっぱ、自室で独りまったり引きこもるほうが性に合ってます。
皆さまも、飲み過ぎ食べ過ぎにご注意を♪




カンヌ映画祭パルムドール、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したミヒャエル・ハネケ監督の話題作を、ようやく観に行くことができました。
音楽家夫婦のジョルジュとアンヌは、パリのアパルトマンで穏やかな老後を送っていた。しかし突然、アンヌが病に倒れ右半身麻痺となってしまう。献身的な介護を続けるジョルジュだが、アンヌの心と体は絶望的なまでに衰えていくばかりだった…
“老い”は人間にとって、決して避けることのできない宿命と試練です。痴呆症や寝たきり、介護の負担など、老いることへの不安や恐怖は募るばかりな高齢化社会を私たちは生きています。老いて死ぬことじたいは、怖くない。怖いのは、老いて心身ともに自由と尊厳を失ってしまうこと。代わりに苦痛と恥辱を与えられ、無理やり生かされること。その恐怖と痛みを、この映画は静かに冷徹に描いています。
老々介護の苦しみや悲しみを切実に訴えたり、福祉制度を非難したり、長年連れ添った老夫婦の愛情を感動的に描いて涙を誘うような作品ではありません。最初から最後まで、ドラマチックな演出もシーンもいっさいなく、不穏なまでに淡々と静謐に、時にショッキングなまでにリアルに、老夫婦の“終わりの始まり”と“終わり”を追った内容で、優しさとか温かさとか、いや、悲しささえ排除したような、センチメンタリズムなど微塵もない冷酷な映画です。怖いくらいイタい映画です。私は観てる間、不安と沈痛さしか感じませんでした。愛があっても、金があっても、才能があっても、美しい思い出があっても、ほとんどの人間の末路は惨めで醜悪なのだ。ああ~何もない私だって、いつかは…愛する人も、いずれは…屈辱や苦痛のない安らかな死を熱望せずにはいられない…
ジョルジュとアンヌがたどる夫婦愛の顛末は、日本でも頻繁に三面記事になる悲劇で、決して目新しいものではありません。ストーリーもほぼアパルトマン内だけで静かにゆっくりと展開されるため、ここのところハリウッド映画と韓流ドラマに偏っていた私は、寝るなー!寝たら死ぬ!な雪山遭難状態に陥っちゃうかな?と、映画の冒頭あたりでは心配になりましたが、先述した通り、この映画って何だか人を不安にさせて落ちつかなくさせる静かな不穏さに満ちてて、眠らせてくれませんでした(笑)。ジョルジュが介護士や実の娘までも遠ざけて、アンヌと二人きりの孤立生活を選ぶようになってからは、これまたイヤな緊張感が静電気のようにチクチク心を刺激して、居心地悪く最後まで引きつけられられました。ジョルジュが、え!?というような瞬間に、唐突にある行動に出るのですが…それを見て絶望とかやるせなさを感じず、ああ良かった!というハンパない解放感や安堵を覚えた観客は、私だけではないはず。そういう人間の暗部を、冷たく突きつけるように自覚させる手法は、やっぱハネケ監督らしい意地悪さ冷酷さだなあ、と怖くなりました。
老夫婦を演じたフランスの名優ふたりが、スゴい…ていうか、怖いです…

ジョルジュ役は、「男と女」や「Z」「暗殺の森」「トリコロール 赤の愛」など、数々の名作で知られるジャン・ルイ・トランティニャン。若い頃の彼、シャープないぶし銀の男前で、ほんと素敵でしたよね。すっかりおじいさんになり、ますます重く深い演技と存在感。何かやらかしそうな危ういムードも漂わせて(部屋に入ってくる鳩との絡みとか)、ハラハラさせられました。
アンヌ役のエマニュエル・リヴァは、今年のアカデミー賞主演女優賞に史上最高齢でノミネートされ話題に。美しく気品ある誇り高い老婦人が、心身ともに衰え壊れていく生き地獄を、ご老体にムチ打って凄絶に演じています。80半ばの女優が、ここまですべてをさらす演技、前代未聞なのでは。肉体的にも精神的にも、ご本人もさぞや辛苦だったことでしょう。オムツを替えられるシーンとか、全裸での入浴介助シーンとか、ここまでやるか、ここまでやらせるか、と慄然となりました。オスカーは、やっぱ彼女に受賞してほしかったです。それほど強烈痛烈なインパクトのある演技です。病に倒れる前、そしてジョルジュの思い出や幻覚の中の彼女は、ピアノを弾くのがよく似合う優美で気高い老婦人で、素敵だなあ、理想の年の取り方だなあと感嘆させられます。

ジョルジュとアンヌの一人娘役を、イザベル・ユペールが好演。ハネケ監督とユペりんといえば、超絶ぶっとび怪作「ピアニスト」ですが、今回のユペりんは変態女教師エリカ先生とは違って、両親を心配するごくフツーの女性役でした。
ジョルジュとアンヌの弟子役を演じた、実際にも高名なピアニストであるアレクサンドル・タローが、なかなかのイケメンでした。


ハネケ先生、オスカー受賞おめでとうございます!賞なんか興味ない気難しい偉い人、という勝手なイメージを抱いていましたが、アメリカでの賞レースや映画の宣伝にはマメに協力してたご様子。次回作が待たれます。
エマニュエル・リヴァさんは、オスカー授賞式当日に86歳!になられたとか。受賞してたら、驚きでポックリ…なんてこと、なくてよかった!